【ASCO26】進行前立腺がんでダロルタミドはエンザルタミドより認知機能低下が少ない

【ASCO26】進行前立腺がんでダロルタミドはエンザルタミドより認知機能低下が少ない

ASCOの見解(引用)

「ダロルタミドとエンザルタミドは、進行前立腺がんの治療薬として広く用いられ、非常に効果的ですが、認知機能への影響は異なる可能性があります。新たに実施されたランダム化第2相試験では、ダロルタミドを投与された男性は、エンザルタミドを投与された男性よりも認知機能の低下が少なかったことが示されました。この違いは、ダロルタミドの脳内移行性が限られていることに起因する可能性があり、進行前立腺がんの男性の認知機能を維持するための好ましい選択肢となる可能性があります」と、ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターのがんケアイノベーションセンター副所長であり、泌尿生殖器がんのASCO専門家であるSamuel U. Takvorian医師(MSHP)は述べている。

試験概要

焦点進行前立腺がんにおいて、2種類の一般的なアンドロゲン受容体経路阻害薬であるダロルタミド(販売名:ニュベクオ)とエンザルタミド(販売名:イクスタンジ)の認知機能への影響
対象者米国在住の非転移性去勢抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん、または転移性ホルモン感受性前立腺がんの男性111人
主な結果ダロルタミドを服用した患者は、エンザルタミドを服用した患者よりも、24週間の観察期間にわたり認知機能の低下が少なかった。
意義・前立腺がんは、男性で皮膚がん以外のがんの中で最も多い。男性の約8人に1人が生涯のうちに前立腺がんと診断される。症例の大部分は、がんが前立腺内に限局している早期に診断される。しかし、転移性または去勢抵抗性の進行前立腺がんの症例は増加している。
・転移性前立腺がんは治癒の見込みがないと考えられているが、治療によって進行を遅らせることができる。その治療法の一つがアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)で、ダロルタミドとエンザルタミドは代表的なARPIである。
・これまでの研究では、アンドロゲン受容体経路阻害薬に認知機能障害のリスクを高める可能性があることが示されているが、厳密な認知機能検査を用いてこれらの薬剤を直接比較した研究はない。

アンドロゲン受容体経路阻害薬の認知機能への影響を直接比較した初の第2相ARACOG試験の結果によると、進行前立腺がん患者でダロルタミドはエンザルタミドよりも記憶と思考の低下が少ないことが示された。これらの薬剤は長期にわたって使用されることが多いため、特に認知機能障害のリスクが高い患者にとっては、この生活の質への影響は非常に重要である。この研究結果は、5月29日から6月2日までシカゴで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される予定である。 

試験について

「これは、進行前立腺がんの治療のためにエンザルタミドまたはダロルタミドを投与された米国人患者を対象に、主要評価項目として認知機能への影響を比較した初のランダム化比較試験です。エンザルタミドとダロルタミドは、前立腺がんの抑制効果に関しては同様の働きをするようです。しかし、これらの薬剤間で認知機能への影響が異なる可能性があると知っておくことは、両方の選択肢がある場合に、前立腺がんの治療のための医師の選択に影響を及ぼす可能性があります」と、本研究の筆頭著者であるマサチューセッツ州ボストンのダナファーバーがん研究所のAlicia Morgans医師(公衆衛生学修士)は述べている。

ダロルタミドとエンザルタミドはどちらも前立腺がん患者の腫瘍の進行を抑制し、生存期間を延長させる。しかし、研究によると、エンザルタミドを服用した患者は、ダロルタミドを服用した患者よりも、発作や転倒などの神経症状のリスクが高いことが示唆されている。これは、エンザルタミドがダロルタミドよりも高い濃度で血液脳関門を通過するためと考えられる。研究者らは、この2つの薬剤の認知機能への影響を直接比較するために、ARACOG試験を実施した。

本研究には、米国在住の非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)、または転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の男性111人が参加した。参加者の年齢中央値は71歳で、大多数は白人であった。 

参加者は2つのグループに分けられ、約半数がダロルタミドを、残りの半数がエンザルタミドを投与された。すべての参加者は、記憶力と思考力のさまざまな側面を測定するケンブリッジ神経心理テスト自動バッテリー(CANTAB)の5つのコンピューターベースのテストを受けた。(これらは臨床的な検査ではなく、認知症の診断を行うものではない。)参加者は、投与開始前、および投与開始後12週と24週の時点でテストを受けた。研究者らは、各参加者の24週後のテストの成績を、投与開始前の成績と比較した。

主な知見

  • 95人の参加者で結果が得られた。内訳は、ダロルタミド群が48名、エンザルタミド群が47名であった。
  • ダロルタミドはエンザルタミドよりも認知機能障害が少なかった。研究者らは、24週間後に最も大きな変化を示したテストの結果を比較した。ダロルタミド群ではあるテストで15.8%の低下がみられたのに対し、エンザルタミド群ではあるテストで36.1%の低下がみられた。
  • この結果から、ダロルタミド群の参加者は時間の経過とともにテストの成績が向上した(学習効果)が、エンザルタミド群の参加者はそうではなかったことが示唆された。 
  • 認知機能障害や神経系の副作用が重度の場合、参加者はもう一方の薬を選択することができた。両グループで切替えの要件を満たした人数はほぼ同数(32人対33人)であったが、薬の変更を選択したのはエンザルタミドを服用していた参加者のみで、そのうち23人が治験中にダロルタミドに切り替えた。最も多かった理由は、テストで確認されたか、参加者自身が報告した認知機能障害の悪化であった。
  • 著者らは、ダロルタミドへの変更が好まれた理由として、2つの可能性を挙げている。ダロルタミド群の参加者は、症状に悩まされることが少なかった可能性がある。さらに、ダロルタミドは自己負担なしで提供されたのに対し、エンザルタミドは自己負担が必要だった可能性がある。

次のステップ

研究者たちは参加者の追跡調査を継続し、48週間にわたって薬剤が思考力と記憶力に及ぼす影響を観察している。また、認知機能の変化が起こる可能性を高める遺伝的要因が存在するかどうかも調査している。  
本研究は、前立腺がん財団Challenge Award、Alliance Scholar Award、およびBayer社からの資金提供を受けて実施された。

  • 記事担当 坂下美保子
  • 監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
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  • 原文掲載日 2026/05/22

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