【ASCO2025】運動は薬:運動プログラムは大腸がんの再発/死亡リスクを下げる

【ASCO2025】運動は薬:運動プログラムは大腸がんの再発/死亡リスクを下げる

ASCOの見解(引用)

「本試験は、ステージ3および高リスクのステージ2結腸がん患者を対象としたランダム化第3相試験であり、治療後の運動は達成可能であり、無病生存期間の延長に有効であることを初めて証明するものです。介入としての運動は当然必要なことで、広く実施されるべきです」と、Pamela Kunz医師(イェール大学医学部、ASCO消化器がん専門医)は述べた。

試験要旨

焦点ステージ3および高リスクステージ2結腸がん
対象者889人の患者(カナダおよびオーストラリア、年齢中央値61歳)
主な結果ステージ3および高リスクのステージ2結腸がん患者において、手術および術後化学療法後の構造化運動プログラム(訳注:構造化[structured]された運動プログラムとは、内容や頻度、強度が明確に設定され、専門家による指導・管理のもとで実施される運動を指す)は、再発または新たながんの発生リスクを減少させ、生存期間を延長させた。
意義・ 大腸がんは、世界でがんによる死亡原因の第2位を占めており、その大部分は結腸で発生する。米国では2025年に約106,000人が結腸がんと診断される見込みである。
 
・ 結腸がんは、早期に診断されれば治療も容易である。ステージ3および高リスクのステージ2結腸がん患者は通常、手術で腫瘍を摘出した後、化学療法で残存するがん細胞を破壊する。こうした治療にもかかわらず、結腸がんは約30%の患者で再発する。再発後の結腸がんは治療が難しく、患者の多くはがんにより死亡する。
 
・ 多くの公式ガイドラインは、バランスのとれた食事と定期的な運動を含む健康的なライフスタイルを推奨している。しかし、このようなガイドラインがあっても、患者は運動を日常生活に取り入れるための教育やサポートをほとんど受けていない。
 
・ 本試験は、構造化運動プログラムが結腸がん患者におけるがんの再発または新たながんのリスクを減少させるかどうかを具体的に評価した初めてのランダム化臨床試験である。

新たな研究結果は、手術および術後化学療法後の構造化運動プログラムが、ステージ3および高リスクステージ2結腸がん患者の再発または新たながんのリスクを減少させ、生存期間を延長させたことを示している。この研究結果は、5月30日から6月3日までシカゴで開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される

試験について

「手術と化学療法を終えた高リスクステージ2およびステージ3結腸がん患者の約30%では、いずれがんが再発します。腫瘍内科医として、患者さんから最もよく聞かれる質問の一つは、『予後をよくするために他に何ができるでしょうか』ということです。パーソナルトレーナー付きの運動プログラムは、再発または新たながんのリスクを減らし、気分を良くし、長生きするのに役立ちます」と、主著者であるChristopher Booth医師(FRCPC)(クイーンズ大学:カナダ、キングストン)は述べている。

2009年から2023年の間に、国際的な臨床試験CHALLENGEには6カ国から889人が登録され、そのほとんどはカナダとオーストラリアからの参加者であった。参加者の年齢中央値は61歳で、51%が女性であった。患者のほとんど(90%)はステージ3の結腸がんで、残りの10%は高リスクのステージ2結腸がんであった。全ての患者が治癒を意図した手術と術後化学療法を受けていた。
 
患者は、構造化運動プログラムに参加する群(445人)と、身体活動と健康的な栄養摂取を促進する健康教育教材を受け取る群(444人)に無作為に割り付けられた。すべての参加者は標準的ながん検診と治療後の経過観察を受けた。構造化運動プログラムに参加した患者は、身体活動のコンサルタントに月2回指導を受け、監督指導のもと運動を行った。コンサルタントは各患者に 「運動処方箋」を与えた。6カ月後、患者は月に1回、身体活動コンサルタントとの面談を受け、必要であれば追加のサポートを受けることができた。

主な知見

 ・ 両群とも身体機能が改善し、それを維持したが、構造化運動プログラムを受けた患者の方がその効果は有意に高く、レクリエーションとしての身体活動、予測最大酸素摂取量、6分間歩行距離において、3年間を通して改善が維持された。
 
 ・ 追跡期間中央値7.9年後、構造化運動プログラム群では93人の患者ががんを再発したのに対し、健康教育教材群では131人であった。5年後の無病生存率は、構造化運動プログラム群で80%、健康教育教材群で74%であった。構造化運動プログラムに参加した患者は、教育教材のみを受けた患者に比べて、再発または新たながんの発生リスクが28%低かった。
 
 ・ 構造化運動プログラム群では41人、健康教育教材群では66人が死亡した。8年後の全生存率は、構造化運動プログラム群で90%、健康教育教材群で83%であった。構造化運動プログラムに参加した患者では死亡リスクが37%低かった。

構造化運動プログラムの患者は、健康教育教材群と比較して、筋挫傷や骨折などの筋骨格系の有害事象をより多く報告した(19%対12%)。これらの有害事象のうち、構造化運動プログラム群では10%がプログラム参加に関連したものであった。

次のステップ

研究者らは、CHALLENGEに参加した患者の血液サンプルを調査することにより、運動ががんの再発をどのように減らすのかを探る。
 
本研究は、Canadian Cancer Society、National Health and Medical Research Council、Cancer Research UK、University of Sydney Cancer Research Fundから資金提供を受けた。

  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/06/01

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