【ASCO26】セルペルカチニブ、早期RET陽性肺がんの補助療法で再発、進行を抑制

【ASCO26】セルペルカチニブ、早期RET陽性肺がんの補助療法で再発、進行を抑制

ASCOの見解(引用)

「LIBRETTO-432試験は、RET融合遺伝子陽性で早期の非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、RETキナーゼ阻害薬を補助療法として評価した初めてかつ唯一のランダム化第3相試験です。今回の説得力のある結果により、このまれな肺がんのタイプに対する新たな標準治療が確立され、臨床現場も速やかに変わっていくでしょう。また、本試験は、非小細胞肺がんのすべての病期において包括的なバイオマーカー検査を実施する必要があることを、あらためて裏付けました」
ー David R. Spigel医師(FASCO、サラ・キャノン研究所院長兼最高医療責任者、ASCO肺がん専門家)

試験概要

焦点1B期~3A期のRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)
対象者22カ国から参加した151人
主な結果セルペルカチニブによる補助療法は、1B期~3A期のRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者において、がんの再発、進行、または死亡のリスクを低減する可能性がある
意義肺がんは米国で2番目に多いがんであり、がんによる死亡原因のトップを占めている。肺がんの約85%は非小細胞肺がん(NSCLC)であり、そのうち44%はがんが体のほかの部位へ広がる前の段階(早期と呼ばれる)で診断されている。

●NSCLC患者の約1~2%にRET融合遺伝子変異がみられる。現在のところ、再発リスクが高い早期RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に対して承認された補助標的療法は存在しない。

●また、早期NSCLC患者では、補助療法を受けた場合であっても、最大で3分の2の患者に再発が認められる。

標的治療薬セルペルカチニブ(selpercatinib)を用いた補助療法により、早期のRET融合遺伝子陽性NSCLC患者において、がんの再発、進行、死亡のリスクが低下する可能性が示された。この研究成果は、2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)(5月29日〜6月2日、シカゴ)で発表される。

試験について

「早期NSCLC患者さんでは、手術または放射線治療の後に化学療法または免疫療法による補助療法を受けたとしても、最大で3分の2が再発し、最終的には転移によって命を落とす可能性があります。RET融合遺伝子陽性の患者さんに対しては、これまで術後の標的治療薬が承認されておらず、治療の確立が切望されてきた重要な領域です」と、筆頭著者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校のJonathan Goldman医師は述べる。

セルペルカチニブは、RET融合によって生じる異常なRETタンパク質を標的としてその働きを阻害する標的治療薬であり、すでに進行期のRET融合陽性NSCLC患者の治療薬として承認されている。本試験では、より早期の患者においても転帰を改善することができるか検討された。

第3相臨床試験であるLIBRETTO-432試験では、すでに主治療を受けた1B期~3A期のRET融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象として、主治療後の補助療法として最長3年間にわたってセルペルカチニブを投与する群(75人)またはプラセボを投与する群(76人)に無作為に割り付けられた。

主な知見

主要解析の対象は2期~3A期の患者109人であった。これらの患者は、早期がんの中でも病状がより進行しており、再発リスクも高い。追跡期間中央値は、セルペルカチニブ群で24カ月、プラセボ群で27カ月であった。この解析時点では、あらかじめ設定されていた3年間の追跡期間には到達しておらず、試験は現在も継続中である。

●本試験に登録されたた患者のうち2期~3A期患者を対象とした解析では、セルペルカチニブ群で無イベント生存期間(EFS)が有意に改善した。
 ○セルペルカチニブ群ではEFS中央値に到達しておらず、これは患者の半数以上が生存しており、再発や病勢進行を経験していないことを意味する。
 ○一方、プラセボ群のEFS中央値は31.8カ月であった。
●2年時点のEFS率は、セルペルカチニブ群で91.5%、プラセボ群で61.1%であった。
●全体として、セルペルカチニブはプラセボと比較して再発または死亡のリスクを約83%低減した。
●試験に登録された全患者を対象とした解析では、いずれの治療群においてもEFS中央値には到達していなかった。

セルペルカチニブ群で最も多く認められた重篤な副作用は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値の上昇であり、いずれも肝障害を示唆する指標である。その他の主な副作用として、口腔乾燥、下痢、高血圧が認められたが、その大半は軽度であり、用量調整によって管理可能であった。試験全体では3人が肺がんにより死亡したが、いずれもプラセボ群の患者であった。

次のステップ

研究者らは今後、より長期間の追跡調査を行い、全生存期間(OS)を含む副次評価項目についてより成熟した評価を実施する予定である。また、1B期患者などサブグループにおける有効性などの知見を積み重ねるとともに、試験データ全体の信頼性を一層高めることを目指している。
本試験は、イーライリリー・アンド・カンパニーの資金提供を受けて実施された。

  • 記事担当 平沢沙枝
  • 監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学・北九州総合病院)
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  • 原文掲載日 2026/05/31

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