CD19 CAR-T細胞療法が最も有益なB細胞リンパ腫の特徴が判明

MDアンダーソンニュースリリース 2025年6月18日

  ● この種の研究では最大規模となる研究で、臨床アプローチの指針となるリンパ腫の生物学に関する新たな知見が得られる
 
  ● 研究者らは、CD19 CAR-T細胞療法による効果が異なる3つのグループを特定した
 
  ● 本研究は、CAR-T細胞療法の効果が期待できない患者に対する代替アプローチの可能性を示唆するものである

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、この最大規模の研究で、CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法による効果が異なる大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者の3つのグループを特定した。
 
本日、Cancer Cell誌に発表されたこの研究において、研究者らはLBCL患者232人の検体をプロファイリングし、リンパ腫細胞を取り巻く環境と臨床データおよび患者の転帰との関連について詳細な情報を提供する「LymphoMAPs」を作成した。この知見は、プロファイリングされた腫瘍の生物学的特性に基づき、患者にとって最良の臨床的治療方針を医師が選択するための新たな知見を提供するものである。
 
「本研究は、悪性B細胞を取り囲み相互作用する非悪性細胞を考慮することにより、大細胞型B細胞リンパ腫患者の精密医療の精度向上に向けた極めて重要な一歩となります」と、責任著者のMichael Green博士(リンパ腫/骨髄腫准教授)は述べた。「CD19 CAR-T細胞療法後の転帰が有意に異なる3つの患者グループを特定することで、臨床医の治療選択の精度を高め、同様に奏効しない可能性のある患者に対する生物学的標的療法への道を開きます」。
 
CAR-T細胞療法は、がん細胞を特異的に標的として排除するCAR分子を発現するように遺伝子操作された患者自身のT細胞を用いる免疫療法の一種である。大細胞型B細胞リンパ腫患者に対して承認されているCAR-T細胞療法は3種類あり、多くの患者で有望な結果が得られている。しかし、CAR-T細胞療法による効果が長期間持続する患者は半数以下であり、治療成績に影響する因子を理解する必要性が強調されている。
 
この研究で研究者らは、新たにリンパ腫と診断された患者と治療歴のある患者217人から採取した232個の生検サンプルから単一細胞をプロファイリングした。総計で180万個以上の細胞がプロファイリングされ、これはリンパ腫に関する過去最大の研究の約10倍に相当する。
 
これらの知見を検証するため、研究者らは、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象に、CAR-T細胞療法薬であるアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)の有効性を標準治療と比較検討したZUMA-7第3相臨床試験の公表結果とデータを統合した。この研究により、研究者らは、CAR-T細胞療法に対する反応パターンが異なる、大細胞型B細胞リンパ腫患者における3つの主要なタイプのリンパ腫微小環境を同定した:
 
● 線維芽細胞/マクロファージ群は、T細胞が枯渇し、がん関連線維芽細胞を多く含む腫瘍を有する患者からなる。これらの患者はCAR-T細胞療法を受けた場合、反応はまちまちであるが、全体としては化学療法と比較して有意な効果が得られている。
 ● リンパ節群は、リンパ節内に通常存在する、T細胞の健常性を助ける非造血細胞によって支えられているT細胞を多く持つ腫瘍を有する患者から構成されている。これらの患者はCAR-T細胞療法から最大のベネフィットを得ることができる。
 ● T細胞疲弊群は、疲弊したCD8 T細胞と活性化マクロファージを主として有する腫瘍の患者である。研究者らは、これらの患者にはCAR-T細胞療法による有意な効果が認められないため、代替治療選択肢が必要であることを明らかにした。研究者らは、これらの腫瘍の主な生物学的経路を標的とすることで、予後を改善する機会があると考えている。
 
「根底にある生物学的知見は、CAR-T細胞の治療成績との関連を明確に裏付けており、すでに臨床段階にあるか、前臨床開発の後期段階にある標的治療薬を用いた介入の可能性を浮き彫りにしています」とGreen博士は述べた。「これらの知見は、すべての患者にとって最適な治療法の開発に近づき、より効果的で個別化された治療を確実に提供することにつながります」。
 
MDアンダーソンの研究者は、この研究から得られた知見をもとに、他の学術がんセンターや製薬会社と協力して、転帰の悪いグループの患者を対象とした標的療法に焦点を当てた臨床試験を進める予定である。
 
本研究は、Beatriz and Ed Schweitzer夫妻の寛大な寄付と、MD Anderson Lymphoid Malignancies Programから資金提供を受けた。共同研究著者の全リストと開示情報はこちらをご覧ください。

  • 監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/06/18

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