【ASCO2025】進展期小細胞肺がんにルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用で生存改善

ASCOの見解(引用)

「免疫療法は進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)患者の生存転帰を改善し、これまで治療が困難であった疾患において意義深い進歩を示しました。しかし、こうした進歩にもかかわらず、長期転帰は依然として最適とは言えず、より優れた戦略の必要性が浮き彫りになっています。一次化学免疫療法後の維持療法として、新規DNA損傷剤であるlurbinectedin[ルルビネクテジン]を導入してアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)と併用することは、重要な次のステップとなります。このアプローチは、病勢コントロール期間を延長する手段となり、患者に対してより持続的な効果をもたらす転機となる可能性があります」と、Charu Aggarwal医師(公衆衛生学修士、FASCO)は述べる。同医師は、ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターのLeslye M Heisler肺がん特任教授であり、ASCO肺がん専門医である。

試験要旨

焦点進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)
対象者患者660人。ランダムに483人を治療計画に割り付け。
主な結果免疫療法薬アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)と化学療法の併用療法を受けた後に、lurbinectedin[ルルビネクテジン]+アテゾリズマブ併用による維持療法を受けたES-SCLC患者は、アテゾリズマブ単剤による維持療法を受けた患者と比較して、数カ月長く生存。
意義・ 肺がん診断のうち、13~15%は小細胞肺がん(SCLC)であり、肺がんで最も悪性度が高いものである。患者の約70%は、SCLCが原発巣から既に転移した状態で診断される。肺全体、肺の反対側の葉、または体の他の部位に転移したSCLCは、進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)と呼ばれる。
・ ES-SCLCは2019年以降、治療法が進歩し、治療転帰は向上したが、依然として治療が難しく、5年相対生存率は3%、生存期間中央値は1年である。
・ 現在、米国ではES-SCLCに対して2つの一次治療法が承認されている。どちらも免疫療法薬と化学療法薬を併用し、その後に免疫療法薬による維持療法を行う。
・ ルルビネクテジンは、がん細胞のDNAに損傷を与えることで作用するアルキル化剤である。現在、プラチナ製剤化学療法後に進行した小細胞肺がんの治療薬として承認されている。

国際共同第3相臨床試験の結果から、進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)患者の一部において、ルルビネクテジンとアテゾリズマブの併用による維持療法が、アテゾリズマブ単独による維持療法と比較して生存期間を延長させることが明らかになった。この研究は、5月30日から6月3日までシカゴで開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

試験について

 「一次治療への免疫療法の導入により転帰は改善しましたが、進行小細胞肺がんの治療は依然として困難です。第3相IMforte試験では、一次治療後の維持療法としてルルビネクテジンとアテゾリズマブを併用する新規治療法が、患者の生存期間を延長し、病勢進行または死亡のリスクを低減することが示されました。この結果は重要な節目となるものであり、この悪性度の高い疾患の治療の前進における待望の選択肢となる可能性があります」と、本研究の筆頭著者であるLuis G. Paz Ares医学博士(12 de Octubre大学病院、スペイン マドリード)は述べる。

IMforte試験には、脳転移または脊髄転移がなく全身状態が良好であった、治療歴のないES-SCLC患者660人が参加した。本試験に登録された患者は全員、アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドによる標準導入療法を4サイクル受けた。

患者は導入療法後、4サイクル後に腫瘍の奏効または病勢安定が持続していれば、本試験への参加を継続することができた。維持療法を受けることになった患者は483人であった。患者は、ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用療法(242人)またはアテゾリズマブ単独療法(241人)に無作為に割り付けられた。参加者は13カ国の91試験実施施設から登録された。約82%が白人、13%がアジア人、5%がその他の人種であった。約7%がヒスパニック系またはラテン系であった。参加者の年齢中央値は66歳で、約63%が男性であった。

主な知見

  • 中央値15カ月の追跡調査後、無増悪生存期間(PFS)中央値は、ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群では5.4カ月、アテゾリズマブ単独群では2.1カ月であった。
  • ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群の患者は、アテゾリズマブ単独群の患者と比較してがん進行リスクが46%低かった。
  • 全生存期間中央値は、ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群では13.2カ月、アテゾリズマブ単独群では10.6カ月であった。
  • ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群の患者は、アテゾリズマブ単独群の患者と比較して死亡リスクが27%低かった。
  • 投与期間中央値は、ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群ではルルビネクテジン4.1カ月、アテゾリズマブ4.2カ月であった。アテゾリズマブ単独群では2.1カ月であった。治療期間が長いほど、より高用量の薬剤に耐えられるため、効果が高まる場合が多い。

有害事象に関しては両群間で顕著な差が認められた。治療関連の有害事象が生じた患者の割合は、ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群で83.5%であったのに対して、アテゾリズマブ単独群では40%であった。ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群では、グレード3または4の有害事象が生じた患者は25.6%、グレード5の有害事象が生じた患者は0.8%であった。アテゾリズマブ単独群では、グレード3または4の有害事象が生じた患者は5.8%、グレード5の有害事象が生じた患者は0.4%であった。ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用群では、副作用により治療を中止した患者は6.2%であったのに対し、アテゾリズマブ単独群では3.3%であった。

次のステップ

IMforte試験は現在も進行中である。研究者らは登録患者に対する追跡調査を継続する。また、一次治療など他の状況でこの併用療法を使用することも検討している。
IMforte試験はGenentech社の資金提供を受けた。

  • 監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)
  • 記事担当者 山田登志子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2025/05/23

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がんKRAS阻害薬が最適な患者を特定する新バイオマーカーTTF-1の画像

肺がんKRAS阻害薬が最適な患者を特定する新バイオマーカーTTF-1

TTF-1が高発現している肺がん患者において、KRAS阻害薬ソトラシブ(販売名:ルマケラス)による治療後、生存転帰が改善した。このバイオマーカーは、ソトラシブの効果が最も期待できる患者...
米FDAが、ROS1陽性非小細胞肺がんにタレトレクチニブを承認の画像

米FDAが、ROS1陽性非小細胞肺がんにタレトレクチニブを承認

2025年6月11日、米国食品医薬品局(FDA)は、局所進行または転移性のROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人を対象に、キナーゼ阻害薬であるtaletrectinib[タレト...
【ASCO25】ダナファーバー①乳がん、大腸がん標準治療の再定義、KRASG12C肺がん、脳リンパ腫、前立腺がんの画像

【ASCO25】ダナファーバー①乳がん、大腸がん標準治療の再定義、KRASG12C肺がん、脳リンパ腫、前立腺がん

以下の研究結果は、2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。• ダナファーバーの研究は、希少がんや悪性腫瘍に対する有望な治療法もサポートしている。研究...
【ASCO2025】遺伝子検査により術後化学療法が有効な非小細胞肺がん患者を特定できる可能性の画像

【ASCO2025】遺伝子検査により術後化学療法が有効な非小細胞肺がん患者を特定できる可能性

ASCOの見解(引用)「今回の初期の中間結果は、14遺伝子の分子アッセイ(遺伝子検査)で高リスクと識別されたステージIA-IIA非小細胞肺がん患者における術後補助化学療法の役割...