【AACR26】進行肺がんに次世代KRAS G12C阻害薬エリスラシブが有望な奏効率を示す
これまでKRAS G12C阻害薬による治療を受けていない患者、およびKRAS G12C阻害薬による治療中に病状が進行した患者の両方で効果が認められた
開発中の次世代KRAS G12C阻害薬elisrasib[エリスラシブ](D3S-001)による治療は、KRAS G12C変異を有し、既治療後に病勢進行を認めた局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において臨床効果をもたらしたことが、2026年4月17日~22日に開催された2026年米国がん学会(AACR)年次総会で発表された。
G12C変異は、非小細胞肺がんにおいて最も一般的なKRAS変異である。この変異を標的とする第1世代阻害薬であるソトラシブ(販売名:ルマケラス)とadagrasub[アダグラシブ](販売名:Krazati[クラザティ])は、この患者集団の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。しかし、これらの薬剤の恩恵を受けるのは患者の約30%に過ぎず、その半数は6カ月以内に病状が進行し、臨床現場では安全性も依然として課題となっていると、本研究を発表した韓国・延世大学医学部延世がんセンター腫瘍内科教授のByoung Chul Cho医学博士は説明した。
「現在、研究はより安全で効果的、かつ持続性の高い結果を目指す次世代阻害薬に焦点が当てられています」とCho氏は述べた。「これらの新しい治療法は、脳転移や従来の薬剤に対する耐性といった課題に対処し、KRAS G12C変異を有する肺がん患者さんの治療成績を改善し、治療のあり方を再定義する可能性があるのです」。
第1世代のKRAS阻害薬と同様に、elisrasibは変異型KRAS G12Cに選択的に結合し、それを不活性状態に固定することで、その発がん機能を阻害する。しかし、elisrasibはより迅速かつ強力に標的へ結合するよう設計されており、その結果、持続的な阻害効果が得られるとCho氏は説明した。
KRAS G12C変異を有する固形がん患者を対象とした現在進行中の第1/2相臨床試験において、elisrasibの単剤投与および他剤との併用における安全性と有効性が検証されている。非小細胞肺がん患者のサブグループから得られた初期データでは、有望な結果が示されている。
今回の新たな解析では、以前に免疫療法や化学療法を受けた局所進行または転移性非小細胞肺がん患者165人という、より大規模な患者群が対象となった。そのうちの何人かは、第1世代のKRAS G12C阻害薬による治療も受けていたが、病勢進行を認めた。elisrasibは、50~900 mgの6つの用量レベルで、21日間サイクルにて1日1回経口投与され、600 mgが推奨用量として選定された。
KRAS G12C阻害薬による治療歴のない患者(未治療患者)の追跡期間の中央値は11.3カ月、G12C阻害薬に抵抗性を示した患者では10.6カ月であった。グレード3以上の治療関連有害事象は、患者の11.5%に認められた。「elisrasibは良好な安全性および忍容性プロファイルを示しました」とCho氏は述べた。
有効性解析には、KRAS G12C阻害薬による治療歴のない患者84人と、KRAS G12C阻害薬に抵抗性を示す患者31人が対象となった。治療歴のない患者群において、推奨用量である600 mgで治療を受けた患者では、奏効率は58.8%(完全奏効1例を含む)、病勢制御率は98.5%であった。無増悪生存期間(PFS)の中央値は12.2カ月であった。奏効期間(DoR)中央値は16.5カ月、12カ月時点での全生存率(OS)は72%であった。「本研究において、elisrasibは第1世代のKRAS G12C阻害薬と比較して有意に高い奏効率と持続的な腫瘍効果を示し、その分子設計が患者の臨床転帰の改善につながっている可能性が示唆されました」とCho氏は述べた。同氏はさらに、elisrasibがKRAS G12C阻害薬未治療患者に対する二次治療の適応において、米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック指定およびブレークスルーセラピー指定を受けていると付け加えた。
以前のKRAS G12C阻害薬療法で病勢進行が認められた患者において(全員がelisrasib 600mgで治療)、全奏効率は32.3%、病勢制御率は83.9%であった。さらに、12カ月時点での無増悪生存期間中央値は8.1カ月、奏効期間中央値は15.6カ月、および全生存率は71%であった。治療が困難な集団である脳転移を有する患者においても腫瘍縮小効果が認められたと、Choは述べている。
治療開始前に、患者の70%でKRAS G12C陽性の循環腫瘍DNA(ctDNA)が検出された。KRAS G12C変異ctDNAの割合が90%以上減少したことを分子学的奏効と定義した場合、elisrasib投与により、G12C阻害薬未治療患者の93%、および以前のG12C阻害薬治療後に病勢が進行した患者の80%で分子学的奏効が認められた。
「第1世代阻害薬で病勢が進行した患者の中で、KRAS遺伝子増幅が5例認められました。これはKRAS G12C阻害薬の効果を回避する重要なメカニズムです」とChoは述べた。「そのKRAS増幅の5例のうち、4例で腫瘍縮小が認められ、3例で臨床的奏効が得られ、疾患制御率は100%でした。これは、このバイオマーカーで定義された患者群においてelisrasibが有効であることを示しています」。
Cho氏はさらに次のように述べた。「elisrasibは、第1世代のKRAS G12C阻害薬が効果を示さなかった患者においても、より深く、長期間持続する腫瘍縮小効果をもたらす能力を示しています。全体として、これらの結果は、elisrasibがKRAS G12C変異を有する肺がん患者の治療を大きく改善する可能性があることを示唆しています」。
本研究の限界について、Cho氏は、これは初期段階の単群試験であるため、その主目的は安全性と初期の有効性を評価し、適切な投与量を確立することであったと述べた。「安全性と初期の有効性に関する結果は有望ではあるものの、有効性と忍容性を確認するためには、より大規模なランダム化試験が必要です。さらに、治療効果が実際にどの程度持続するかを評価するためには、より長期の追跡調査が不可欠です」。
本研究はD3 Bio社の資金提供を受けて実施された。
Cho氏は、Champions Oncology、Crown Bioscience、Imagen、PearlRiver Bio GmbHからロイヤリティを受け取り、CJ Bioscience、Cyrus Therapeutics、ImmuneOncia、Johnson & Johnson、J INTS bio、MSD、Yuhan、Dong-A ST、LigaChem Biosciencesから助成金/研究支援を受けています。また、Amgen、ArriVent、AstraZeneca、Bristol Myers Squibb、Boehringer Ingelheim、CJ Bioscience、Cyrus Therapeutics、Gilead、GSK、Regeneron、Johnson & Johnson、MSD、Yuhanのコンサルタントを務めています。さらに、KANAPH Therapeutics Inc.、Cyrus Therapeutics、J INTS Bioの諮問委員会にも参加しています。
*本研究のその他の開示情報については原文を参照のこと。
- 監修 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
- 原文を見る
- 原文掲載日 2026/04/19
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肺がんに関連する記事
KRAS阻害薬ゾルドンラシブ、G12D変異肺がんで有効性と持続的奏効を示す
2026年5月7日
BRAFV600E変異非小細胞肺がんでは免疫療法薬がより優れた一次治療の可能性
2026年2月13日
免疫療法薬2剤併用が進行非小細胞肺がんの生存延長に寄与
2026年2月13日
Elironrasibが非小細胞肺がんのKRAS G12C阻害薬耐性を克服する可能性
2025年12月15日
転移を有する...


