GLP-1作動薬が炎症性腸疾患の大腸がんリスクを低減【ASCOブレイクスルー会議2026】
ASCOの見解(引用)
「クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患患者は、大腸がんを発症するリスクが高いことが知られています。この大規模な集団ベースの研究では、糖尿病やその他の理由でGLP-1受容体作動薬の投与を受けた炎症性腸疾患患者は、同薬を投与されなかった患者と比較して、大腸がんの発症率が低いことが明らかになりました。これは非常に有望なデータであり、GLP-1受容体作動薬が、このようながん発症リスクの高い集団においてリスクを低減できるかどうかを評価するための、さらなる研究の必要性を裏付けるものです」と、ASCO副会長および最高医学責任者であるJulie R. Gralow医師(FACP、FASCO)は述べた。
試験概要
| 焦点 | 炎症性腸疾患(IBD)患者において、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1受容体作動薬)の使用が大腸がんのリスクを低下させるかどうかを明らかにすること |
| 対象者 | 米国における炎症性腸疾患(IBD)患者1,137,300人と、IBDと2型糖尿病を併存する患者209,649人 |
| 主な結果 | GLP-1受容体作動薬による治療を受けた炎症性腸疾患(IBD)患者では、大腸がんの発症率が有意に低かった。これは、IBDと2型糖尿病を併発している患者においても同様であった |
| 意義 | ● 炎症性腸疾患(IBD)は、消化管に炎症や腫れを引き起こす疾患の総称である。 ・ クローン病と潰瘍性大腸炎は、IBDの中で最も多くみられるタイプである。 ● IBDでは大腸がんのリスクが高くなり、それは腸内の慢性炎症と関連していると考えられる。 ・ IBD患者は、IBDでない人と比べて大腸がんを発症するリスクが6倍高くなる。 ● 2型糖尿病も大腸がんのリスクを高めるが、2型糖尿病とIBDを併発している人における大腸がんのリスクについては明らかになっていない。 ● GLP-1受容体作動薬には、血糖値の低下や体重減少の促進など、さまざまな健康上の利点がある |
炎症性腸疾患(IBD)の患者で、GLP-1受容体作動薬(GLP-1)を投与された群では、大腸がんの発症率が有意に低かった。これは、IBDと2型糖尿病を併発している患者においても同様であった。この研究結果は、6月25日から27日までシンガポールで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)ブレークスルー会議で発表される予定である。
試験について
「炎症性腸疾患の患者、および炎症性腸疾患と2型糖尿病を併発している患者は、大腸がんのリスクが特に高い集団です。しかし、私たちの知る限り、このような集団を対象とした大規模な研究はこれまで実施されていませんでした」と、Sarina Ailawadi医師(オステオパシー医師:DO)(ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部、オハイオ州クリーブランド)は述べた。
この後ろ向きコホート研究では、米国の1億5,000万人以上のデータを収録した医療データベース「TriNetX」の既存データを用いた。研究者らは炎症性腸疾患(IBD)患者を特定し、データ解析のためにGLP-1受容体作動薬(GLP-1)使用群と非使用群に分類した。IBD患者1,137,300人(GLP-1使用者70,303人、非使用者1,066,997人を含む)のうち、69,221人の健康データを解析した。両群は、年齢、性別、人種、肥満の有無などの背景因子が一致するようにマッチングされた。
研究者らはまた、炎症性腸疾患と2型糖尿病を併発している209,649人を特定し、そのうち38,567人がGLP-1受容体作動薬を使用していた。GLP-1使用者と非使用者についてさまざまな背景因子をマッチングさせた後、最終的に37,740人のデータを解析した。
GLP-1使用群では、セマグルチド、デュラグルチド、チルゼパチド、エキセナチド、リラグルチド、またはリキシセナチドが使用されていた。
主な知見
● GLP-1受容体作動薬(GLP-1)を使用していた炎症性腸疾患(IBD)患者では、大腸がんの発生率が有意に低かった。
・ 5年間の大腸がん累積発生率は、GLP-1使用群で0.2%、非使用群で0.42%であった。
・ オッズ比は0.49であり、これはGLP-1の使用が大腸がんの発症リスクを51%低下させることに関連していたことを意味する。
● GLP-1の使用は、炎症性腸疾患と2型糖尿病を併発する患者においても、大腸がんの発生率の有意な低下と関連していた。
・ 5年間の大腸がん累積発生率は、GLP-1使用群で0.31%、非使用群で0.57%であった。
・ オッズ比は0.54であり、これはGLP-1の使用が大腸がんの発症リスクを46%低下させることに関連していたことを意味する。
研究者らは、炎症性腸疾患(IBD)患者およびIBDと2型糖尿病を併発している患者において、大腸がんリスクに対するGLP-1受容体作動薬の潜在的な予防効果を確認するためには、前向き研究が必要であると述べている。
次のステップ
研究者らは、炎症性腸疾患(IBD)患者におけるGLP-1受容体作動薬の副作用を分析する予定である。GLP-1受容体作動薬の一般的な副作用としては、吐き気、嘔吐、便秘、腹部不快感、食欲減退などが挙げられる。これらの症状はIBDの再燃時の症状と類似しているため、薬剤による副作用と疾患の活動性を区別することは重要であると同時に、困難を伴う可能性がある。
本研究は外部からの資金提供を受けていない。
- 記事担当 青山真佐枝
- 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
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- 原文掲載日 2026/06/23
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