【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果

【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果

● オラパリブ(商品名:リムパーザ)とペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用は、複数のがん種、特にBRCA1/2遺伝子変異(乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんなどの発症リスクを高める遺伝子変異)を有するがん種において抗腫瘍効果を示した。
● 本併用試験は、患者らをがん種ではなく、遺伝的特徴によりマッチングした。すなわち、本試験は臓器横断的に、かつ、分子レベルで患者らをマッチングし、30種類のがん種を含んでいる。
● 先行研究では、これら2つの治療法の相乗効果の可能性が示唆されていたが、本試験では、その相乗効果について複数の進行固形がん、特に特定の患者グループにおいて検証した。
● 併用療法は、現在承認されているこれらの治療法の適応を超えるものも含め、さまざまながん種において完全奏効および部分奏効を示した。

アブストラクト:CT004

PARP阻害薬(細胞の増殖に必要なDNAの修復を防げることで細胞死を誘導し抗腫瘍効果をあらわす薬)であるオラパリブと、PD1-阻害薬(免疫チェックポイント阻害薬の一種)であるペムブロリズマブの併用療法は、特にBRCA1/2遺伝子変異を有する患者に対して、分子レベルでマッチングした臓器横断的な試験において、新たに懸念される安全性の問題も認められず、初期抗腫瘍効果を示したことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導した第2相試験の結果により明らかとなった。

KEYLYNK-007試験のデータは、本日、米国がん学会(AACR)年次総会2025の臨床試験に関する全体会議において、MDアンダーソンの治療薬探索部門副部門長兼臨床開発責任者であるTimothy Yap 博士(医学士、試験的がん治療学教授) により発表された。 

「以前の研究でこの併用療法には相乗効果がある可能性が示唆されており、今回の試験でもその可能性が認められました」とYap博士は述べた。「特に、複数の異なる固形がんにわたって、BRCA1/2遺伝子変異を有する患者グループにおいて、持続的な抗腫瘍効果を示しました」。

本試験では、BRCA1/2遺伝子変異を有する患者、非BRCA1/2相同組換え修復(HRR)遺伝子変異を有する患者、相同組換え修復不全(HRD)を有する患者という事前に定義された3つの異なる遺伝子変異グループに従って、30種類のがん患者332人が登録された。

放射線画像診断の確定診断により、18人の患者がこの治療法で完全奏効を示した。そのうち11人はBRCA1/2遺伝子変異の患者グループであった。これらの治療法が現在承認されていない複数のがん種で奏効が認められた。

KEYLYNK-007

BRCA1/2遺伝子変異 相同組換え修復遺伝子変異相同組換え修復不全
完全奏効8.3%1.9%5.2%
部分奏効18.9%9.6%7.3%
病勢安定37.1%43.9%46.2%
病勢コントロール率64.4%67.3%62.5%
追跡期間中央値13.4カ月 10.4カ月10.8カ月

安全性プロファイル(医薬品などの安全性に関する情報をまとめたもの)は、2つの療法の既知の安全性プロファイルと一致していた。

「本試験が、この併用療法に関して、分子レベルでマッチングした患者を対象とした最大のデータの集積であることは注目に値します」とYap博士は述べた。「これらのデータのさらなる解析が、この併用療法に対し優れた奏効を示す可能性の高い患者をより正確に同定する新たな予測バイオマーカーを発見する手助けとなることを期待しています」。

本試験はMerck Sharp & Dohme 社から資金提供を受けた。共著者の全リストおよび開示情報はこちらの抄録に掲載されている。

米国がん学会年次総会(AACR)でのMDアンダーソン発表内容の詳細は、MDAnderson.org/AACR

  • 監修 原野謙一(乳腺・婦人科腫瘍内科/国立がん研究センター東病院)
  • 記事担当者 山口みどり
  • 原文を見る
  • 記事掲載日 2025/04/27

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