染毛剤・縮毛矯正剤とがんリスク

染毛剤・縮毛矯正剤とがんリスク

米国臨床腫瘍学会(ASCO)患者サイトCancer.NET

ヘアカラーや縮毛矯正をすれば数時間で見た目を変え、自信を高めることもできますが、どちらの技術も強力な化学物質を含む製品を使用するため、健康上のリスクがあるかどうか、疑問を持たれるかもしれません。特に染毛剤や縮毛矯正剤の使用は、がんのリスクに影響するのでしょうか。 

ここでは、染毛剤(カラーリング剤)やストレートパーマ剤(縮毛矯正剤)がどのように使用されているのか、どの成分が研究されているのか、がんとの関連性についてどのような研究結果があるのかについてより詳しく説明します。

縮毛矯正剤、カラーリング剤とは?

縮毛矯正剤やストレートパーマ剤(※原文ではへアリラクサー)は、髪を縮毛から直毛に変える化学製品です。縮毛矯正剤を一度使えば、数カ月間髪は直毛となり、濡れても直毛状態を保ちます。それらの化学製品は多くの化学成分を含んでおり、液体ケラチンや縮毛矯正剤などのさまざまな薬剤があります。
 
永久染毛剤は毛髪から自然な色を除き、新しい色を毛髪に染み込ませるものです。その名称が示すように、このタイプの染毛剤は髪の色を永久に変えますが、数週間後には毛根から元の毛色が見えてきます。染毛剤は漂白剤や過酸化物などのさまざまな化学成分も含んでいる場合があります。

カラーリング剤や縮毛矯正剤と、がんリスクについて研究でわかっていることは?

染毛剤や縮毛矯正剤と、がんとの関連性に対するリスクについて、これまで複数の研究が行われていますが、結果は多くの場合、まちまちです。過去5年間、米国ではがんと毛髪製品との関連性について、いくつかの大規模な研究が行われてきました。これらの研究は、乳がん、卵巣がん、子宮がんなど、エストロゲンやプロゲステロンというホルモンによって増殖するがんに重点を置いたものでした。

これらの研究はいずれも、縮毛矯正剤や染毛剤が、がんを引き起こすかそうでないかの決定的な証拠を示すものではありませんが、縮毛矯正剤の頻繁な使用と、乳がん、卵巣がん、子宮がんとの間に関連がある可能性が示されました。これは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド放出化学物質、酸化パラフェニレンジアミン、4-アミノビフェニルなど、これらの製品によく含まれる化学物質が原因となる可能性があります。

International Journal of Cancer誌に掲載された2020年の研究では、縮毛矯正剤を頻繁に使用した女性(年に6回以上と定義)は、乳がんのリスクが約30%高いことが判明しました。同様に、Carcinogenesis誌に記載された2021年の研究Journal of the National Cancer Institute誌に記載された2022年の研究では、縮毛矯正剤を頻繁に使用する女性(年に4回以上と定義)は、縮毛矯正剤を使用しない女性と比較して、卵巣がんを発症する可能性が2倍、子宮体がんを発症する可能性が2倍以上高いことが示されました。

同じ研究で、永久染毛剤が、特に黒人女性の乳がんリスクの上昇とも関連していることを示す証拠がいくつかありましたが、染毛と卵巣がんや子宮がんとの関連性は認められませんでした。

British Medical Journal誌に掲載された2020年の別の研究では、髪を100回以上染めた女性の卵巣がんと一部の乳がんのリスクが高いことが判明しましたが、この研究では、永久染毛剤の使用と、膀胱がん、脳腫瘍、大腸がん、腎臓がんや肺がんなど、その他のほとんどのがんとの関連性は認められませんでした。

「染料や縮毛矯正剤などのヘア製品は、発がん物質や内分泌(ホルモン)撹乱物質として作用する可能性のある化学物質を多数含んでおり、がんのリスクにとっては重要な可能性があります。特に縮毛矯正剤は、フタル酸エステル、パラベン、シクロシロキサン、金属などの化学物質を含んでおり、加熱するとホルムアルデヒドを放出する可能性があることが判明しています」。
-- Alexandra White医学博士 (国立環境保健科学研究所の環境とがん疫学グループのリーダーであり、毛髪製品とがんリスクとの関連性を研究)--

特にリスクが高い人々とは?

黒人は他の人種や民族よりも頻繁に縮毛矯正剤を使用するため、潜在的にがんのリスクが高くなる可能性があります。たとえば2017年のある研究で、黒人女性の88%が縮毛矯正剤を使用していたのに対し、白人女性では5%でした。「黒人女性はこれらの製品を最も頻繁に使用するため、このような知見は黒人女性にとって、関わりが強くインパクトがあるものです」とWhite博士は述べます。しかし、研究者は人種や民族を超えて使用されるヘア製品全体をよりよく理解し、多様な集団内において、上記の製品と関連するがんリスクを研究する必要があるとWhite博士は述べています。

美容師もまた、これらの製品を使用することで発がんリスクが高くなる可能性のある人々です。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、この種の製品を毎日使用する美容師らの業務上のリスクを調査しており、染毛剤を使用する仕事を発がん可能性が高い仕事として分類しています。

 これらのヘア製品を検討する際、何に気をつけるべきか?

米国食品医薬品局(FDA)はヘア製品を規制していますが、製品の安全性テストは行っていません。これはメーカーの責務です。製品を検討する際の注意点としてFDAのウェブサイトでは、、ホルムアルデヒドは発がん性物質であることがわかっているため、製品ラベルをよく読んで、ホルムアルデヒドやその液体であるホルマリン、メチレングリコールと記載されていれば避けるよう推奨しています。発がん性物質とは、がんを引き起こすあらゆる物質です。美容師に、使用しているヘア製品の成分について尋ねることもできます。

ご自身のがんリスクや、特定のヘア製品の使用ががんリスクに及ぼす影響について心配な場合は、ご自身のリスク要因について、かかりつけの医師に相談してください。

  • 監訳   斎藤千恵子(薬学・毒性学/ロズウェルパ―クがん研究所 病理学部)
  • 翻訳担当者 藤永まり
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/07/13

 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

 

がんに関連する記事

胸腺の健康状態ががん患者の免疫療法の効果と関連の画像

胸腺の健康状態ががん患者の免疫療法の効果と関連

胸腺の健康状態が良いほど、様々ながん種における免疫療法の治療成績が良好であることが示されている。AIを活用したCTスキャン解析により胸腺の健康状態を追跡し、免疫機能を評価することが可能...
米国癌学会(AACR)年次報告書2025、がん研究への連邦投資の救命効果を強調の画像

米国癌学会(AACR)年次報告書2025、がん研究への連邦投資の救命効果を強調

FDAは同報告書の対象となった12カ月間に20種の新規がん治療薬を承認したが、若年がんなどの課題が残る一方、NIHの混乱で進歩が危ぶまれている。本日、米国がん学会(AACR)は...
がん関連神経傷害は慢性炎症と免疫療法抵抗性をもたらすの画像

がん関連神経傷害は慢性炎症と免疫療法抵抗性をもたらす

がん細胞が神経鞘を破壊し、神経損傷と慢性炎症を引き起こすことが判明した。これらの神経傷害が免疫力の疲弊と免疫療法抵抗性を引き起こす。がんが誘発する神経傷害経路を標的とすることで、抵抗性...
がんの不安は患者本人以外にも及ぶの画像

がんの不安は患者本人以外にも及ぶ

大切な人ががんと診断されたとき、米国の成人にとって最大の心配ごとは、余命、治療方針、痛みがんと診断されることは、患者にとって人生を変える出来事であり、次の診察までの数週間から数...