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FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)阻害剤による膀胱がん治療

MDアンダーソン OncoLog 2018年7月号(Volume 63 / Issue 7)

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Erdafitinibは、進行した膀胱がんにおいて良好な奏効率を示している。この中には、免疫療法に反応しないものも含まれている。

シスプラチンベースの標準化学療法に反応しない進行あるいは転移した膀胱がん患者にとって、免疫療法は魅力的な治療選択肢である。しかしながら膀胱がんの15%~20%しか免疫チェックポイント阻害剤に反応せず、化学療法や免疫療法が奏効しない患者にとって治療の選択肢はほとんどない。幸いなことに、それらの患者の一部において、FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)を標的とする新しい薬剤が奏効する可能性がある。

 

尿路上皮がんは膀胱がんで最も多くみられる癌種であるが、このがんの20%~60%でFGFR遺伝子に変異がある。特にFGFR3遺伝子は膀胱がんの発生に関わっているとみられ、転移性尿路上皮がん患者の約15%で変異がみられる。FGFR3遺伝子の変異は膀胱、尿路を覆う上皮におけるがん細胞の高い増殖率に関与していると考えられている。この変異によりがん細胞が更なる突然変異を獲得し、高グレードの、より浸潤性の高いがんとなる能力の獲得を許してしまう。

 

そのような変異を有する膀胱がんは、特に免疫療法に対して抵抗性を示すようである。「FGFR3変異陽性膀胱がんはluminal 1 サブタイプと関連しているようで、免疫細胞マーカーの発現が低く免疫学的に反応性がありません」とテキサス大学MDアンダーソンがんセンター、泌尿生殖器腫瘍学部門の教授であるArlene Siefker-Radtke医師は述べた。「膀胱がん患者を免疫チェックポイント阻害剤で治療していると、FGFR3変異陽性腫瘍は反応性が悪く、これらの患者に対しては比較的早い段階で治療を中止していることに気づき始めました」。

 

進行あるいは転移性膀胱がんを有し、化学療法にも免疫チェックポイント阻害剤による治療にも反応しない患者の未解決の問題に対処するため、Siefker-Radtke氏は汎FGFR阻害剤DえあるErdafitinibおよびFGFR3阻害剤であるB-701を用いた臨床試験を主導している。

 

Erdafitinib

Erdafitinibの可能性

Erdafitinibは低濃度で4種類すべてのFGFRアイソタイプを阻害するため、FGFR変異を有する腫瘍において以前に研究されたFGFR阻害剤よりも有効である可能性がある。小規模な第1相試験においてErdafitinibがFGFR変異陽性膀胱がんに対して活性をもつ早期の証拠が示された後、前治療歴のある転移性あるいは切除不能なFGFR2、ないしFGFR3の変異を有する膀胱尿路上皮がん患者において、薬剤のさまざまな投薬レジメンの忍容性および有効性を検証するために第2相試験 (No. 2015-0112)を行った。この薬剤は1日8 mgまでの持続経口投与で十分な忍容性があり、毒性作用や高リン酸血症が発現しなかった患者においては、1日9 mgまで増量可能であった。

 

さらに良いことに、治療した患者59人で「患者により異なるが、至適用量である1日8~9 mgでの全奏効率は42%であり、継続的な治療において持続的な奏効のエビデンスがみられており、一部では1年以上反応が続いています」とSiefker-Radtke氏は述べた。

 

これらの反応には、一般的には治療を行っても予後不良な肝臓転移した尿路上皮がんの部分寛解も含まれている。Siefker-Radtke氏によれば、肝臓転移した膀胱がんは一般的に免疫系を標的とした治療に反応しないという。しかしながらErdafitinib試験では、複数の患者で肝臓転移がんの劇的な縮小がみられた。その中には免疫療法の治療歴があり、全く治療効果が得られなかった患者1人も含まれる。

 

本試験における患者の経験は、FGFR3変異陽性腫瘍は免疫療法に対する反応性が低いという理論を支持した。「患者22人には免疫療法の治療歴がありますが、免疫チェックポイント阻害剤に反応したのはたったの1人でした」と Dr. Siefker-Radtke 氏は述べた。「その反応も長くは続きませんでした」。

 

2018年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で発表されたこれらの結果を受け、米国食品医薬品局(FDA)はErdafitinibを転移性尿路上皮がんの治療薬として画期的治療薬に指定した。

 

現在のErdafitinibの試験

これから始まる第3相試験(No. 2018-0027)ではFGFR変異陽性膀胱がん治療におけるErdafitinibおよび免疫チェックポイント阻害剤の役割がさらに明らかにされるであろう。この試験では、FGFR遺伝子変異陽性で、転移性あるいは切除不能な膀胱尿路上皮がんを有し、全身療法による治療歴のある患者を登録する。PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)阻害剤による治療歴のある患者はErdafitinib又はタキサン系薬剤による化学療法(標準治療)を受けるようランダムに割り付けられる。また以前に免疫療法を受けたことのない患者は、Erdafitinib又はPD-1阻害剤であるペムブロリズマブにランダムに割り付けられる。

 

「FGFR3変異陽性腫瘍がErdafitinibと免疫療法のどちらにより反応するかを決定するために本試験は役立つでしょう」と、 Siefker-Radtke氏は述べた。

 

これから行われる別の試験(No. 2018-0142)では、併用療法において、おそらくは腫瘍に入る免疫細胞の量が増えることによって、Erdafitinibが免疫チェックポイント阻害剤とどのように相互作用するかを検討する。第2相試験の患者はErdafitinib単独又はPD-1阻害剤JNJ-63723283との併用療法を受ける。

 

「Erdafitinibの使用が腫瘍の環境を、免疫チェックポイント阻害剤に対する感受性を高めるようなものに変え、恐らく相乗効果を持つかどうかもわかるでしょう」と、両臨床試験の試験責任医師となるSiefker-Radtke氏は述べた。

 

B-701

Erdafitinibのような汎FGFR阻害剤や特異的FGFR3阻害剤が、FGFR3変異陽性膀胱がん患者においてより効果の高い治療戦略を提供できるかどうかは明らかになっていない。なぜなら、より多くのFGFRアイソタイプの阻害によって、毒性作用も高まる可能性があるためである。より選択的な阻害剤の可能性を解明するために、現在進行中の第1b /第2相試験(No. 2017-0580)では、FGFR3遺伝子を選択的に標的とする薬剤の安全性と有効性を決定する。薬剤B-701は、FGFR3変異陽性・陰性両方の、局所進行あるいは転移性尿路上皮がん患者に、単独投与、あるいはペムブロリズマブと併用投与する。

 

B-701試験はErdafitinib試験と同様、Siefker-Radtke氏により主導される。「これらの試験を行うことによってのみ、汎FGFR阻害剤あるいはFGFR3阻害剤が安全かつ有効な治療に必要かどうかの知見を得ることができます」と同氏は述べた。

 

将来の可能性

Erdafitinibといった汎FGFR阻害剤や、B-701のようなより選択的なFGFR3阻害剤は、進行膀胱がんを念頭に開発されたが、いずれはより早いステージの疾患にも適応が広げられるかもしれない。Siefker-Radtke医師によると、どちらの薬剤でも膀胱がんに対して活性を示し続けるとすれば、膀胱切除を要する可能性のある早期ステージの患者にとって、新しい治療選択肢を提示できるかもしれないという。「Erdafitinib、あるいはB-701によって、患者が膀胱を長く保ち、あるいは腫瘍が変化して悪性度の高い疾患にならないよう維持することが可能になるかもしれません」。

 

画像キャプション】

左;Erdafitinibによる治療前の、急激に進行する症候性の肝臓転移(矢印)。中央;治療開始6週間後。右;治療12週間後。劇的な腫瘍体積の縮小に加え、患者は臨床症状の解消を経験した。画像はArlene Siefker-Radtke氏の厚意による提供。

 

グラフキャプション】

第2相試験において、至適用量のErdafitinibで治療した転移性あるいは切除不能尿路上皮がん患者の無増悪生存曲線(左)および全生存曲線(右)。無増悪生存期間および全生存期間の中央値は、それぞれ5.5カ月と、13.8カ月である。Arlene Siefker-Radtke氏の厚意による提供。

 

For more information, contact Dr. Arlene Siefker-Radtke at 713-792-2830 or asiefker@mdanderson.org. To learn more about clinical trials at MD Anderson, visit www.clinical trials.org and search by cancer type, treatment, physician, or trial number.

 

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翻訳岡田 章代

監修榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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