医療用画像診断による被ばくと小児のがん評価研究

医療用画像診断による被ばくと小児のがん評価研究

400万人近くの小児および青年を対象とした研究により、小児の血液および骨髄がんの10%は、放射線被曝に起因している可能性が明らかに

カリフォルニア大学サンフランシスコ校およびカリフォルニア大学デーヴィス校が主導した本研究により、医療用画像診断による放射線被曝は、小児の血液がんのリスク上昇と関連があるとの結論に達した。

研究者らは、400万人近くの小児のデータを調査し、血液がんの10分の1、つまり合計で約3,000件のがんが、医療用画像診断による放射線被曝に起因している可能性があると推定した。小児が受けた放射線の累積量に比例してリスクは上昇した。

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて実施され、2025年9月17日付のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

今回の調査は、北米の小児・青年を対象としたデータを用いた初の包括的評価であり、医療画像診断による放射線被曝と、小児・青年期に最も罹患率が高い白血病やリンパ腫などの血液・骨髄のがんとの関連性を定量化したものである。

医療画像診断を行うことで迅速な診断と効果的な治療が可能になり命は救われるが、特に、コンピュータ断層撮影(CT)を通じて発がん性物質として知られる電離放射線にも患者は被曝する。

著者らは、医師と保護者は過剰な放射線被曝を避け、臨床的に可能な限り被曝量を最小限に抑えるべきだと警告している。

本論文の筆頭著者であるRebecca Smith-Bindman医学博士(カリフォルニア大学サンフランシスコ校の放射線科医、疫学・生物統計学および産婦人科・生殖科学教授)は、次のように語った。「小児は放射線感受性が高く、平均余命が長いため、放射線誘発がんに対して特に脆弱です」。

「医療画像診断は命を救うことができますが、本知見では小児の画像診断における放射線被曝を慎重に評価および最小化して小児の長期的な健康を守る必要性を強調しています。それには、画像診断については小児の治療に不可欠な情報を提供する場合にのみ実施すること、CTスキャンなどの場合には可能な限り低線量の放射線を使用することが含まれます」と、フィリップ・R・リー医療政策研究所のメンバーでもあるRebecca医学博士は述べた。

小児におけるリスクの検証

本研究は、1996年~2016年に生まれた370万人の小児の完全な画像診断履歴を遡及的に分析するコホート研究デザインを採用した。米国とカナダのオンタリオ州の6つの医療機関で治療を受けた小児を対象にした。研究者らは、 累積放射線量と血液がん(血液・骨髄・リンパ系)との重要な関連性を見いだした。

がんの発症リスクは画像診断法によって大きく異なっていた。腫瘍、心臓病、脊髄や脳の損傷など多くの異常を検出するために用いられるCTでは、かなりの放射線被曝を伴う。しかし、骨折や肺炎の診断に用いられるX線撮影では、小児が受ける線量ははるかに低い。

本研究の結果、あらゆる画像診断の中で胸部X線検査の実施件数が最多であることが示された。また、CT検査においては頭部が最も高い割合を占めていた。

研究者らは、頭部CTを受けた小児については、その後発症した血液悪性腫瘍の約4分の1が放射線被曝に起因すると推定した。一方、X線検査を受けた小児については、その後発症したがんのごく一部のみが放射線被曝に関連すると推定した。

頭部CTを1~2回受けた場合、がん診断リスクは1.8倍に上昇し、さらに多くの検査を受けてより多くの放射線被曝を受けた小児では、このリスクは3.5倍にまで上昇した。

本研究期間中に診断された血液悪性腫瘍は、計2,961例であった。リンパ系悪性腫瘍は79.3%を、骨髄系悪性腫瘍と急性白血病は合わせて15.5%を占めた。約58%が男性に発生し、約半数は5歳未満の小児に認められた。

著者らは、不要な画像検査を減らして放射線量を最適化することで、小児・青年期の血液悪性腫瘍の最大10%が予防可能であると指摘した。多くの場合、超音波検査やMRIなどの非電離放射線画像診断法は、診断精度を損なうことなく切り替え可能な診断方法であると述べている。

利点とリスク

著者らは、医療用画像診断は小児医療において依然として非常に貴重な手段である一方、その診断上の利点と潜在的な長期的リスクを慎重に比較検討する必要性があるということを本研究結果が強調していると指摘する。

Diana Miglioretti博士(カリフォルニア大学デーヴィス校の健康科学部教授・生物統計学部長)は、次のように述べた。「本研究は、医療用画像診断による放射線被曝と小児および青少年の血液悪性腫瘍リスクとの間に、明らかな用量反応関係があるということを直接観察による確固たる証拠として示しています」。

「われわれの研究結果は、小児が特に放射線に敏感であることを強調する国際的な研究と一致しています。臨床医は、画像診断の即時の利点と潜在的な長期的な健康リスクを比較検討し、放射線被曝を最小限に抑えるために画像診断プロトコルを最適化することが極めて重要なのです」。

  • 監修 松本 恒(放射線診断/仙台星陵クリニック)
  • 記事担当者 平 千鶴
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  • 原文掲載日 2025/09/18

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