Quizartinibが難治性白血病(AML)の全生存期間を延長

治験薬quizartinib(キザルチニブ)が、FMS様遺伝子内縦列重複(FLT3-ITD)と呼ばれる遺伝子変異と関連する予後不良型の急性骨髄性白血病(AML)患者の全生存期間を延長したことが、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターが主導する研究で明らかになった。

第3相臨床試験の知見は、ストックホルムで開催された第23回欧州血液学会議で、Jorge Cortes医師(MDアンダーソンがんセンター白血病科副科長・教授、QUANTUM-R試験代表研究者)が発表した。

「現在、FLT3-ITD関連の急性骨髄性白血病(AML)再発患者に対する分子標的治療薬として承認されたものはありません。これは医学的ニーズが満たされていないことを顕著に表しています」とCortes氏は述べた。「キザルチニブ単剤投与を52週間受けた患者の推定全生存率が27%であったのに対して、標準化学療法を受けた患者の全生存率は20%であったと、われわれの知見が実証しました」。

本研究でキザルチニブの有効性と安全性、およびこの新規薬剤を用いたFLT3-ITD標的治療の有益性が確認された。これは、前治療後に治療抵抗性を示すか、再発したFLT3-ITD関連AML患者の全生存期間の改善を実証した初の臨床試験である。本研究は367人の患者を追跡調査して、103週間目の時点で最初の分析を実施した。みとめられた副作用は最小限であった。

Cortes氏が主導した多施設共同研究では、キザルチニブの開発と試験に取り組んだ。この薬剤は、FLT3遺伝子内のITD異常を標的とする小分子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。FLT3は、AMLに多く発現する受容体型チロシンキナーゼであり、AML患者の約3分の1がこの変異を有する。チロシンキナーゼとは、細胞増殖、分裂、分化および細胞死など細胞プロセスにおいて決定的な役割を果たす酵素であり、しばしばがんと関連づけられる。

QUANTUM-R試験には、年齢18歳以上、難治性AML患者、または標準AML治療後に完全寛解したものの、6カ月以内に再発した患者が登録された。過去に幹細胞移植を受けたかどうかに関わらず本研究への参加を認めた。1日1回キザルチニブ投与を受ける群、または標準治療が奏効しなくなった後に一般的に用いる複数の化学療法オプションのうち1種類を受ける群に患者を無作為に割り付けた。使用可能な化学療法は、低用量シタラビン、ミトキサントロン+エトポシド+シタラビン併用療法、フルダラビン+シタラビン+イダルビシン併用療法であった。

この2つの試験群の患者構成は類似しており、キザルチニブ投与を受けた患者の年齢中央値は55歳、化学療法を受けた患者の年齢中央値は57歳であった。キザルチニブ群のうち、難治性患者は33%、本研究より以前に、最初の完全寛解から6カ月以内に再発した患者は67%であった。化学療法群のうち、難治性患者は34%、研究以前の完全寛解6カ月以内で再発した患者は66%であった。

「これらの極めて重要なデータは、この有望な新治療によるFLT3-ITD標的療法が有意義な臨床的価値のあることを明確に示しています。」とCortes氏は述べた。「本研究結果は、FLT3-ITD関連AML患者における全生存期間の改善を実証した、初の第3相臨床試験です」と語った。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 佐々木裕哉(血液内科/横須賀米国海軍病院)

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