【ESMO 2025】新世代の抗体薬物複合体(ADC)がHER2陽性早期乳がんで前例ない有望性を示す

【ESMO 2025】新世代の抗体薬物複合体(ADC)がHER2陽性早期乳がんで前例ない有望性を示す

画期的抗がん剤である抗体薬物複合体(ADC)が早期HER2陽性乳がん患者の転帰を劇的に改善できるとの説得力のあるエビデンスが重要な研究により示された。本結果は、2025年10月に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)で発表された。

プレジデンシャル・シンポジウムで発表された第3相DESTINY-Breast05試験およびDESTINY-Breast11試験の結果は、乳がん治療におけるパラダイムシフトを示すものであり、ADCを疾患が既に進行した場合の強力な治療薬としてだけでなく、早期疾患患者における新たな標準治療としても位置づけるものである。

「HER2陽性早期乳がん患者が術前補助療法、すなわち術前化学療法後に病理学的完全奏効(pCR)を達成することを確実にする治療法が特に必要とされており、また転移の発生を予防するために、病理学的完全奏効が得られなかった患者の残存病変を治療する治療薬のニーズは大きい」と、ベルギー、ブリュッセルのジュール・ボルデ研究所のEvandro de Azambuja医師は説明する。現在、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)は、術前補助療法後に残存浸潤性疾患を示し、再発の高リスクにあるHER2陽性早期乳がん患者に承認されている唯一のADC薬である。

DESTINY-Breast05試験において、トポイソメラーゼI阻害剤を送達する新世代ADCであるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、T-DM1と比較して浸潤性疾患無生存期間および無病生存期間を53%改善することが示された(両者とも:ハザード比 0.47;95%信頼区間[CI] 0.34–0.66;p<0.0001)。

また、T-DXdはその高い脳活性を確認し、T-DM1と比較して脳転移無発生期間の臨床的に意義のある改善を示した(HR 0.64;95% CI 0.35–1.17)。

「一般的に管理可能な安全性プロファイルと優れた有効性データは、T-DXdが術前補助療法後の残存浸潤性HER2陽性乳がん患者の新たな標準治療としてT-DM1に取って代わるべきであることを示唆している」とEvandro de Azambuja医師は述べる。

T-DXdの使用は、治療のより早期、すなわち手術前においても印象的な知見を示した。

DESTINY-Breast11試験では、高リスクHER2陽性早期乳がんの未治療患者927人が、ADC投与後に標準的なHER2標的療法(THP)を受ける群、または従来のアントラサイクリン系レジメン(ddAC-THP)を受ける群のいずれかに割り付けられた。

HER2標的療法と、順次投与されたトラスツズマブ デルクルテカン(T-DXd)のサイクルは、手術時の病理学的完全奏効率の有意な増加をもたらした(67.3% 対 56.3%;p=0.003)。

「T-DXdレジメンには、アントラサイクリン含有レジメンと比較して改善された安全性プロファイルという付加的な利点もある」とEvandro de Azambuja氏はコメントし、ADC薬で従来の治療と比較して観察された心毒性の関連する減少に言及した。

「これら2つの研究を合わせて、T-DXdは早期HER2陽性乳がんの重要な治療選択肢として確立され、最終的にはかつて最も悪性度の高いタイプの乳がんと考えられていたものに対する治療のカスタマイズのための新たなツールを提供し、今日では治癒の可能性が最も高いサブタイプとなっている」と、米国マサチューセッツ州ボストンのダナファーバーがん研究所およびハーバード大学医学部のパオロ・タランティーノ医師は強調する。

過去数年間で複数のタイプの転移性がんの治療を再構築してきた後、T-DXdのような新規ADCは、その設計と作用機序の革新により、根治的治療における「水準が上がっている」。

しかし、それらの使用は対処すべき新たな課題を提示している。

「例えば、毒性プロファイルを慎重に定義する必要があり、永続的または致死的な毒性を防ぐための多大な努力が必要である」。

「ADCの投与量、投与期間、投与順序も最小限の副作用で最大の有効性を達成するために最適化されなければならず、同様に重要なのは、ADC療法のより良いカスタマイズを可能にし、過剰治療を最小限に抑える可能性のある予測バイオマーカーの同定である」とタランティーノ氏は明確にする。

ESMO2025でのDESTINY-Breast05試験およびDESTINY-Breast11試験結果の発表は、世界の腫瘍学の進歩の触媒としての同イベントの役割を確固たるものにした。

ADCが手術前と手術後の両方の設定で優位性を示した今、腫瘍学コミュニティは新しいステップの入り口に立っている。それは、よりスマートな標的化、より早期の介入、そしてより深い生物学的理解によって定義されるステップである。

「実際、即座の実用的影響に加えて、本日発表されたデータはADC研究の将来により広範な影響を与えることが期待されており、新世代の薬剤の根治的領域への正式な参入を示すものである」。

「これは途方もない可能性を持つ治療戦略であり、私たちはそれを解き放ち始めたばかりであり、今後数年間で複数のがんにわたって再発率を低下させ、生存率を改善することを約束している」とタランティーノ氏は結論付ける。

  • 監訳 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
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  • 原文記載日 2025年10月18日

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