【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②
5月30日-6月3日イリノイ州シカゴおよびオンラインで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、がんのさまざまな部位にわたる幅広いテーマについて探究した44件の研究が発表された。
【アブストラクトLBA5500】 TRUST:進行卵巣がんにおける根治的先行手術療法の試験(ENGOT ov33/AGO-OVAR OP7)。
「進行卵巣がん患者において、最大限の努力による肉眼的完全腫瘍減量術は治療の基本です。このような手術の最適なタイミングとしては、化学療法前の初回腫瘍減量術として行うのがより有益なのか、あるいは術前化学療法3サイクル後のインターバル腫瘍減量術として行うのがより有益なのか、まだ議論の余地があります。TRUSTは、主要評価項目である全生存期間において統計学的有意性には達しなかったものの、初回腫瘍減量術がインターバル腫瘍減量術よりも有益であることを示した最初のランダム化試験です。この有益性は、熟練した施設における確立された手術の質と高い完全切除率に関連していると思われ、切除可能と思われる進行卵巣がんの非虚弱患者における標準治療としての初回腫瘍減量術を裏付けるものです。この結果は、手術の質を保証する基準を明確にし、十分に認定された婦人科がんセンターでこのような患者を治療することの重要性を強調するものです」と筆頭著者であるSven Mahner医師は述べた。
【アブストラクト505】 エキセメスタン+卵巣機能抑制療法(OFS)、またはタモキシフェン+OFSによる術後補助療法の有益性を評価したSOFT試験およびTEXT試験における閉経前ホルモン受容体陽性早期乳がん女性の15年転帰。
「35歳未満のホルモン受容体陽性乳がん女性において再発率が高いこと、および、卵巣機能抑制と、術後補助療法としてのタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬との併用の評価が不確定であることから、私たちはSOFT & TEXT閉経前臨床試験を計画しました。この試験では、タモキシフェンと卵巣機能抑制の併用によって乳がんの再発が減少し、アロマターゼ阻害薬エキセメスタンと卵巣機能抑制の併用ではタモキシフェンと比較してさらに再発が減少することがわかりました。経口ホルモン療法と卵巣機能抑制の併用は、ほとんどの閉経前女性において臨床的に有意な全生存期間延長をもたらさなかったが、高リスク患者グループでは生存期間が改善しました。35歳未満では全生存期間が大幅に改善しました。閉経前女性の術後補助ホルモン療法を個別化するためには、治療選択肢、再発リスク、優先傾向に関して十分な議論を行うことが重要でしょう」と、本研究の筆頭著者であるPrudence A. Francis医師(FRACP)は述べた。
【アブストラクト 8001】 切除可能な上皮成長因子受容体変異NSCLCにおける術前オシメルチニブ(販売名:タグリッソ)±化学療法(CT)とCT単独療法との比較:NeoADAURA。
「切除可能なEGFR変異非小細胞肺がん患者に対する標準的な術前療法はなく、免疫療法レジメンはこの集団には適切ではありません。本試験では、化学療法を併用する、または併用しない術前オシメルチニブの有効性を、術前化学療法単独と比較して確定することを目指しました。 われわれの研究では、化学療法を併用する、または併用しない術前オシメルチニブは、術前化学療法単独よりも優れていることが示されました。本試験により、術前補助療法が適している切除可能なEGFR+非小細胞肺がん患者の術前化学療法へのEGFR標的療法の適用が拡大されるでしょう」と、本試験の筆頭著者であるJamie E. Chaft医師(FASCO)は述べた。
【アブストラクト508】 術後ホルモン療法に伴う血管運動神経症状に対するエリンザネタントの有効性と安全性: 第3相OASIS 4試験。
「血管運動神経症状は、ホットフラッシュとしても知られ、自然および外科的に誘発された閉経に伴う一般的で厄介な症状です。ホルモン療法は、ER+/HER-2陰性乳がんに対する主要な治療法ですが、ER+/HER-2陰性乳がんは乳がんの中で最も頻度が高いタイプで、乳がん症例全体の約2/3を占めます。ホルモン療法を受けている女性における血管運動神経症状は、特に若い女性において、自然閉経に伴う症状よりも重度となる可能性があり、現在のところ承認された治療法はありません。本研究では、ホルモンを含まない二重ニューロキニン標的療法であるエリンザネタントが、乳がんのホルモン療法を受けている女性の血管運動神経症状を有意に軽減することが明らかになりました。これは、ホルモン療法を受けている乳がん患者の血管運動神経症状の治療において、有効性と良好な安全性プロファイルを示した初めての治療法です」と、本研究の筆頭著者であるFatima Cardoso医師は述べた。
【アブストラクト6500】 本態性血小板血症の治療におけるロペグインターフェロンアルファ-2bとアナグレリドとの比較: 第3相SURPASS-ET試験のトップライン結果。
【アブストラクト501】 タキサン、トラスツズマブ、ペルツズマブによる治療を受けたステージ2/3 HER2陽性乳がんにおいて、臨床病理学的変数と HER2DX ゲノム検査から病理学的完全奏効を予測する: EA1181/CompassHER2 pCR試験の二次結果。
【アブストラクト9506】 DREAMseq:BRAFV600変異転移性メラノーマ(悪性黒色腫)における治療シーケンスの第3相試験-最終臨床結果。
【アブストラクト5000】 初発の限局性前立腺がんに対して、CAN-2409+プロドラッグと標準治療の外照射を併用する第3相ランダム化プラセボ対照臨床試験。
2025年ASCO年次総会で発表されるASCO研究
【アブストラクト11000】 造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者の介護者のための心理社会的デジタルアプリケーション: ランダム化比較試験。
【アブストラクト7009】 未治療(TN)CLL/SLLに対するザヌブルチニブ(販売名:ブルキンザ)+ベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)併用療法:SEQUOIAのD群の結果。
【アブストラクト6002】 進行扁平上皮がん(cSCC)に対するアベルマブ(販売名:バベンチオ)+セツキシマブ(販売名:アービタックス)併用療法とアベルマブ単独療法の第2相ランダム化試験(Alliance/A091802)。
【アブストラクト9001】 血液腫瘍学フェロー(HOF)の知識を向上させるためのポッドキャストカリキュラム(PC)の統合: 多施設クラスターランダム化対照試験。
【アブストラクト11075】 メディケア・アドバンテージと従来のメディケアにおける低価値がん治療の使用。
【アブストラクト4001】 進行転移性胃食道腺がんに対するレンバチニブ(販売名:レンビマ)+ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)+化学療法と化学療法の比較:第3相ランダム化LEAP-015 試験。
【アブストラクト8503】 EGFR エクソン20挿入変異を有し、アミバンタマブ(販売名:ライブリバント)の併用または非併用でプラチナ製 剤ベースの化学療法を受けたNSCLC患者におけるジパレルチニブの有効性。
【アブストラクト5017】 転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象としたJNJ-78278343(pasritamig)の第1相試験結果。
【アブストラクト12116】 免疫チェックポイント阻害薬治療後の甲状腺機能モニタリングの妥当性。
【アブストラクト8001】 切除可能な上皮成長因子受容体変異(EGFRm)NSCLCにける術前オシメルチニブ(販売名:タグリッソ)±化学療法(CT)とCT単独療法との比較:NeoADAURA。
【アブストラクト1501】 Enhancing Oncology Modelに登録された腫瘍科診療所における総医療費削減に対する遠隔臨床薬剤師の影響。
【アブストラクト1500】 第1相がん臨床試験における薬剤師主導の薬剤調整テレビ電話診療(MRT): 遠隔医療モデル。
【アブストラクト7506】 再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)において、ポマリドマイド+デキサメタゾン(Pd)を併用する、オンボディデリバリーシステム(OBDS)によるイサツキシマブ(Isa。販売名:サークリサ)皮下注とIsa静脈内投与の比較: ランダム化、非劣性、第 3 相 IRAKLIA 試験の結果。
【アブストラクト7507】 再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)のCARTITUDE-1患者におけるシルタカブタジェン オートロイセル(cilta-cel)治療後の長期(5年以上)寛解と生存。
【アブストラクトe23103】 ナイジェリアにおける前立腺がん患者の健康関連社会的ニーズを測るための適応ツールの開発と検証。
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA①はこちら
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当者 山田登志子
- 原文を見る
- 原文掲載日 2025/06/03
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果
2025年7月18日
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ①
2025年7月18日
【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制
2025年6月19日
【ASCO2025】サシツズマブ ゴビテカン、一部のPD-L1陽性乳がん(TNBC)でがんの進行なく延命効果
2025年6月19日