乳がん診断時からの緩和ケアでインド人患者のQOLが向上

乳がん診断時からの緩和ケアでインド人患者のQOLが向上

※本記事には、抄録には含まれていない最新データが含まれています。

ASCOの見解(引用)

「本研究では、乳がん治療において極めて重要でありながら、しばしば過小評価されがちな側面、すなわち積極治療と並行して早期に緩和ケア(または支持療法)を取り入れることについて取り上げています。これらの結果は、早期の緩和ケアが質の高い乳がん治療の標準的な構成要素として位置づけられるべきであることを裏付けています。今後の課題は、その実践、すなわち、訓練を受けた緩和ケアチームへのアクセスを確保し、特に資源が限られている環境において、これらのサービスを腫瘍学の診療フローに効率的に統合することにあります」と、Rebecca Alexandra Dent医師(シンガポール国立がんセンター副最高経営責任者(臨床担当)兼シニアコンサルタント、ASCO乳がん専門家)は述べた。

研究概要

焦点診断時に緩和(支持)ケアを標準的な乳がん治療に組み込むことが、必要に応じて緩和ケアが行われるよりも生活の質を向上させるかどうかを検証する
対象者インドにある一医療機関で治療を受けている乳がん患者110人
主な結果乳がんと診断された時点で緩和ケアを組み込んだ方が、必要に応じて緩和ケアが行われるよりも生活の質を向上させる。
意義●インドでは毎年10万人以上が乳がんと診断されている。
・その半数以上が、診断されたときには、がんはすでに進行または転移していて、全身症状が発現している。

●治療による副作用に加え、乳がん患者は痛み、疲労、不安、睡眠障害などを抱えることがある。
・緩和ケアには症状の管理、心理社会的カウンセリング、教育的支援などがあり、がんに伴う症状や問題の対処を助ける。

●インドや他の多くの国では、乳がんの緩和ケアは通常、患者が希望した場合、または根治治療の効果が見込めなくなった場合にのみ行われる。

●早期の緩和ケア導入を推奨する根拠は、主に高所得国の肺がんやその他のがん種の患者を対象とした研究である。

インドで乳がんと診断された患者において、診断時に緩和ケアを組み込む方が、疾患の経過中に症状が悪化した場合にのみ提供されるオンデマンド型の緩和ケアよりも、生活の質(QOL)が改善された。本研究は、6月25日から27日までシンガポールで開催された2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)ブレークスルー会議で発表された。

研究について

「これまで低・中所得国では、特に乳がんについて、根治治療の選択肢が尽きた後ではなく、診断時に支持療法を開始した場合に、生活の質がどの程度向上するかを定量的に評価したランダム化比較試験はありませんでした。本試験はその空白を埋め、資源が限られた環境における乳がんケア・パスに直接活用できるデータを提供するものです」と、全インド医科大学(インド、ニューデリー)付属Dr. B.R.A Institute-Rotaryがん病院のHimanshu Varshney医師は述べた。

この試験には、新規に乳がんと診断された110人の患者が登録され、その大半は進行した段階で診断された。患者らは、早期に緩和ケアを組み込む早期緩和ケア導入群(介入群)または必要に応じて緩和ケアを行うオンデマンド緩和ケア群(対照群)に無作為に割り付けられた。早期緩和ケア導入群の患者は56人、オンデマンド緩和ケア群の患者は54人であり、年齢、活動状態(日常生活動作を行う機能)、学歴などの特性についてマッチングが行われた。

早期緩和ケア導入群の参加者は、乳がんの診断から1週間以内に緩和ケアへの紹介を受けた。緩和ケアの受診は少なくとも月に1回行われ、標準的な乳がん治療と並行して患者に提供された。オンデマンド緩和ケア群の参加者は、本人、家族、または主治医から要請があった場合、あるいは標準的な乳がん治療が奏効しなくなった場合にのみ、緩和ケアを受けた。

両グループとも、緩和ケアの受診内容は、症状の評価と管理、患者およびその家族への心理社会的支援とカウンセリング、乳がんおよびその治療に関する教育、治療チームの連携、介護者への支援などであった。

全体的な生活の質は欧州がん研究治療機構(EORTC)のQLQ-C30質問票で測定した。研究者らは、この質問票に含まれる「総合健康状態(Global Health Status)」の指標に注目した。身体的および心理社会的症状を含む全体的な症状負担については、エドモントン症状評価システム(ESAS)という別の質問票を用いて評価した。研究者らは、ESAS内の「総症状苦痛スコア(Total Symptom Distress Score)」に注目した。患者は研究開始時と3カ月後に両方の評価を完了した。

主な知見

登録された110人の患者のうち94人(85.5%)が3カ月間の評価を完了し、解析対象となった:

●早期緩和ケア導入群の「総合健康状態スコア」は3カ月間で23.2ポイント改善した一方、オンデマンド緩和ケア群では14.7ポイントの改善にとどまった。
・この23ポイントの改善は臨床的に有意と考えられ、早期緩和ケアの導入が参加者の生活に顕著な違いをもたらしたことが示された。

●早期緩和ケア導入群の約70%が、全体的な生活の質において有意な改善を経験したのに対し、オンデマンド緩和ケア群では54%であった。

●早期緩和ケア導入群の参加者の約39%では、総合健康状態スコアが「障害」の範囲から「正常/機能的」の範囲になり、信頼性が高く臨床的に有意な改善を達成した。オンデマンド緩和ケア群では、この割合は6%であった。

●ESASの「総症状苦痛スコア」で測定された全体的な症状の負担は、早期緩和ケア導入群(-28.3ポイント)の方がオンデマンド緩和ケア群(-21.1ポイント)よりも急激に低下した。

●早期の緩和ケア導入は社会的機能の指標に対して最も大きな効果を示した。早期緩和ケア導入群は平均25.5ポイントの改善を報告した一方、オンデマンド緩和ケア群は平均3.9ポイントの低下を報告した。また、早期緩和ケア導入はオンデマンド緩和ケアよりも、身体機能や疲労の指標においてより大きな改善効果を示した。

●積極的な治療を受けている患者や診断から間もない患者では、早期の緩和ケア導入による効果が最も大きいことが示唆された。

次のステップ

研究チームは、6カ月目と12カ月目の時点で再び転帰を評価して、3カ月目に認められた生活の質の改善が長期的に持続するかどうかを検証する予定である。また、診断時の緩和ケア導入が患者の生存期間に何らかの影響を与えるかどうかについても明らかにする予定である。さらに、費用対効果に関する正式な分析も予定されている。
また、研究チームはサブグループ解析の結果から示唆された知見、すなわち、積極的な治療を受けている患者、罹病期間の短い患者、読み書きのできない患者、都市部に居住する患者では、早期緩和ケア導入による効果が最も大きいことを確認するための追加研究も実施する予定である。
この研究者主導の学術研究では、外部の産業界からの資金提供は一切受けていない。

  • 記事担当 佐藤美奈子
  • 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
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  • 原文掲載日 2026/06/23

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