ヒトゲノムに潜伏するウイルスが腎臓がん免疫療法薬の新たな方向性を示唆

ヒトゲノムに潜伏するウイルスが腎臓がん免疫療法薬の新たな方向性を示唆

研究タイトル

HIFは翻訳された複数の内在性レトロウイルスを制御: がん免疫療法への示唆

掲載誌

Cell 誌 2025年2月28日 11:00am ET

著者(ダナファーバーがん研究所)

Derin B. Keskin博士、Catherine J. Wu医師、William G. Kaelin Jr.医師

要約

ダナファーバーの研究者らは、ヒトゲノムの中に潜伏していて通常は休眠しているウイルス遺伝子が、腎臓がんの中で最も多い淡明型腎細胞がんでは活性化し、がんに対する免疫反応を引き起こす可能性があることを発見した。 ヒトゲノムには、大昔にゲノムに組み込まれたウイルスDNAが含まれている。 これらのウイルス遺伝子の一部は、特定の状況下で再活性化し、ウイルスタンパク質を産生することができる。 今回の研究では、がん抑制遺伝子VHLが変異によって不活性化された場合(淡明型腎細胞がんの特徴)、私たちのゲノムに存在するこれらのウイルス(内在性レトロウイルスと呼ばれる)は、ウイルスタンパク質を産生しやすくなること、そしてこのプロセスは、VHLが不活性化されると過剰になるヒトタンパク質HIF2によって駆動されることが示された。 研究チームはまた、がん細胞がこれらのウイルスタンパク質を断片に分解して細胞表面に発現させ、免疫反応を刺激する可能性のある目印とすることも発見した。 ヒトサンプルとマウスを用いた追加テストから、これらの目印はT細胞と呼ばれる免疫細胞によって検出され、がんに対する免疫反応を刺激することが示唆された。

意義

腎臓がんは、他のほとんどのがんとは異なり、免疫系によって根絶される場合があることを示す証拠がある。 その正確な過程はよくわかっていない。 本研究から、がん駆動型変異が存在するために、内在性レトロウイルスタンパク質の断片を表面に有するがん細胞に対して、免疫系が攻撃を仕掛けることができることが示唆される。 今回の発見は、新たな免疫療法薬の開発において内在性レトロウイルスを活用する新規研究の可能性を示唆している。

資金提供情報は、原文を参照のこと。

  • 監修 花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/02/28

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