【ASCO26】イボネスシマブが一部の肺がん患者の全生存期間を延長
PD-L1タンパクの発現レベルに関わらず効果があることが新たなデータで示された。
ASCOの見解(引用)
「これは、進行扁平上皮肺がん患者において、抗PD-1/VEGF二重特異性療法+化学療法の併用が、確立された標準治療であるPD-1阻害薬+化学療法の併用よりも優れていることを初めて示した大規模な前向き試験です。この試験は中国の被験者を対象としており、世界規模の集団における有効性データはまだ得られていませんが、治療選択肢が限られているこれらの治療困難ながん患者にとって、重要な新たな道筋を示すものです」と、Sarah Cannon Research Instituteの所長兼最高医療責任者であり、ASCOの肺がん専門家でもあるDavid R. Spigel医師(FASCO)は述べている。
試験概要
| 焦点 | 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の一次治療 |
| 対象者 | 中国における532人 |
| 主な結果 | 進行扁平上皮非小細胞肺がん患者において、ivonescimab[イボネスシマブ]+化学療法を併用したところ、既存の治療法よりも生存期間が改善した。この効果は、PD-L1タンパクの発現が陽性か陰性かに関わらず一貫していた。 |
| 意義 | ●肺がんは世界中でがん関連死の主要な原因となっている。扁平上皮非小細胞肺がんと呼ばれる種類は、肺がん全体の約25%を占める。米国では推定で年間約5万5000件、世界では約210万件の症例が報告されている。 ●扁平上皮非小細胞肺がんは、他の種類の非小細胞肺がんよりも治療が困難である。他の種類の非小細胞肺がんに有効な治療法の中には、扁平上皮がん患者にとって危険なものもある。例えば、VEGF阻害薬は、扁平上皮非小細胞肺がん患者において、生命を脅かす出血を引き起こす可能性がある。 ●扁平上皮非小細胞肺がんの一般的な治療法は、化学療法とチスレリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬の併用療法である。しかし、肺がん細胞の表面にPD-L1タンパクがあまり発現していない場合、免疫チェックポイント阻害薬の効果は十分に発揮されない。 ●イボネスシマブという新しい治療薬は、二重特異性抗体である。つまり、イボネスシマブの両端にそれぞれ抗体が結合している。一方の抗体はチェックポイント阻害薬であり、PD-1に結合し、免疫細胞ががん細胞を攻撃するのを助ける。もう一方の抗体はVEGF阻害薬であり、血管新生を阻害する。これらの抗体は協調して作用するため、がん細胞への効果を調節し、正常細胞への影響を最小限に抑えることができる。 ●本試験のこれまでの結果によると、イボネスシマブは、がん細胞の表面にあるPD-L1タンパクが非常に少ない場合でも、扁平上皮非小細胞肺がんの増殖を遅らせた。また、イボネスシマブは、他のVEGF阻害薬でみられる出血性合併症を増加させることもなかった。 ●研究者らの目的は、イボネスシマブを投与した場合、投与しなかった場合と比較して最終的に生存期間が延長するかどうかを調べることであった。 |
バージニア州アレクサンドリア発― HARMONi-6試験の最新結果によると、進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、イボネスシマブと化学療法を併用したところ、チスレリズマブと化学療法を併用する現在の治療法と比較して、無増悪生存期間の改善に加え、全生存期間の延長もみられた。イボネスシマブの使用はPD-L1発現レベルに制限されず、PD-L1タンパク質がほとんど、あるいは全く発現していないがん患者の延命にも効果がある。この研究結果は、2026年5月29日から6月2日までシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される予定である。
試験について
「扁平上皮非小細胞肺がんは、非扁平上皮非小細胞肺がんよりも臨床転帰が不良です。進行扁平上皮非小細胞肺がんにおいて、生存期間中央値が2年を超えることを示した試験は、本試験を含めてごくわずかです」と、本試験の筆頭著者であるJiao Tong University School of Medicine、Shanghai Chest HospitalのShun Lu医師(医学博士)は述べている。
扁平上皮非小細胞肺がんは、一般的に他の種類の非小細胞肺がんに比べて治療選択肢が少ない。がん細胞の2つの主要なメカニズムを同時に標的とする二重特異性抗体に複数の治療法を組み合わせることで、治療効果をがん細胞に集中させることができ、これらの問題の一部を解決できる可能性がある。
第3相試験であるHARMONi-6試験は、抗PD-1/VEGF二重特異性抗体であるイボネスシマブと化学療法を併用した場合と、チェックポイント阻害薬であるチスレリズマブと化学療法を併用した場合とで、扁平上皮非小細胞肺がんの増殖抑制効果を比較検証するために設計された。また、治療に伴う健康上の問題や、治療後の生存期間についても検討した。
この試験には、進行期(ステージIIIB、IIIC、またはIV)の扁平上皮非小細胞肺がん患者532人が参加した。一次治療として、266人がイボネスシマブと、パクリタキセルおよびカルボプラチンの化学療法を受けた。対照群の266人はチスレリズマブと、パクリタキセルおよびカルボプラチンの化学療法を受けた。
試験の初期結果では、イボネスシマブはチスレリズマブよりも扁平上皮非小細胞肺がんの増殖をより長く抑制することが示されており、無増悪生存期間(PFS)はイボネスシマブの約11カ月に対し、チスレリズマブは約9カ月であった。
主な知見
●PFSの改善は全生存期間(OS)の結果の指標であった。追跡期間の中央値21.4カ月後、イボネスシマブ+化学療法による治療後のOSの中央値は約28カ月であったのに対し、チスレリズマブ+化学療法による治療後のOSの中央値は24カ月であった。
●試験期間中、イボネスシマブ投与によって死亡リスクが34%減少した。
●予想通り、PD-L1値が低い場合、チスレリズマブの効果は低下した。チスレリズマブ投与群において、PD-L1値が1%以上の患者の全生存期間中央値は27カ月であった。一方、PD-L1値が1%未満の患者では、約19カ月であった。
●一方、イボネスシマブはPD-L1の発現値に関わらず有効であった。PD-L1の発現値が高い群と低い群の両方において、イボネスシマブ投与を受けた参加者の多くが生存していたため、全生存期間の中央値を算出することはできなかった。
イボネスシマブ投与群とチスレリズマブ投与群の参加者において、健康上の重篤な作用は、以下のように同程度に認められた。
●血液中の好中球数の減少(32%対26%)
●白血球数の減少(11%対9%)
●赤血球数の減少(貧血)(7%対5%)
出血は、イボネスシマブ群の約3%、チスレリズマブ群の約1%で発現した。
次のステップ
HARMONi-3と呼ばれる別の研究では、米国、ヨーロッパ、アジアを含む世界中の非小細胞肺がん患者を対象にイボネスシマブの効果を調べている。
本試験はAkeso Biopharma Inc.社の資金提供を受けて実施された。
- 記事担当 仲里芳子
- 監修 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸器内科学分野)
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- 原文掲載日 2026/05/31
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