イナボリシブ併用療法がアジア人乳がん患者の転帰を改善
ASCOの見解(引用)
「アジア人患者を対象としたグループ別分析(サブセット解析)の結果から、inavolisib[イナボリシブ]、パルボシクリブ、フルベストラントの併用療法は、患者の生存期間を延長するとともに、化学療法が必要になる時期を遅らせることが示されました。また、新たな副作用は認められず、イナボリシブの投与中止率は全患者集団と比較して低い結果でした。この第3相試験のデータは、PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、ホルモン療法抵抗性進行乳がんを有するアジア人患者における、INAVO120試験レジメンの有用性を裏づけるものです」と、インド、バンガルールのアポロ病院カルナータカ州地域腫瘍科学部門リーダーであり、ASCOの乳がん専門家であるVishwanath Sathyanarayanan医師(MD、DM)は述べた。
研究概要
| 焦点 | アジアの乳がん患者を対象とした、イナボリシブ、パルボシクリブおよびフルベストラント併用療法の評価 |
| 対象者 | PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性(HR陽性)、ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2陰性)であるホルモン療法抵抗性進行乳がんのアジア人患者120人 |
| 主な結果 | イナボリシブを標準的な乳がん治療と併用した場合の安全性と有効性は、アジアの患者においても、INAVO120臨床試験の全患者集団と同様であった。 |
| 意義 | ⚫︎世界保健機関(WHO)によると、2022年には世界で約230万人が乳がんと診断され、70万人近くがこの病気で亡くなったと推定されている。 ⚫︎乳がん患者の約70%が、HR陽性、HER2陰性のサブタイプに分類される。 ⚫︎HR陽性乳がん患者の約40%では、PIK3CAと呼ばれる遺伝子に変異が認められ、その結果、変異型のp110αタンパク質が産生される。 ⚫︎イナボリシブは、新たに開発されたPI3K阻害薬であり、変異型p110αの活性を阻害するとともに、PI3Kタンパク質の分解を促す。 ⚫︎2025年5月に結果が報告された第3相INAVO120臨床試験では、進行乳がん患者を対象に、イナボリシブをパルボシクリブおよびフルベストラントと併用した。その結果、イナボリシブはプラセボ群と比較して、がんの進行および死亡のリスクを低下させることが示された。 ⚪︎これらの結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)は、PIK3CA遺伝子変異陽性、HR陽性、HER2陰性のホルモン療法抵抗性進行乳がん患者を対象として、この併用療法を承認した。 ⚫︎有害事象や薬剤忍容性は、人種集団によって異なる場合がある。本研究では、INAVO120試験に登録された全患者集団のうち、アジアの患者を対象としたサブグループ解析を実施した。 |
イナボリシブを標準的な乳がん治療法であるパルボシクリブおよびフルベストラントと併用した場合、アジアの患者においても、第3相INAVO120臨床試験の多様な人種および国籍の患者からなる全体集団と同等の安全性および有効性が確認された。この研究結果は、6月25日から27日までシンガポールで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)ブレークスルー会議で発表される予定である。
研究について
「本研究は、PIK3CA遺伝子変異を有するHR陽性、HER2陰性進行乳がんのアジア人患者に対する標的治療の切実なニーズに応えるものです。これらの患者では、ホルモン療法への耐性により病勢が急速に進行することが多く、長期間使用しても患者の生活の質(QOL)を著しく損なうことなく、高い治療効果が期待できる治療レジメンが求められています」と、シンガポール国立がんセンターのYoon Sim Yap博士(MBBS、FRACP、PhD)は述べた。
国際共同第3相臨床試験であるINAVO120には、合計325人の患者が登録され、そのうち120人がアジアの患者であった。すべての患者は無作為に治療群へ割り付けられた。アジアの患者のうち、58人がイナボリシブ群、62人がプラセボ群に割り付けられた。イナボリシブおよびプラセボはいずれも、パルボシクリブとフルベストラントとの併用で投与された。イナボリシブ、パルボシクリブおよびプラセボは錠剤で投与され、フルベストラントは筋肉内注射された。患者は、腫瘍の増殖を抑えられなくなるか、副作用が許容できない程度に悪化するか、または死亡するまで治療を継続した。
主な知見
アジアで登録された患者では、次の結果が得られた。
- 腫瘍が縮小あるいは消失した患者(全奏効率)は、イナボリシブ群で60.3%、プラセボ群では27.4%であった。
- 治療が効果を示し始めてから、その効果が失われるまでの期間(奏効期間)の中央値は、イナボリシブ群で18.8カ月、プラセボ群では10.7カ月であった。
- 治療開始からがんが進行する、または患者が死亡するまでの期間(無増悪生存期間)は、イナボリシブ群で14.8カ月、プラセボ群では6.8カ月であった。
- 無作為に治療群へ割り付けられてから、化学療法への切り替えまたは死亡までの期間も評価され、イナボリシブ群で19.2カ月、プラセボ群では10.6カ月であった。
- 全生存期間の中央値は、イナボリシブ群で32.7カ月、プラセボ群では27.0カ月であった。
- アジアの患者では、INAVO120試験の全登録患者で認められたもの以外の有害事象は認められなかった。
- アジアの患者のうち、イナボリシブ群で最も多くみられた重篤な副作用は、発熱のみおよび発熱と白血球数減少(発熱性好中球減少症)であった。また、アジアの患者では、INAVO120試験の全患者集団と比較して、副作用のためイナボリシブの投与を中止した患者は少なかった(6.8%対3.4%)。
次のステップ
現在進行中の第3相試験であるINAVO121、INAVO122およびINAVO123の各試験では、より幅広い患者集団がイナボリシブをベースとする治療レジメンの恩恵を受けられるかどうかを検証している。
本研究は、主にF. Hoffmann-La Roche社から資金提供を受けている。
- 記事担当 田村克代
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
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- 原文掲載日 2026/06/23
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