【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ①
ASCOの見解(引用)
5月30日-6月3日イリノイ州シカゴおよびオンラインで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、がんのさまざまな部位にわたる幅広いテーマについて探究した44件の研究が発表された。
【アブストラクト 11000】 造血幹細胞移植を受ける患者の介護者のための心理社会的デジタルアプリケーション:ランダム化比較試験。
「幹細胞移植を受ける患者の介護者は、しばしば強い精神的・肉体的負担を抱えていますが、特にメンタルヘルスの医療資源が限られている地域では、緊急に必要とする専門的な心理的サポートをほとんど、あるいは全く受けられない人が多くいます。私たちは、移植患者の介護者に、過酷な造血幹細胞移植の過程を通して不可欠な精神的サポートを提供する、使いやすくエビデンスに基づいたツールを提供するために、BMT-CAREアプリを開発しました。今回のランダム化試験において、患者の移植期間中、BMT-CAREアプリを使用した介護者は、通常のケアを受けた介護者と比較して、生活の質が著しく向上し、介護負担が軽減され、うつ病や心的外傷後ストレス障害の症状も軽減されました。これらの結果は、ごく短時間の自己主導型のデジタル支援であっても、非常に困難な時期に有意義な救済策となり得ることを示唆しています。特に、全国的なメンタルヘルスケアの不足という状況下ではなおさらです」と、筆頭試験著者のJamie M. Jacobs博士は述べている。
【アブストラクト2002】 1p/19q共欠失の退形成性神経膠腫におけるテモゾロミド併用術後療法に関するEORTCランダム化第3相グループ間CATNON試験の最終臨床分子解析:NCT00626990
「成熟した追跡データが利用可能となったこの4群間試験では、放射線療法後に12サイクルのテモゾロミド化学療法を行うことで、IDH変異を有するグレード3(退形成性)星細胞腫患者の転帰が改善されることが示されました。この試験において、IDH変異を有するグレード3の(退形成)星細胞腫患者に対し、放射線療法完了後に12サイクルのテモゾロミド術後化学療法を行うという術後標準治療を確立しました」と、筆頭著者のMartin J. Van Den Bent医学博士は述べている。
【アブストラクト7000】 国内臨床試験のDLBCL患者におけるPhasED-Seqによる治療終了時ctDNA-MRDの前向き検証。
【アブストラクト3505】 切除可能な大腸腹膜転移に対する周術期全身療法: 多施設共同ランダム化第3相試験(CAIRO6)。
【アブストラクト3503】 ステージ3大腸がんにおけるctDNA誘導術後補助化学療法の段階的増加:ランダム化AGITGダイナミックIII試験(AGITGとCCTGの群間比較試験)におけるctDNA陽性コホートの主要解析。
【アブストラクト4008】 胆道がんにおいて、ゲムシタビン+シスプラチンによる術前化学療法後に根治的肝切除を行う治療法と、直ちに根治的肝切除を行った後で術後補助療法を行う治療法との比較: 第3相AIO/CALGP/ACO-GAIN-Trialの最終結果。
【アブストラクト1007】 HER2陰性再発・転移性乳がんを対象とした経口パクリタキセル(DHP107)と静注パクリタキセルの第3相比較試験: 多国間最適化試験(NCT03315364)の主要解析。
「本試験は、静注パクリタキセルの限界と、毎週の点滴のための頻繁な通院の負担を克服するためにデザインされ、前投薬なしで自己投与でき、許容可能な安全性プロファイルを備えた新規経口製剤であるDHP107について検討しました。この多国間OPTIMAL第3相試験において、経口DHP107は、毎週のIV(静注)パクリタキセルと比較して、無増悪生存期間において非劣性を示し、より高い客観的奏効率と、末梢神経障害の軽減を含む良好な毒性プロファイルを示しました。これらの結果から、DHP107は、通院回数を減らし、生活の質を維持し、HER2陰性転移性乳がん患者の長期的な治療遵守と転帰を改善する可能性のある、IVパクリタキセルに代わる効果的で簡便な代替療法であることが確立されました」と、本試験の筆頭試験著者であるSung-Bae Kim医師は述べている。
【アブストラクト4003】 治療歴のある進行胃がんまたは胃食道接合部がんに対するClaudin18.2特異的CAR-T細胞(Satri-cel)と医師選択治療との比較: ランダム化非盲検第2相試験(CT041-ST-01)の主要結果。
【アブストラクト10000】 高リスク神経芽腫患者に対するジヌツキシマブ ベータの長期点滴による免疫療法を短期点滴の場合と比較した生存への関連: HR-NBL1/SIOPEN試験の結果。
【アブストラクト6001】 高リスク皮膚扁平上皮がんに対する術後補助療法セミプラマブ対プラセボの第3相試験。
【アブストラクトLBA8505】 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬で病勢進行後のEGFR変異・MET増幅を有する進行NSCLCにおけるサボリチニブ+オシメルチニブ併用療法と化学療法の比較: ランダム化第3相SACHI試験の結果。
【アブストラクト12001】 放射線療法誘発性悪心・嘔吐(RINV)予防に対するオランザピン利用に関する第3相ランダム化プラセボ対照試験: CTRI/2022/01/039723。オランザピン群で良好な結果。
【アブストラクト11505】 HIV関連およびHIV陰性のカポジ肉腫患者を対象としたCDK4/6阻害薬アベマシクリブの第1/2相試験。
【アブストラクト2011】 5~20個の脳転移を有する患者における定位放射線照射と海馬回避全脳照射との比較:多施設共同第3相ランダム化試験。
「これまでのランダム化試験で、脳転移が1~4個の患者では、個々の腫瘍を標的とした定位放射線照射が全脳照射治療よりも優れた転帰をもたらすことが実証されています。しかし、脳転移が4個を超える患者に関するデータは依然として限られています。脳転移が5~20個の患者を対象とした今回のランダム化試験では、定位放射線照射を受けた患者は、海馬回避全脳照射治療を受けた患者と比較して、症状の重症度が低く、日常生活への支障も少ないことがわかりました。標的照射を使用することで、より広範な病変であっても、全脳照射治療に伴う副作用を軽減できる可能性があります」と、筆頭試験著者のAyal Aizer医師(MHS)は述べている。
【アブストラクト12003】 がんサバイバーの不安に対する音楽療法と認知行動療法の比較: 遠隔医療ベースのランダム化臨床試験。
「既存の治療法があるにもかかわらず、不安は依然としてがんサバイバーが経験する最も一般的な苦痛の症状の1つです。不安に対する代表的な標準治療である認知行動療法は、すべてのがんサバイバーにとって効果的、利用しやすい、または好ましいとは限りません。音楽療法はがんセンターでますます利用可能になり、メンタルヘルスに有望な効果が示されていることから、本試験では、音楽療法ががんサバイバーの不安治療において認知行動療法と同等に効果的かどうかを評価しました。音楽療法と認知行動療法は、遠隔医療を介して提供された場合、どちらも臨床的に意義のある長期的な不安の軽減をもたらし、音楽療法はがんサバイバーの不安治療において代表的な標準治療である認知行動療法と同等に効果的であることがわかりました」と、筆頭試験著者のKevin T Liou医師は述べている。
【アブストラクト11506】 転移性または進行性平滑筋肉腫を対象としてカテケンチニブ塩酸塩(AL3818)をプラセボと比較するランダム化第3相試験。転移性/進行性LMSにおいてカテクエンチニブがプラセボと比較して優れたPFSを示した。
【アブストラクト3512】 RASおよびBRAF野生型、遠隔転移を有する切除不能な大腸がん患者に対するアップフロント修正FOLFOXIRI+パニツムマブ療法とFOLFOX/pan療法の比較: GONO社による第3相TRIPLETE試験の全生存期間結果。有意な生存期間の延長が示された。
【アブストラクトLBA3】 真性多血症(PV)治療におけるrusfertideの第3相二重盲検プラセボ(PBO)対照試験VERIFY試験の結果。ラスフェルタイドは瀉血の平均数を有意に減少させた。
【アブストラクト1010】 術後補助ホルモン療法中のER陽性/HER2陰性、高リスク乳がんの循環腫瘍DNAモニタリング。治療初期におけるctDNAの動態は、患者の転帰を予測する指標となる。
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ② はこちら
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当者 生田亜以子
- 原文を見る
- 原文掲載日 2025/06/03
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果
2025年7月18日
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②
2025年7月18日
【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制
2025年6月19日
【ASCO2025】サシツズマブ ゴビテカン、一部のPD-L1陽性乳がん(TNBC)でがんの進行なく延命効果
2025年6月19日