リツキシマブのFDA承認

原文 2013/07/03更新

商標名:Rituxan®

特定の非ホジキンリンパ腫者患者に対する新たな用法・用量を承認(2012/10/19)
前治療を行ってないCD20陽性の濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫に対する維持療法として承認(2011/01/28)
慢性リンパ性白血病(CLL)(2010/02/18)
CD20陽性の低悪性度または濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫(2006/09/29)
CD20陽性のびまん性大細胞型B細胞非ホジキンリンパ腫(2006/02/10)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報はFull prescribing information(英文) で参照できます。

特定の非ホジキンリンパ腫者患者に対する新たな用法・用量を承認
2012年10月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、1サイクル時にグレード3~4の薬剤注入に関連した副作用を発症しなかった非ホジキンリンパ種(NHL)患者に対して2サイクル以降に90分間でのリツキシマブ(リツキサン®注射液、Genentech社製)の注入を承認しました。臨床的に重度な心臓血管疾患が見られ、循環リンパ球数が高い(5000/mcL以上)患者に注入速度を上げて投与することは推奨しません。

この承認は、非盲検単剤多施設第3相臨床試験(RATE)に基づいています。評価可能な患者群は、未治療の濾胞性NHLまたはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、CHOPまたはCVP化学療法を併用し、1サイクル時にグレート3~4のリツキシマブ注入に関連した副作用(IRR)を発症していない患者363人で構成されています。患者は2サイクル時に注入速度を上げて投与を受け、忍容性が認められた場合、引き続き全てのサイクルで注入速度を上げて投与を受けました。注入速度を上げて投与するレジメンは、最初の30分で全投与量の20%を投与し、残りの80%を引き続き60分間で投与する、合計90分での投与です。

臨床試験の主要エンドポイントは、2サイクル時に注入速度を上げてリツキシマブを投与された患者のグレード3~4のIRRの発症率でした。2サイクル時のグレード3のIRRの発症率は、1.1%(95 percent CI: 0.3, 2.8)で、グレード4~5のIRRの報告はありませんでした。RATE臨床試験の結果は、標準の注入レジメンを用いた臨床試験で報告のあった2サイクル時のIRRと同等でした。

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松長えみ 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修 
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前治療を行ってないCD20陽性の濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫に対する維持療法として承認
2011年1月28日、米国食品医薬品局(FDA)は、CD20陽性の濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫の前治療がなく、リツキシマブ+化学療法剤の併用療法で奏効を示した患者に対する維持療法への適応に、リツキシマブ(リツキサン®:Genentech社製造販売)を追加承認しました。

この承認は、リツキシマブを用いた維持療法の有効性を評価した国際共同オープンラベル、ランダム化第3相試験であるリツキシマブ維持療法(PRIMA)試験の結果にもとづき行われました。本試験では、濾胞性リンパ腫に対する前治療がなく腫瘍量の多い患者を対象とし、リツキシマブを含む化学療法レジメンに対する奏効が認められた後、リツキシマブ維持療法投与群または観察(非投与)群のいずれかに無作為に割付けました。

リツキシマブ+化学療法剤による導入療法に対して完全または部分奏効を示した患者1,018人について、リツキシマブ375 mg/m2投与群(静注、8週間隔、最大12回投与)または観察群のいずれか(1:1)に無作為に割付けた。患者の内訳については、40%が60歳以上、70%がステージIV、96%がECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)の一般状態が0~1、また42%がFLIPI(follicular lymphoma international prognostic index:濾胞性リンパ腫国際予後指標)のスコアが3~5でした。導入化学療法として、患者の75%ではR-CHOP(リツキシマブ、ヒドロキシダウノルビシン[ドキソルビシン]、Oncovin®[ビンクリスチン]、及びプレドニゾン)、22%ではR-CVP(リツキシマブ、シクロホススファミド、ビンクリスチン、及びプレドニゾン)、また3%ではR-FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホススファミド、及びミトキサントロン)をそれぞれ投与しました。

本試験の主要評価項目は、独立評価委員会により評価された無増悪生存期間(PFS)でした。リツキシマブを用いた維持療法では、PFSイベントリスクが46%減少しました(層別化ハザード比:0.54、95%信頼区間:0.42-0.70;層別化ログランク検定p <0.0001)。現時点では、全生存期間に関する試験成績は完全なものではありません。

安全性情報として、感染症についてはグレード2以上、また有害事象についてはグレード3以上の事象を収集しました。リツキシマブ維持療法を1回以上投与した患者501人のうち、37%で感染症が報告されました。 これとは対照的に、観察群では感染症の報告は22%でした。グレード3~4の有害事象がリツキシマブ投与群患者に多く発現し、重篤または生命を脅かす感染症がリツキシマブ投与群患者では4%に対し観察群では1%、また中等度から重症の好中球減少がリツキシマブ投与群患者では4%に対し観察群では1%未満でそれぞれ認められました。

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菅原 宣志 訳
吉原 哲(血液内科/造血幹細胞移植)監修 
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慢性リンパ性白血病(CLL)
2010年2月18日、米国食品医薬品局(FDA)はリツキシマブ(Genentech社製リツキサン®)を、前治療歴の有無にかかわらず慢性リンパ性白血病(CLL)の治療薬として、フルダラビン、シクロフォスファミド(FC)療法と併用することを承認しました。 承認の根拠は、FC療法、リツキシマブ併用FC(R-FC)療法のいずれかに無作為に患者を割り付けた2つのランダム化多施設非盲検臨床試験における、臨床的に有意義で統計的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長です。

2つの臨床試験はいずれも、フルダラビン25mg/m2/日とシクロフォスファミド250mg/m2/日を3日間毎日、28日を1サイクルとする6サイクルにわたって投与しました。リツキシマブは第1サイクルの第1日(化学療法の前日)に375 mg/m2静注投与、以後毎サイクル第1日(化学療法と同日)に500 mg/m2静注投与しました。主要有効性評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、その定義はランダム化から病勢進行、再発または死亡までの期間としました。副次的エンドポイントは全生存期間(OS)、および1996年米国国立癌研究所提供の「作業部会ガイドライン」により定義される全奏功率などです。

ML17102(別名CLL8)試験はドイツのCLL研究グループが、前治療歴のない患者を登録して実施しました。408人の患者がR-FC群に、409人がFC群に無作為に割り付けられました。年齢は中央値61歳(30%が65歳かそれ以上)、74%が男性、31%がBinet分類C期、45%がB症状有り、99%以上がECOG全身状態(PS)0-1でした。

主要有効性エンドポイントはPFSで、その判定は臨床研究担当医師が行いました。PFS中央値はR-FC群で39.8カ月、FC群で31.5カ月でした[ハザード比(HR)0.56 (95%CI: 0.43, 0.71), p <0.01]。全奏功率はR-FC群で86%(95%CI 82, 89)、FC群で73%(95%CI 68, 77)でした。

BO17072(別名REACH)試験はRoche社とBiogen Idec社が実施し、全身化学療法後に再発または治療抵抗性となったCLL患者552人が登録されました。患者はR-FC療法(n=276)またはFC療法(n=276)のいずれかに無作為に割り付けられました。年齢は中央値62歳(44%が65歳以上)で、67%が男性でした。82%がアルキル化剤を含むレジメンで、18%がフルダラビンを含むレジメンでの治療歴を有していました。28%にB症状が出現しており、全患者がECOG PS 0-1でした。

PFS中央値はR-FC群で26.7カ月、FC群で21.7カ月で、判定は独立審査委員会が行いました[HR 0.76(95% CI: 0.60, 0.96)、p= 0.022,]。全奏功率はR-FC群で54%(95% CI: 48、60)、FC群で45%(95% CI: 37、51)でした。

2つの臨床試験はいずれも、承認申請の時点で、有意義な全生存期間の分析が可能なイベント数に達しませんでした。全生存期間を調べるための登録患者フォローアップは継続中です。

両試験を合わせると、R-FC療法を受けた患者の100人、FC療法を受けた患者の89人が、70歳かそれ以上でした。この高齢層を探索的に分析した結果、前治療がない場合[HR 1.17(95% CI: 0.51、2.66)]も、治療歴がある場合[HR 1.22(95% CI: 0.73、2.04)]も、いずれもFCにリツキサンを追加する治療ベネフィットは示されませんでした。

FC併用時のリツキシマブの安全性は、R-FC療法を実施した676人において評価しました。両試験を通じて、リツキサンを含むレジメンを71%が6サイクル受け、90%が少なくとも3サイクル受けました。R-FC療法を実施した患者の7-9%にグレード3-4の注入反応がみられました。FC群よりもR-FC群のほうが頻回にみられたグレード3-4有害事象は、好中球減少症、発熱性好中球減少症、白血球減少症、血小板減少症、低血圧症、B型肝炎、汎血球減少症でした。

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盛井有美子 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修 
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CD20陽性の低悪性度または濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫
2006年9月29日、米国食品医薬品局(FDA)はリツキシマブ(Genentech社製リツキサン®)を、CD20陽性の低悪性度または濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の一次治療薬として承認しました。第一にCVP化学療法(シクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン)併用リツキシマブ療法が、第二にCVP化学療法に引き続くリツキシマブ投与が、それぞれ承認されました。

第一の承認の根拠は、322人が登録された臨床研究です。化学療法による治療歴のない、進行した病期のCD20陽性の濾胞性非ホジキンリンパ腫患者が登録されました。 3週1サイクルで最大8サイクルのCVP化学療法単独、またはリツキシマブ(21日1サイクルの第1日ごとに375mg/m2)併用CVP化学療法のいずれかの治療に、無作為に患者が割り付けられました(1:1)。

リツキシマブ併用CVP群はCVP単独群に比べ、無増悪生存期間(PFS)が統計的に有意に延長しました(PFS中央値 2.4年 vs. 1.4年、HR 0.44、p<0.0001両側層別ログランク検定)。

第二の承認の根拠となった臨床試験は、前治療歴のない低悪性度のB細胞非ホジキンリンパ腫患者(IWF A, BまたはCグレード)で、6-8サイクルのCVP化学療法後に、病勢安定、部分寛解または完全寛解の322人が登録されました。患者は、追加治療なし、または6カ月ごとにリツキシマブ(週1回375mg/m2を4回)を最大16回に達するまで投与、のいずれかに無作為に割り付けられました(1:1)。

統計的に有意なPFSのリスク減少がみられました。進行、再発、または死亡リスク減少のハザード比は、リツキシマブ投与群対追加治療なしの群で0.36から0.49の範囲でした。

これらの臨床試験でみられた安全性プロファイルは、添付文書に記載された従前の安全性プロファイル記述と齟齬のないものでした。

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盛井有美子 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修 
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CD20陽性のびまん性大細胞型B細胞非ホジキンリンパ腫
2006年2月10日、FDAはリツキシマブを、CD20陽性のびまん性大細胞型B細胞非ホジキンリンパ腫の患者のファーストライン治療として、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(CHOP)またはアントラサイクリンをベースにしたその他化学療法との併用を承認しました。

全体で1,854人が登録された3つのランダム化実薬対照非盲検多施設臨床試験で、安全性および有効性が実証されました。これらの臨床試験では、以前に治療を受けたことのないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者が主に登録されました。

3つの臨床試験のうち2つ(E4494およびLNH98-5/GELA)は60歳以上の患者に限定し、3つめの試験(M39045/MiNT)では18歳から60歳までの患者が登録されました。E4494およびLNH98-5では、患者の大半の病期が第3~4期にあり、M39045では、第1~2期でした。患者は、様々な投与計画で375mg/m2のリツキシマブをCHOPまたはアントラサイクリンをベースにしたその他化学療法(R-CHEMO)と併用して使用しました。

各臨床試験では、病気進行の事象を主要転帰評価項目として盛り込んだうえで、事象発生までの時間の複合評価項目を使用し、二次解析に全体生存率を含みました。主要評価項目の判定は、臨床試験責任医師による評価にもとづきます。

各臨床試験で、主要転帰評価項目のハザード比はリツキシマブを含んだ治療群が優勢でした。加えて、各試験で全体生存率への効果がリツキシマブを服用した患者の間で見られました。2年間の追跡調査では、カプラン・マイヤー推定値で、各臨床試験のリツキシマブ治療群と対照群を比較した場合、それぞれ74%対63%、69%対58%および95%対86%と、リツキシマブ治療群のほうがより生存したことが分かりました。

これら臨床試験のうち1つで、5年間のデータが得られ、R-CHOPおよびCHOPの推定5年間生存率はそれぞれ58%および46%と、生存への効果が持続していることが実証されました。結果は、年齢、性別および病気の予後変数を含むサブグループ間でおおむね一致していました。

E4494の患者でR-CHOPを実施して完全寛解または部分寛解となった後、引き続きリツキシマブ追加投与へ無作為に割り当てられた患者は、R-CHOPのみを受けた患者と比較して、無増悪生存率および全体生存率にいっそうの改善は見られませんでした。

3つ全ての臨床試験で、R-CHOPおよびR-CHEMOの導入化学療法群のリツキシマブの薬剤強度は高く、リツキシマブ療法は、化学療法の個々の構成成分の用量強度の低下とは関連していませんでした。

リツキシマブに伴う副作用は、単剤のリツキシマブについて記述されたラベル上の副作用とおおむね一致していました。グレード3/4の有害事象で、少なくとも1つの臨床試験においてリツキシマブ群の方が2%以上多く発生するものには、感染症、血小板減少、肺毒性/呼吸困難があります。

重篤または致命的な注入反応、腫瘍崩壊症候群、重篤な皮膚粘膜の反応、劇症肝炎に伴うB型肝炎の再活性化,、その他ウイルス感染、過敏性反応、不整脈、腎臓毒性および腸閉塞症や腸穿孔などの重篤な副作用が、リツキマシブを服用した患者から報告され、致命的な結果を伴うものもありました。

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ポメラニアン 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

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