経口マルチチロシンキナーゼ阻害剤のパゾパニブが進行腎細胞癌に効果

キャンサーコンサルタンツ
2009年9月

パゾパニブ(pazopanib)は、腎細胞癌の治療に効果のある新たなチロシンキナーゼ阻害剤であることが、欧州の研究者らによって報告された。研究の詳細は、2009年9月20-24日にベルリンで開催された第15回欧州癌学会(ECCO)と第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の合同総会で発表された。[1]

パゾパニブは経口マルチキナーゼ阻害剤で、腎細胞癌の治療に高い効果を示してきた。2007年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)では、進行腎細胞癌の治療におけるパゾパニブの第2相臨床試験の結果が、研究者らによって発表された。[2]患者の3分の1は、前治療が奏功していなかった。第12週における奏功率は27%、病勢コントロール率(部分寛解および病勢安定)は73%であった。最も頻繁に見られた薬剤関連の有害事象は、下痢、毛髪の変色、高血圧、吐き気、倦怠感であった。

ASCO 2009では、進行腎細胞癌患者におけるパゾパニブとプラセボを比較した国際多施設第3相臨床試験の結果が発表された。[3]前治療歴のない233人の患者と、サイトカインの前治療歴のある202人の患者を対象とした。パゾパニブ群は290人、プラセボ対照群は145人の患者を対象とした。

• 全患者の無進行生存期間(PFS)は、パゾパニブ群の9.4カ月に対し、プラセボ群は4.2カ月であった。
• 前治療歴のない患者のPFSは、パゾパニブ群の11.1カ月に対し、プラセボ群は2.8カ月であった。
• サイトカインの前治療歴のある患者のPFSは、パゾパニブ群の7.4カ月に対し、プラセボ群は4.2カ月であった。

ECCO-ESMOでの発表は、パゾパニブに対する奏功を予測しうる予後因子を調査した。スローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)のリスク分類で良好な群に属する患者では、パゾパニブに対するより高い全奏功率が認められた。MSKCCのリスクモデルは、低ヘモグロビン、高補正カルシウム、高乳酸脱水素酵素、腎摘除歴なし、低活動尺度(PS)といった数多くの予後不良の特徴によって患者を分類している。ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group:米国東海岸癌臨床試験グループ)のPSが0の患者は1の患者より、また正常下限を上回るヘモグロビン値を示す患者においても高い奏功率が認められた。診断から治療まで1年以上の遅延が見られる患者でも高い奏功率が認められた。

MSKCCスコアの良好な患者のPFSは14.8カ月であったのに対し、中間スコアの患者は5.6カ月であった。ECOG PSが0の患者のPFSは14.8カ月であったのに対し、ECOG PSが1の患者は7.4カ月であった。正常ヘモグロビン値の患者のPFSは12.9カ月であったのに対し、低ヘモグロビン値の患者のPFSは、7.4カ月であった。

コメント:
上記3件の研究からは、パゾパニブが腎細胞癌の治療に有効な薬剤であることが示唆される。腎細胞癌に有効な標的薬剤数は、以下のとおりで増加してきている。FDA承認のスーテント®(スニチニブ)、ネクサバール®(ソラフェニブ)および有効性を示しているがFDA未承認のaxitinib(アクシチニブ)、afinitor(アフィニトール)、everolimus(エベロリムス)、アバスチン®(ベバシズマブ)、タルセバ®(エルロチニブ)、タイケルブ®(ラパチニブ)。

参考文献:
[1] Sternberg C, Davis I, Wagstaff J, et al. Predictive and prognostic factors in a phase III study of pazopanib in patients with advanced renal cell carcinoma. European Journal of Cancer Supplements, Vol 7. No 2, September 2009, page 424, abstract O-7106.
[2] Hutson TE, Davis ID, Machiels JP, et al. Pazopanib (GW786034) is active in metastatic renal cell carcinoma: interim results of a phase II randomized discontinuation trial. Journal of Clinical Oncology. 2007; 25: No. 18S Part I of II, 5031.
[3] Sternberg CN, Szczylik C, Lee E, et al. A randomized, double-blind phase III study of pazopanib in treatment-naive and cytokine-pretreated patients with advanced renal cell carcinoma (RCC). Journal of Clinical Oncology. 2009;27, 15s, abstract 5021.


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翻訳担当者 横山 加奈子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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