BRCA1/2変異保持者で、予防的乳房切除は生存上の利点なし

BRCA1/2変異保持者で、予防的乳房切除は生存上の利点なし

BRCA1/2遺伝子変異をもつ人を対象とした前向きコホート研究において、予防的乳房切除(両側リスク低減乳房切除術:BRRM)は乳がんの発症を大幅に減少させることが確認された。しかし、定期的な画像検査による経過観察と比較して、全生存率や乳がん特異的生存率に有意な差は認められなかった。本研究は、マンチェスター大学NHS財団トラストのAshu Gandhi医師らによって実施されたもので、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。

研究では、BRCA1/2の病的バリアント保因者1205人が中央値9.5年間追跡され、参加者のうち460人(38.2%)がBRRMを選択し、745人(61.8%)が画像検査による経過観察を選択した。経過観察は英国の国家ガイドラインに準拠しており、通常は30〜49歳では年1回のMRI、40歳以上では年1回のマンモグラフィが行われた。

結果、乳がんの発症率は、予防的乳房切除(BRRM)を受けた群では2.2%と極めて低く抑えられたのに対し、画像検査による経過観察を継続した群では18.5%に達しており、手術によって発症リスクは大幅に低下していた。一方で、両群の死亡率については統計学的有意差が認められなかった。経過観察群では15人(2.0%)が乳がんで死亡したのに対し、BRRM群では1人(0.2%)であった。絶対数は手術群で少なかったが、乳がん特異的生存率(P = .09)および全生存率(P = .70)ともに有意差には至らなかった。

また、切除群で見つかったがんの多くは、手術時に初めて確認される潜在がんであり、症状や画像検査では検出されていなかった可能性が高い。これは、手術が新たな発症を防ぐだけでなく、すでに存在していたごく早期のがんを先に取り除いている側面もあることを示唆している。そのため、発症率の低下が必ずしも生存率の改善につながらない可能性がある。

遺伝子別では、BRCA1においても生存率の改善は確認されず、BRCA2ではいずれの方法でも乳がん死亡は見られなかった。これは、適切な経過観察により早期発見・治療が可能であることを示す結果ともいえる。

さらに、手術後には身体的変化や感覚の喪失、ボディイメージへの影響、性生活への影響などから後悔を感じる患者も一定数存在することが報告されている。一方で、がんになる不安を強く感じる患者にとっては、発症リスクを大きく下げられる点が重要な利点となる。

これらの結果から、予防的乳房切除(BRRM)は乳がんの発症リスクを大きく下げる一方で、適切な検査体制のもとでは生存率の向上には必ずしもつながらないことが示された。著者らは、治療選択においては「がんを避けること」と「手術による身体的・心理的影響」とのバランスを考慮し、患者ごとの価値観に基づいた意思決定を行うことが重要であると述べている。また、著者らは、追跡期間が比較的短いことや、高品質なMRIが利用可能な環境での結果である点にも言及しており、医療環境の違いや、特にBRCA1保因者における長期的な生存率の差については、今後も慎重に見極める必要があると指摘している。

  • 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
  • 参考記事

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