糖尿病薬GLP-1作動薬は大腸がん発症リスクの低減に寄与

糖尿病薬GLP-1作動薬は大腸がん発症リスクの低減に寄与

ASCOの見解(引用)

「GLP-1受容体作動薬は、痩身効果以外にもさまざまな利益をもたらす可能性がある。今回の知見は同薬が、がん予防治療戦略においても重要な役割を担う可能性を示している。アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬、スタチン類の大腸がん発症予防効果については長年研究が進められている。本実臨床研究は、GLP-1受容体作動薬がこの領域で画期的な役割を果たす可能性を示唆している。これらの薬剤ががん予防に役立つ可能性を理解するためには、さらなる研究が確実に必要である」と、ASCO消化器がん専門家であり、クリーブランド・クリニック・タウシグがんセンター地域腫瘍学副部長のJoel Saltzman医師は述べた。

試験概要

焦点大腸がんの一次予防効果についてグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1)をアスピリンと比較
対象者大腸がん発症リスクが高い人々281,656人
主な結果GLP-1薬を服用した人は、アスピリンを服用した人よりも大腸がんを発症する可能性が低かった。
意義・2025年、米国では15万人が大腸がんと診断され、5万人以上がこの病気で死亡すると推定された。 

・複数の研究から、低用量アスピリンの長期にわたる定期的服用は大腸がんの予防に役立つと示唆されている。しかし、出血などの重篤な副作用を引き起こす可能性があり、現在では大腸がん予防のための使用は推奨されていない。

・過去の研究では、GLP-1受容体作動薬(GLP-1)ががん予防に有望な結果を示している。

グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1)を服用した人は、アスピリンを服用した人に比べて大腸がんを発症するリスクが36%低かった。アスピリンは特定の集団において大腸がんの予防に使用されてきたが、出血リスクの上昇も伴う。本研究は、1月8日から10日までサンフランシスコで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムで発表される。

試験について

「アスピリンは大腸がん予防について研究されてきましたが、その効果は限定的であり、出血リスクがあることから使用が制限されています。現在、糖尿病や肥満の治療に広く処方されているGLP-1受容体作動薬は、代謝コントロールとがん予防の両方において安全性の高い選択肢となる可能性があります。本研究は、アスピリンとGLP-1受容体作動薬を直接比較した初めての大規模な実臨床エビデンスを提供するという点で重要です」と、テキサス大学サンアントニオ校血液腫瘍学フェローで、本研究の筆頭著者であるColton Jones医師は述べる。

本研究では、商用データベースであるTriNetXの健康データを用いて、281,656人を検証対象とした。対象者の半数はGLP-1剤を、残りの半数はアスピリンを服用していた。両グループの対象者平均年齢は58歳で、大半が女性(69%)であった。人種別内訳は、白人67%、黒人12%、アジア系2.3%であった。

研究者らは、GLP-1剤またはアスピリンの服用開始後に大腸がんと診断されたかどうかを確認するため、対象者の健康記録を調査した。対象者の健康状態を追跡した期間の中央値は、GLP-1群で約6年、アスピリン群で約5年であった。

主な知見

  • GLP-1剤を服用した人は、アスピリンを服用した人に比べて大腸がんを発症する可能性が36%低かった。
  • 健康状態または家族歴により大腸がんの発症リスクが高いとされた対象者のうち、GLP-1剤を服用した人は、アスピリンを服用した人に比べて発症リスクが約42%低かった。
  • 全対象者において:
  • 急性腎障害、胃潰瘍、消化管出血は、GLP-1群ではアスピリン群よりも少なかった。
  • 下痢と腹痛は、GLP-1群ではアスピリン群よりも多かった。
  • 吐き気と嘔吐は両群でほぼ同程度であった。
  • 1人当たりの利益はわずかであった:統計によると、1人の大腸がん発症リスクを低下させるには、2,000人以上がGLP-1薬による治療を受ける必要があることが示された。
  • しかし、最近の調査では、成人の6%がこれらの薬を服用していた。これは、約2,000万人ものアメリカ人が既にGLP-1受容体作動薬を使用しており、その多くが大腸がんの発症リスクを低減できる可能性があることを意味する。
  • GLP-1薬は、45歳未満で薬の服用を開始した対象者において大腸がんリスクを低減した。
  • GLP-1薬は、肥満や糖尿病の有無にかかわらず、大腸がんリスクを低減した。
  • しかし、喫煙者や動脈硬化症のある人では大腸がんリスクは低減しなかった。
  • 全体として、研究対象となったGLP-1剤は大腸がんリスクを低減することが示された。
  • しかし、個別に研究した場合、セマグルチド、リラグルチド、デュラグルチドのみの効果が有意であった。
  • チルザペプチドとエキセネチドは、本研究では同様の有意性を示さなかった。

次のステップ

研究者らは、これらの知見をランダム化比較臨床試験で検証する計画である。

本研究は外部からの資金提供を受けていない。

  • 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
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  • 原文掲載日 2026/01/06

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