卵管同時切除で卵巣がん発症リスク低下か
骨盤・腹部手術の際に卵管を同時に切除することで、卵巣がんによる死亡を大幅に減らせる可能性がある。妊娠を終えた女性が子宮摘出術などの手術を受ける際に両側卵管を切除する「機会的両側卵管切除術」を追加することで、卵巣がんの発症リスクが大きく低下する可能性が示されている。しかし、その選択肢は十分に知られていない。
米国では毎年約2万1000人が卵巣がんと診断され、その約80%は高悪性度漿液性がん(HGSOC)である。卵巣がんは有効なスクリーニング法がなく、初期症状にも乏しいため「サイレントキラー」と呼ばれている。多くの患者は進行期で診断され、米国では約半数が5年生存にとどまる。
近年の研究により、多くの卵巣がんは卵巣そのものではなく卵管に起源を持つことが明らかになっている。閉経後の女性にとって卵管は機能を持たないため、卵管を切除することでがんの発生を予防できる可能性がある。複数の大規模な集団研究や2023年の系統的レビューでは、卵管切除により卵巣がんリスクがおよそ80%低下することが示されている。
JAMA Network Open誌に掲載された研究では、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で2008年から2020年の間に子宮摘出術または永久避妊手術を受けた女性を対象に後ろ向きコホート解析を行った。8万5823人のうち、4万527人が機会的両側卵管切除術を受け、4万5296人が子宮摘出単独または卵管結紮術を受けた。追跡期間中、比較群では21人が漿液性卵巣がんと診断されたのに対し、機会的両側卵管切除術群では5人以下であり、リスクは約80%減少していた(ハザード比0.22、95%信頼区間0.05–0.95)。
本手術は既存の手術に5〜13分程度を追加するのみで、低リスクであり、費用対効果も高いとされる。「将来妊娠を希望しない患者には、機会的卵管切除についてすべての外科医が話し合うことを勧めます」とGillian Hanley 医学博士は述べている。また、「すべての閉経後女性に手術を勧めているわけではありません。しかし他の手術の機会がある場合に追加することは、安全で低コストかつ非常に効果的です」と説明している。
米国外科医師会の年次総会では、胆嚢摘出術やヘルニア修復術など婦人科以外の手術にも卵管切除を組み込む可能性が議論された。「卵巣がんはしばしば遅れて発見され、深刻な結果をもたらします」とJoseph V. Sakran 医師は述べ、「一般外科医が予防の機会を探ることは極めて重要です」と語っている。
適格手術の60%に機会的両側卵管切除術を組み込めば、年間約6000人の卵巣がん死亡を防げると推計されている。「これは単なる統計ではなく、痛みや苦しみの減少であり、失われる命が減るということです」とKara C. Long 医師は述べている。
啓発活動も進められ、outsmartovariancancer.orgが立ち上げられた。さらに米国がん協会はBreak Through Cancer財団と連携し、医療従事者および一般向けに教育を行っている。政策面では、遺伝的・家族性リスクが知られていない場合の予防的卵管切除に対するICD-10-CM診断コード(Z40.82)が新設された。「私たちの目標は、予定された骨盤または腹部手術の際にこの手術が選択肢となり得ることを患者に理解してもらうことです。患者が選択できるようにしたいのです」とLong 医師は述べている。
- 監修 太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)
- 参考記事
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
卵巣がんに関連する記事
米FDAが一部の卵巣/卵管/腹膜がんにrelacorilant+ナブパクリタキセルを承認
2026年4月2日
プラチナ抵抗性卵巣がんの生存を改善したリラコリラント、欧州/米国で承認申請
2025年11月14日
【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果
2025年7月18日
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②
2025年7月18日




