浸潤性膀胱がん術後の免疫チェックポイント阻害療法にctDNA血液検査が指針に
ダナ・ファーバーが共同主導した第3相IMvigor011試験の結果は、術後の定期的なctDNA検査が術後免疫療法開始の判断指針となり得ることを示している。
筋層浸潤性膀胱がん患者において、がん切除後に循環腫瘍DNA(ctDNA)が陽性と判定された場合、プラセボと比較してアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)による免疫療法の恩恵を受ける可能性がある。一方で、ctDNA陰性患者は不必要な治療を回避できる可能性がある。この知見は、ダナ・ファーバーがん研究所、ミュンヘン工科大学、英国ロンドン大学クイーン・メアリー大学の研究者らが共同主導した、国際共同ランダム化第3相試験IMvigor011の結果に基づくものである。
アテゾリズマブを投与されたctDNA陽性患者は、手術直後にctDNA陽性であったか、術後1年以内の検査で陽性になったかにかかわらず、プラセボ投与群と比較して再発リスクが36%低下した。死亡リスクも41%低下した。
IMvigor011試験の結果は、本日、ドイツ・ベルリンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)で発表され、同時にNew England Journal of Medicine (NEJM)誌にも掲載された。
「ctDNAに基づいて患者を選別することで、アテゾリズマブ投与によって無病生存期間だけでなく全生存期間にも有益性があることがわかりました」と、共同主任研究者のJoaquim Bellmunt博士(ダナ・ファーバーがん研究所膀胱がんセンター長)は述べている。「術後免疫療法の試験において、ctDNA検査に基づく患者選別による生存期間の有益性が示されたのは、今回が初めてです」。
アテゾリズマブは、がん細胞上のPD-L1と呼ばれるマーカーを標的とする免疫チェックポイント阻害薬であり、これを顕在化させることで免疫細胞ががん細胞を認識できるようにする。Bellmunt氏が主導した先行試験であるIMvigor010試験では、筋層浸潤性膀胱がん患者に対する術後治療としてのアテゾリズマブの使用が検証された。
この試験では全ての患者に有益性が示されたわけではなかったが、後方視的データ解析により、ctDNA陽性患者は治療の恩恵を受けたことが示唆された。ctDNA検査陽性は微小残存病変の存在を示しており、他の臨床検査では検出できない少量のがん細胞が存在することを意味する。
IMvigor011試験は、最小残存病変を有する患者において、ctDNAがアテゾリズマブによる免疫療法の使用を導く指標となり得るという仮説を検証するためにデザインされた。
この試験では、術後にがんの臨床的初見が認められなかった800人の患者を対象に、個別化血液検査(ctDNA)を9カ月から最長1年間にわたり6週間ごとに実施した。このうちctDNA陽性患者250人が2:1の割合で、アテゾリズマブ群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。
ctDNA陰性を維持した患者には追加治療は行われなかった。これらの患者のうち、89%は無再発を維持し、90%以上が中央値21.8カ月の追跡調査時点で生存していた。
「これらの結果からわかることは、このctDNA検査が微小残存病変を検出しており、手術後も膀胱がんが残存している可能性があり、アテゾリズマブ投与の恩恵を受けられる患者を特定できるということです」とBellmunt氏は述べた。「さらに、ctDNAが持続的に陰性の患者さんは再発リスクが低く、不必要な治療を回避できることを示唆しています」。
新たな副作用は認められなかった。このデータに基づき、規制当局は本適応症患者においてアテゾリズマブの使用をctDNA検査と連動させるよう標準治療を変更すべきかどうかを判断する。
資金提供: 本研究は、F. Hoffmann-La Roche Ltd 社より資金提供を受け、Natera 社が共同研究者として参画した。
- 監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
- 記事担当者 青山真佐枝
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- 原文掲載日 2025/10/20
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