【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効

「ダブルポジティブ」転移乳がん患者において、標準療法へのCDK 4/6阻害薬追加により、疾患が進行しない期間(無増悪期間)が有意に延長したことが、サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された新たなデータから明らかになった。ダナファーバーがん研究所の腫瘍内科医であり、Alliance Foundation Trialsの治験責任医師であるOtto Metzger医師が発表した第3相PATINA試験の結果では、ホルモン受容体陽性(HR+)、ヒト上皮成長因子受容体2陽性(HER2+)の転移乳がん患者において、現在の標準治療である一次維持療法にパルボシクリブを追加することで、無増悪生存期間が15カ月以上延長することが示された。

すべての乳がんの約10%がHR陽性、HER2陽性であり、ダブルポジティブ乳がんあるいはトリプルポジティブ乳がんと呼ばれることもある。治療の進歩にもかかわらず、抗HER2療法やホルモン療法に対する耐性の発生が課題であり、HR+、HER2+転移乳がんに対する新規治療アプローチが必要とされている。

PATINA試験では、抗HER2療法による治療歴のある転移性病変を有する参加者を、抗HER2療法とホルモン療法に加えてパルボシクリブを投与する群と、抗HER2療法とホルモン療法のみを投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、治験分担医師によって評価された無増悪生存期間であった。無増悪生存期間(PFS)中央値は、パルボシクリブ+抗HER2療法(トラスツズマブまたはトラスツズマブ+ペルツズマブ)+ホルモン療法併用群で44.3カ月で、抗HER2療法+ホルモン療法単独群で29.1カ月であり、PFS中央値は15カ月以上延長した。副次評価項目である全生存期間は、解析時点ではまだ評価可能な段階に達していない。

「PATINAは、HR陽性、HER2陽性の転移乳がんにおけるCDK4/6阻害の有用性を示した初めての大規模第3相試験です。これらの結果は、この維持療法がこの患者集団の病勢進行を遅らせ、臨床転帰を改善する可能性を支持するものです」と、Metzger医師は言う。

PATINA試験におけるパルボシクリブの安全性および忍容性は、HR陽性、ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)転移乳がんにおける既知の安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性シグナルは確認されなかった。最も多く観察された有害事象は、好中球減少症や白血球減少症などの血液学的毒性であった。非血液学的有害事象としては、疲労、口内炎、下痢などがあり、これらの重症度は概して軽度から中等度であった。

※PATINA試験の情報開示については、原文を参照のこと。

  • 監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/12/12

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