限局性前立腺がんに対する放射線療法と小線源治療の効果は同等

中間リスク前立腺がんの男性の長期生存率は、定位放射線治療(SBRT)、線量増加外照射治療(DE-EBRT)、小線源治療(BT)のいずれを受けたかにかかわらず差がないことがデータベース分析により示された。

ロサンゼルスのカリフォルニア大学・Albert Chang医師は電子メールでロイター・ヘルスに「定位放射線治療と小線源治療は中間リスク前立腺がんで優先される治療法であるべきだ」と語った。しかし、同氏は、定位放射線治療と小線源治療の生存成績、利便性、費用対効果が線量増加外照射治療と同等であるにもかかわらず、線量増加外照射治療が「定位放射線治療や小線源治療よりも治療法としてなお多く選択されている」ことを今回の研究は示していると述べている。過去10年間で定位放射線治療の使用は増加しているが、小線源治療の使用は大幅に減少している。

「米国小線源治療学会は、今後10年間で300人の放射線腫瘍医を訓練して小線源治療技能を習得させるために『小線源治療医招集』プロジェクトを開始した」と同氏は指摘する。「小線源治療がさらに利用されるようになるには、診療報酬の再評価が必要である。小線源治療は(線量増加外照射治療)と比較して、作業時間に対する診療報酬が著しく過小評価されている。これらの要因を考慮することは、目前に控えている放射線腫瘍学代替支払モデルの実施と合わせて、費用対効果の高い治療を行うために不可欠である」。

JAMA Network Open誌に報告されているように、研究チームは、2004年から2014年の間にNCCN(全米総合がんセンターネットワーク)の診断基準(グリーソンスコア6-7、臨床病期T1-T2、PSA<20ng/mL)に基づいて中間リスク前立腺がんと診断された患者3万人以上(診断時年齢中央値69歳、84%が白人)のデータを調査した。

全体では81.1%が予後良好な中間リスク、18.9%が予後不良な中間リスクであった。41.8%が小線源治療、56.1%が線量増加外照射治療、2.1%が定位放射線治療を受けていた。追跡期間中央値は6.7年であった。

Chang医師が指摘しているように、2004年から2014年にかけて定位放射線治療の使用は0.03%から10.6%に着実に増加し、線量増加外照射治療の使用も48.3%から62.0%に増加したが、小線源治療の使用は48.3%から27.4%に減少した。

予後良好な中間リスク群では、小線源治療と定位放射線治療の比較(HR, 0.804; 10年生存率 67.02% vs. 64.2%)または定位放射線治療と線量増加外照射治療の比較(HR, 1.096; 10年生存率 64.2% vs. 70.9%)で全生存率に有意差は認められなかった。

しかし、小線源治療を受けた男性は、線量増加外照射治療を受けた男性と比較して、わずかだが統計学的に有意な全生存率の改善がみられた(HR, 0.881; 10年生存率 69.8% vs. 66.1%)。

同様に、予後不良な中間リスク群では、小線源治療と定位放射線治療(HR, 0.749; 10年生存率 64.9% vs. 63.2%)または定位放射線治療と線量増加外照射治療(HR, 1.36; 10年生存率 63.2% vs. 66.6%)の間に全生存率の違いは見られなかった。

ここでも、小線源治療を受けた男性は、線量増加外照射治療を受けた男性に比べて、わずかだが統計学的に有意な全生存率の改善を示した(HR, 0.818; 10年生存率 61.2% vs. 58.7%)。

カリフォルニア州サンタモニカにあるプロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンターの放射線腫瘍学部長であるRobert Wollman医師は、ロイター・ヘルスへのメールで、「これらのモダリティ(治療手段)はすべて、経験豊富な臨床医が適切な患者に対して行った場合、ほぼ同じ結果が得られるだろう。このことは他の研究でははるかに説得力をもって証明されているが、これは、著者らが認めているように、データベース研究では患者選択に多くの固有のバイアスがかかっているからである」とコメントした。

「つまり、患者の基礎となる健康状態、治療前の泌尿器や腸のQOL、生活習慣に基づいて、患者にとって適切な治療手段を選択するよう注意しなければならない」と同氏は言う。

「例えば、前立腺の良性疾患も合併している頻尿の男性は、外照射治療でなく定位放射線治療や小線源治療を選択した場合、数カ月間、排尿障害が大幅に悪化する可能性がある」と同氏は指摘する。「一方、心臓や肺に問題があり麻酔が危険な場合は、小線源治療よりも定位放射線治療や外照射治療を選択すべきである」。

*サイト内関連記事:前立腺がんに対する小線源放射線療法ガイドラインを更新

          小線源について知っておくべきこと[放射線療法の解説シート]

翻訳担当者 伊藤彰

監修 河村光栄(放射線科/京都医療センター 放射線治療科)

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望の画像

進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの予後は非常に不良です。アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とカボザンチニブ(販売名:カボメ...
FDAが転移のない前立腺がんにエンザルタミドを追加承認の画像

FDAが転移のない前立腺がんにエンザルタミドを追加承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ前立腺がんの治療選択肢は過去10年間で爆発的に増えた。その流れは留まる気配がなく、最近では米国食品医薬品局(FDA)がエンザルタミド(販売名...
150回達成: ロボット手術HIFUで変わる前立腺がん治療の画像

150回達成: ロボット手術HIFUで変わる前立腺がん治療

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)リスク少なく回復が早い高密度焦点式超音波療法(HIFU)で世界をリードするカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ヘルス...
FDAがBRCA変異転移性去勢抵抗性前立腺がんにニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾン併用を承認の画像

FDAがBRCA変異転移性去勢抵抗性前立腺がんにニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾン併用を承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年8月11日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAが承認した検査で判定された、病的変異または病的変異疑いのあるBRCA遺伝子変異去勢抵抗性前立腺がん(...