【ESMO2025】ER陽性HER2陰性 転移乳がんにギレデストラント併用が無増悪生存を改善
エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性の進行乳がんにおいて、次世代型選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり完全拮抗薬でもある、新薬giredestrant[ギレデストラント]を用いた新しい経口併用療法は、標準的な併用療法と比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが明らかになった。第3相evERA乳がん試験の結果によるもので、ダナファーバーがん研究所のErica Mayer医師がドイツ・ベルリンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会で発表した。
ERを発現する腫瘍は乳がん全体の約70%を占め、転移性のER陽性乳がんは治療が難しいことが多い。さらに、既存のホルモン療法に対する耐性の発現が臨床医と患者双方にとって大きな課題であり、この乳がんのサブタイプを効果的に標的とする新しい治療法の必要性が高まっている。
「転移を有するER陽性乳がんに対して、より有効な治療法が強く求められています。現在のホルモン療法に耐性を示し、CDK4/6阻害薬による治療後に進行した患者さんにおいては特にそうです」とMayer医師は述べている。「さらに、既存の分子標的薬との併用に適し、二次治療以降の治療でも効果を発揮できる忍容性が高い薬剤が必要です。この段階では薬剤耐性がしばしば生じ、治療が難しいからです」
ギレデストラントは、次世代型の選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり、完全拮抗薬である。エストロゲン受容体に結合してその分解を促進し、エストロゲンによるがん細胞増殖刺激を防ぐ。この新たなSERDは従来の薬剤と比べて2つの重要な特長を持つ。第1に、他のホルモン阻害薬とは異なる作用機序を有しており、既存療法に耐性を示す患者にも有効である可能性がある。第2に、ギレデストラントは経口投与であるため、従来の第一世代薬のような毎月の注射が不要で、患者にとって利便性が高い。
evERA試験は、ER陽性HER2陰性の進行乳がん患者を対象とした国際共同第3相ランダム化非盲検試験であり、ギレデストラントとmTOR阻害薬であるエベロリムスとの併用療法を評価している。この経口薬のみの併用療法が、標準的なホルモン療法とエベロリムスとの併用との比較で検証された。evERAは、すべて経口投与によるSERD併用療法を標準治療と直接比較し、良好な結果を示した初の第3相試験である。
試験には合計373人の患者が登録され、ギレデストラント+エベロリムス群または標準的ホルモン療法+エベロリムス群に無作為に割り付けられた。約55%の患者はエストロゲン受容体遺伝子(ESR1)に変異を有しており、ホルモン療法に対する耐性を示す可能性があった。試験は、全患者(intention to treat、ITT)および腫瘍にESR1変異を有する患者グループにおいて、ギレデストラント併用療法によるPFSの改善を検証するよう設計された。
追跡期間の中央値18.6カ月時点で、ESR1変異を有する患者では、ギレデストラント併用群の中央値PFSは9.99カ月であり、標準の併用療法群の5.45カ月と比べて統計学的に有意な延長を示した。これは、病勢進行または死亡のリスクが63%減少したことを意味する。
全体集団(ITT)では、ESR1変異の有無にかかわらず、ギレデストラント併用群の中央値PFSは8.77カ月で、標準の併用療法群の5.49カ月と比べて有意に延長しており、病勢進行または死亡のリスクが44%低下した。
全生存期間(OS)データはまだ成熟していないが、良好な傾向を示している。さらに、ギレデストラント併用療法の安全性は管理可能であり、各薬剤で既知の安全性プロファイルと一致していた。
「転移を有するER陽性HER2陰性乳がんの治療は大きく進歩してきましたが、既存の治療法に耐性を示すがんは依然として治療が難しいです」とMayer医師は述べている。「ギレデストラントとエベロリムスの併用は、最も頻繁にみられる耐性の作用機序に対処することを目的としています。evERA試験は、この設定において新しい併用療法が標準治療と比較して病勢コントロールを大幅に改善できることを初めて示した試験であり、進行乳がんの患者さんに大きな利益をもたらす可能性があります」
資金提供:evERA乳がん試験は、F. Hoffmann-La Roche Ltd.の資金により実施された。
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