【ASCO2025】遺伝子検査により術後化学療法が有効な非小細胞肺がん患者を特定できる可能性

ASCOの見解(引用)

「今回の初期の中間結果は、14遺伝子の分子アッセイ(遺伝子検査)で高リスクと識別されたステージIA-IIA非小細胞肺がん患者における術後補助化学療法の役割を評価する有望な前向きランダム化試験の結果で、バイオマーカーに基づく、より正確な治療選択への道を開くものです」と、Charu Aggarwal医師(MPH、FASCO、ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンター・Leslye M Heisler肺がん特任教授、ASCO肺がん専門家)は述べる。

試験要旨

焦点手術治療された非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC) 
対象者421人の患者が登録され、194人が評価された。
主な結果ステージIA-IIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者に実施した14遺伝子の分子アッセイにより、手術後の化学療法が有効である患者が特定され、がんの再発または死亡までの期間が延長した。

意義
・ 肺がんは、世界中で男女ともに最も多く診断されるがんである。米国では毎年約226,650人が新たに肺がんと診断され、そのうち約70,000人はステージIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)と診断される。NSCLC全体の約70%は非扁平上皮NSCLCで、これには腺がんと大細胞がんが含まれる。

・ CT検査などのツールにより、肺がんの早期発見が可能になっている。肺がんが早期に発見されると、ほとんどの場合は手術を行う。手術後、一部の患者は再発予防のため、術後補助療法を受ける。現在、術後補助療法の効果が期待できる患者の識別には、ステージと腫瘍の大きさが用いられている。

・ がんが早期に発見された患者であっても、手術後の5年無病生存率は65%に過ぎない。つまり、手術を受けたステージIAのNSCLC患者の35%で、がんが5年以内に再発している。

・ 分子アッセイ(バイオマーカー検査とも呼ばれる)は、遺伝子、タンパク質、その他のバイオマーカーの変化や修飾を調べるもので、治療の指針となる。今回の試験は、商用14遺伝子アッセイを用いて、術後化学療法が適応されない可能性のある患者を特定し、術後化学療法による効果を評価することを目的として設計された。

国際臨床試験の結果から、14遺伝子分子アッセイが、早期の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち術後補助化学療法の効果が期待できる人を特定するのに有用であることが示された。この研究は、5月30日から6月3日までシカゴで開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

試験について

「これは、14遺伝子分子アッセイによって、通常は術後補助化学療法の対象とはならないステージIA-IIAの非扁平上皮非小細胞肺がん高リスク患者の中で、術後補助化学療法で効果が期待できる患者を特定できることを実証した初の大規模前向きランダム化試験です」と、本研究の筆頭著者であるDavid Spigel医師(FASCO、テネシー州ナッシュビル サラ・キャノン研究所)は述べる。

本研究には、腫瘍切除手術を受けたステージIA-IIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者421人が登録された。これらの腫瘍を、RiskReveal検定と呼ばれる14遺伝子アッセイで検査し、低リスク、中リスク、高リスクに分類した。今回の中間解析時点で、評価可能な中リスク/高リスクの患者は194人であった。中リスクまたは高リスクに分類された患者は、プラチナ製剤ベースの術後補助化学療法4サイクルを受ける群(87人)または経過観察を受ける群(107人)に無作為に割り付けられた。研究者らは各群における再発までの期間を比較した。各群の約55%がステージIA非小細胞肺がんであり、両群の患者背景は類似していた。

主な知見

24カ月後、術後化学療法を受けた患者は、経過観察群と比較してがん再発リスクが78%低下した。

術後化学療法群では、患者の96%でがんが再発しなかった。経過観察群では、患者の79%でがんが再発しなかった。試験の評価項目である無病生存期間中央値は、どちらの群でも到達していない。つまり、患者の半数以上はがんが再発していなかったということである。

中間解析の時点で、データ安全性モニタリング委員会は、このアッセイが術後補助化学療法の効果が期待できる患者を高い精度で判定したため、臨床試験への新規患者の登録を中止するよう勧告した。すでに登録されている患者については、追跡調査が継続される。

次のステップ

研究者らは、この研究にすでに登録されている患者を引き続き追跡し、標的療法と免疫療法の進歩が早期ステージ非小細胞肺がんにどのように適用できるかを研究する予定である。

本研究はRazor Genomics社の資金提供を受けた。

  • 監修 稲尾 崇(神鋼記念病院/呼吸器内科)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/05/31

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