【ASCO26】センチネルリンパ節転移乳がん、腋窩リンパ節郭清を安全に省略可能か

【ASCO26】センチネルリンパ節転移乳がん、腋窩リンパ節郭清を安全に省略可能か

※本記事には、抄録には含まれていない最新データが含まれます。

ASCOの見解(引用)

「リンパ浮腫は、乳がん治療終了後も長期間にわたり、女性の身体機能、外見、自尊心に深刻な影響を及ぼし、生活の質を著しく損なう問題となり得ます。この厳格な大規模臨床試験で、リンパ節転移が限局している患者さんにおいては、侵襲的な腋窩リンパ節郭清術を安全に省略できることが証明されました。また、この追加手術を回避することで、長期的な上肢の合併症を大幅に減らし、診断から数年経った後も乳がん患者さんの上肢機能を改善できることが示されました。今回の結果は外科治療を簡素化し、世界中の乳がん患者さんのサバイバーシップに大きな影響を与えるでしょう」
ーJane Lowe Meisel医師(FACSO)、エモリー大学ウィンシップがん研究所の腫瘍内科医、ASCO乳がん専門家

試験概要

焦点センチネルリンパ節に1~2個の転移を有する乳がん
対象者スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、イタリアの2,540人
主な結果センチネルリンパ節に1~2個の転移を有する乳がん患者では、腋窩リンパ節郭清(ALND)の省略は安全であり、長期にわたる上肢関連の副作用を回避できる可能性がある
意義・乳がんは、米国の女性で最も多く診断されるがんであり、新規に診断されるがん全体の約3分の1を占めている。アメリカがん協会(ACS)の推計によると、2026年には米国で約32万2,000人の女性が乳がんと診断される見込みである。

・乳がんの最大20%がセンチネルリンパ節へ転移する。センチネルリンパ節生検で転移が確認された場合、他のリンパ節にも転移している可能性が高くなる。このような場合には、腋窩の追加リンパ節を切除するために腋窩リンパ節郭清(ALND)が実施されることがある。

・ALNDは、疼痛、しびれ、上肢可動域の制限、リンパ浮腫など、長期間持続する上肢の問題を引き起こすことが知られている。本研究の著者らによると、ALNDを受けた患者の約5人に1人(19%)が5年後にも中等度の上肢機能障害を報告しており、13%は重度または極めて重度の障害を報告している。

・これまでの研究では、センチネルリンパ節に転移した一部の乳がん患者において、ALNDを回避しても安全である可能性が示されていた。

・本研究では、乳房切除術を受ける患者や、センチネルリンパ節内に2mmを超えるマクロ転移を有する患者においても、ALNDを安全に省略できるかどうかを検証した。

第3相SENOMAC臨床試験の結果によると、センチネルリンパ節に1〜2個の転移を有する乳がん患者において、腋窩リンパ節郭清(ALND)は安全に省略でき、生活の質(QOL)に影響を与えるとされる副作用を回避することができた。結果は、2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会(5月29日〜6月2日、シカゴ)で発表された。

試験について

「これまでの臨床試験では、乳房全摘術を受ける患者さんや、腫瘍が大きい患者さんに対しても腋窩リンパ節郭清を省略できるかどうかは不明でした。今回の重要な知見は、腋窩に対してより多くの手術を行うこと自体が、生存率を向上させるわけではないということです。これは非常に重要なことです。なぜなら、腋窩手術は治療のための手段ではなく、診断のための手段として捉えるべきであることを意味するからです」と、本研究の筆頭著者であり、カピオ・セント・ヨーランズ病院外科およびカロリンスカ研究所医療疫学・生物統計学部門のJana de Boniface医学博士は述べる。

この試験には、T1からT3の乳がんで、センチネルリンパ節へのマクロ転移が2個以下の患者2,540人が参加した。T1〜T3の腫瘍は胸壁や皮膚への浸潤を認めず、大きさは0.1cmから5cm超である。参加者の年齢中央値は61歳であった。参加者の大部分(93.6%)はエストロゲン受容体陽性乳がんであり、3人に1人強(36.3%)が乳房切除術を受けていた。

参加者は、センチネルリンパ節生検(SLNB)で最大2個のマクロ転移が認められた後、腋窩リンパ節郭清(ALND)を実施する群(ALND群、1,205人)またはALNDを省略する群(ALND省略群、1,335人)に無作為に割り付けられた。両群に対して標準治療に基づく術後療法が行われ、多くは領域リンパ節への放射線療法が含まれていた。

上肢に関連する副作用を評価するため、参加者はランダム化から1年後、3年後、5年後に質問票へ回答した。評価には以下の質問票を用いた:
●Lymph-ICF質問票では、重い物を持ち上げたり自動車を運転したりする能力など、上肢リンパ浮腫の影響に関する項目を評価した。参加者は問題の程度を0~10点で評価し、その結果として総合スコア(0~100点)が算出された。0点は上肢の問題が全くない状態、100点は最も重度の上肢障害であった。
●EORTC QLQ-BR23質問票では、上肢症状など乳がん特有の副作用について評価した。スコアは0~100点で、高いほど症状が強いことを意味した。

主な知見

追跡期間中央値60.1カ月時点で、以下の結果が得られた:

●5年全生存率は両群で同等であり、腋窩リンパ節郭清を実施する群(ALND群)では93.4%、ALND省略群では94.4%が5年時点で生存していた。
●5年乳がん特異的生存率は、ALND群で97.2%、ALND省略群で97.9%であった。
●全体で203人が死亡し、そのうち74人は乳がんが死因であった。
●さらに、ALNDを受けなかった患者は、ALNDを受けた患者と比較して、治療後1年、3年、5年のいずれの時点においても有意に良好な上肢機能を報告した:
 ○Lymph-ICF質問票による評価では、ALND省略群はALND群と比較して、1年後に平均10.64点、3年後に平均10.73点、5年後に平均10.75点良好であり、自己申告による上肢機能が優れていることが示された。
 ○EORTC質問票による評価でも、ALND省略群では上肢症状が少なかった。平均スコア差は1年後で10.90点、3年後で9.86点、5年後で10.02点であった。
 ○質問票の回答率は、1年後および3年後で83%、5年後で81%であった。

次のステップ

研究者らは現在、SENOMAC-ULTRAと呼ばれる新たなランダム化試験を開始しており、腋窩リンパ節転移が確認されている患者を対象に、腋窩リンパ節郭清(ALND)と、摘出するリンパ節の数が大幅に少ない標的腋窩郭清とを比較している。また、ALNDを受けないエストロゲン受容体陽性乳がん患者で、センチネルリンパ節転移が1~2個認められる症例を対象に、リンパ節領域への放射線療法の省略を評価するランダム化試験T-REXも実施している。

本研究は、スウェーデンがん協会、スウェーデン研究評議会、北欧がん連合、およびスウェーデン乳がん協会の支援を受けて実施された。

  • 記事担当 平沢沙枝
  • 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
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  • 原文掲載日 2026/05/30

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