【AACR26】 高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に、BCMA標的CAR-T細胞療法が有効

【AACR26】 高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に、BCMA標的CAR-T細胞療法が有効

すべての患者において微小残存病変は陰性となり、追跡期間中央値15.3カ月の間に活動性多発性骨髄腫への進行を認めた患者はいなかった。
 
Ciltacabtagene autoleucel[シルタカブタジン オートルーセル](販売名:CARVYKTI)の単回投与により、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の患者において、微小残存病変(MRD)陰性率が100%に達した。これは、4月17~22日に開催された2026年米国がん学会(AACR)年次総会で発表された第2相臨床試験CAR-PRISMの結果によるものである。

くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)は、より進行した症状を伴う活動性多発性骨髄腫の前段階となる病態である。SMM患者の一部は、骨髄中の形質細胞の蓄積量が多いことや、特定の形質細胞由来タンパクの値が高いことなど、いくつかの基準に基づき、進行リスクが高いと判定される。

「高リスクSMM患者のほぼ半数は、2年以内に活動性多発性骨髄腫へと進行し、骨病変や、腎不全、貧血、疼痛、虚弱といった生活を著しく損なう症状を発症します」と、Omar Nadeem医師(ダナファーバーがん研究所の腫瘍内科医、ハーバード大学医学部助教)は述べている。
 
つい最近まで、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)患者に利用できる唯一の選択肢は、進行の徴候を確認するための定期的な検査(血液検査、画像検査、骨髄評価など)による積極的な経過観察のみであった。「通常、SMM患者は、すでに臓器障害や活動性多発性骨髄腫の他の症状が現れてからでないと治療を開始しませんでした」とNadeem氏は述べ、一部の患者は臨床試験に参加することで試験的治療を受けられる可能性はあるものの、主要ながんセンター以外で治療を受けている大多数の患者にとっては、そうした臨床試験へのアクセスは限られていたと付け加えた。
 
2025年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、CD38を標的とするモノクローナル抗体であるダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)/ヒアルロニダーゼの配合剤(販売名:Darzalex Faspro)を、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)の治療薬として承認した。これは、SMM患者向けの治療薬として初めて承認されたものである。この治療法は最大3年間にわたり定期的に投与されるもので、臨床試験では活動性多発性骨髄腫への進行を51%減少させたが、Nadeem氏は、この試験では患者の長期的な疾患進行リスクを高める可能性のある微小残存病変(MRD)の有無が評価されていなかったと指摘した。Nadeem氏らは、高リスクSMM患者に対する別の治療法であるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の安全性と有効性を評価するため、第2相CAR-PRISM試験を実施した。この治療薬であるシルタカブタジン オートルーセルは、再発または難治性の多発性骨髄腫に対する単回投与としてFDAの承認を受けており、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)や活動性多発性骨髄腫を構成する異常形質細胞の表面に見られるBCMAタンパクを標的としている。
 
「再発多発性骨髄腫に対する有効性に加え、単回の点滴投与で済むという点から、シルタカブタジン オートルーセルは、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)患者において症状が現れる前に疾患を食い止めるための、実用的かつ効果的な治療法となり得ると考えました」とNadeem氏は述べた。「もう一つの根拠は、この疾患の早期段階ではT細胞の活性がより健全であることです。そのため、免疫系がより保たれているSMMの段階で投与することで、CAR-T細胞療法の有効性はさらに高まる可能性があります」。
 
CAR-PRISM試験には、20/2/20モデルに基づいて定義された高リスクSMM患者20人が登録された。このモデルは、患者の骨髄中の形質細胞の割合と、血中の形質細胞由来タンパク産物の量を評価するものである。このモデルでは、骨髄中の形質細胞が20%を超える、血中Mタンパクが2 g/dLを超える、血中の腫瘍に関与する遊離軽鎖と関与しない遊離軽鎖の比が20を超える、という3項目のうち2項目以上を満たす場合、その患者は高リスクSMMとみなされる。また、骨髄中の形質細胞が10%を超え、さらに他の高リスクバイオマーカーを有する患者も対象に含まれた。骨髄中の形質細胞の割合が40%を超える患者は本試験から除外された。これは、本研究では導入療法やブリッジング療法が行われておらず、これらの患者では毒性が生じる可能性がより高いと考えられたためである。
 
シルタカブタジン オートルーセルによる治療を受けた全患者で軽度のサイトカイン放出症候群(CRS)が認められたが、グレード3以上のCRSを発症した患者はいなかった。最も頻度の高かった有害事象は、グレード3または4の好中球減少症を含む一過性の血液学的毒性であった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群に該当しない(non-ICANS)神経毒性(NINT)は7人の患者に認められた。内訳は、4人の患者で顔面神経麻痺がみられたが完全に回復し、残りの3人は軽度の運動症状が残存したものの改善が認められた。
 
治療開始から2カ月以内に、20人すべての患者で微小残存病変(MRD)陰性が確認され、追跡期間中央値15.3カ月時点でもその状態が維持されていた。18カ月を超えて追跡された6人の患者においても、MRD陰性が持続していた。追跡期間中に病勢進行や死亡は認められなかった。
 
「このパイロット研究では、導入療法やブリッジング療法を一切行わずに、シルタカブタジン オートルーセルを1回投与しただけで、すべての患者においてMRD陰性が確認されました」とNadeem氏は述べている。「追跡期間中央値15.3カ月時点で、病勢進行は1人も認められておらず、これは積極的モニタリングで予想される無増悪生存期間をはるかに上回る結果です」。

「これらの結果は、活動性多発性骨髄腫の発症前に、より早期にCAR-T細胞療法を投与することで、深い奏効が得られるというわれわれの仮説を裏付けるものです」とNadeem氏は付け加えた。「こうした奏効が長期にわたり持続し、最終的には患者が治癒したと言える段階に至ることを期待しています」。
 
「現在、最も興味深い疑問の一つは、CAR-T細胞療法が高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)において、再発例の場合と比べて異なる作用を示すのかどうかという点です」と、本研究の共著者であるDavid Cordas dos Santos医師(ダナファーバーがん研究所の医学講師)は述べた。「こうした違いを研究することで、SMMの症例においてなぜこれほど深く迅速な反応が見られたのかを理解する手がかりになるかもしれません」。「本研究は、免疫療法による早期介入が多発性骨髄腫患者の治癒につながり得るのかという問いを提起しています」と、統括著者であるIrene Ghobrial医師(ダナファーバーがん研究所の医学教授)は述べた。「特に、疾患の後期段階では腫瘍量が多く、ゲノムが複雑で、T細胞が疲弊していることを考えると、この点を解明することは特に重要です」。
 
本研究の限界としては、単群・単施設での試験デザインであること、サンプルサイズが小さいこと、追跡期間が短いこと、そして形質細胞浸潤が40%を超えるSMM患者が除外されていることが挙げられる。

  • 監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
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  • 原文掲載日 2026/04/20

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