多発性骨髄腫の画期的な血液検査をダナファーバーがん研究所が発表

多発性骨髄腫の画期的な血液検査をダナファーバーがん研究所が発表

ダナファーバーがん研究所の研究者らは、多発性骨髄腫(MM)およびその前駆状態の診断と監視を一変させる可能性のある血液検査を開発した。新たな検査方法であるSWIFT-seqは、シングルセルシーケンスを利用して血液中の循環腫瘍細胞(CTC)のプロファイリングを行うもので、従来の骨髄検査に代わる非侵襲検査法である。

この研究はNature Cancer誌に掲載された。

「多発性骨髄腫の予後不良を予測するゲノムおよびトランスクリプトームの特徴を同定するために幾多の研究がなされてきましたが、私たちが診る患者においてそれらを測定する検査はまだ不足しています」と、上級著者のIrene M. Ghobrial医師は言う。「臨床医として、このような次世代検査こそ、患者のためにオーダーしたい検査です」。

多発性骨髄腫は、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)やくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)のような病態に続いて発症することが多い、困難な骨髄腫瘍である。従来、これらの病態におけるリスク評価や遺伝的変化のモニタリングには、骨髄生検が用いられてきた。しかし、これらの生検は痛みを伴い、何回も行うことができず、付随する技術である蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)では明確な結果が得られないことが多いため、リスク評価の有用性が低く、治療方針の決定に影響を及ぼすことになる。

「FISH検査よりも優れ、大多数の患者に有効な血液検査があれば素晴らしいことで、SWIFT-seqがまさにそうした検査になると考えています」と共同筆頭著者のRomanos Sklavenitis-Pistofidis医師は述べた。

SWIFT-seqは、医師が簡単な血液検査でリスク評価と遺伝子モニタリングを行うことを可能にし、プロセスをより簡単で信頼性の高いものにするという革新的な代替手段となる。SWIFT-seqは循環腫瘍細胞(CTC)を計数するだけでなく、詳細な遺伝子プロファイルを提供し、疾患の理解に不可欠な主要遺伝子変化を同定する。この方法はFISHのような骨髄検査の精度を上回る。さらに、SWIFT-seqは腫瘍増殖率を評価し、患者の転帰を予測できる重要な遺伝子パターンを同定するのだが、これらがすべて1回の血液サンプルから可能である。

「SWIFT-seqは強力な選択肢です。なぜなら、1回の検査、1回分の血液サンプルから、CTC数の測定、腫瘍のゲノム変化の特性化、腫瘍の増殖能の推定、予後的に有用な遺伝子シグネチャーの測定が可能だからです」とGhobrial医師は述べた。

この研究では患者および健康なドナー合わせて101人が参加し、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、多発性骨髄腫(MM)患者の90%でSWIFT-seqがCTCの捕捉に成功したことが示された。特筆すべきは、SMM患者の95%および初発MM患者の94%においてCTCが同定されたことであり、これらの患者は、リスク層別化およびゲノムサーベイランスの改善で利益を得る可能性が最も高いグループである。細胞表面マーカーに頼るのではなく、腫瘍の分子バーコードに基づいてCTCを列挙するSWIFT-seqの能力は、フローサイトメトリーのような既存の方法とは一線を画している。

SWIFT-seqは、血液サンプルから臨床的に関連する複数の特徴を直接測定するだけでなく、腫瘍細胞循環の生物学を究明するうえで手掛かりとなる。

「私たちは、腫瘍の循環能力を把握し、骨髄腫の生物学における未解明の謎の一部を説明すると思われる遺伝子シグネチャーを同定しました」と、共同筆頭著者であるElizabeth D. Lightbody博士は述べた。「このことは、骨髄腫患者において腫瘍の転移を抑制する方法について、非常に大きな影響を与え、患者のための新薬の開発につながる可能性があります」。

SWIFT-seq の導入は、1 回の血液検査から臨床的に有用な多層的情報を得るための低侵襲方法を提供するものであり、骨髄腫診断における重要な進歩を意味します。この画期的な進歩は、患者の転帰を改善し、骨髄腫の生物学をより深く理解することにつながるでしょう。

  • 監修 佐々木裕哉(筑波大学附属病院/血液内科)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/08/08

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