PARP阻害薬は特定の卵巣がん治療に有用―ASCOガイドライン

【ロイター】ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬は、新規または再発卵巣がんと診断された特定の女性患者の治療に有用であることが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の新たなガイドラインに示された。

卵巣がん患者への治療薬として米国食品医薬品局(FDA)が承認しているPARP阻害薬にはオラパリブ(販売名:リムパーザ)、ルカパリブ、およびニラパリブがある。もう一つのPARP阻害薬であるveliparib[ベリパリブ]は、卵巣がん治療薬としていまだ米国非承認であり、市販されていない。

ニューヨーク市のスローンケタリング記念がんセンターのWilliam P. Tew医師らによる専門家パネルは、新たなASCOガイドラインの推奨事項を示す根拠として17の臨床試験のデータを用いた。この新ガイドラインはJournal of Clinical Oncology誌で公開されている。

一般的に、これら推奨事項が該当するのは、過去にPARP阻害薬治療を受けたことのない上皮性卵巣がん(EOC)患者のみである。

本ガイドラインでは、新たに診断された早期上皮性卵巣がんに対する初回治療にはPARP阻害薬を使用しないよう推奨している。それは、この集団におけるPARP阻害薬の使用を支持する情報が不足しているためである。

対照的に、新規に診断された3~4期の上皮性卵巣がん患者で、プラチナ製剤ベースの初回化学療法に完全または部分奏効した患者には、病原遺伝子変異体および特定の上皮性卵巣がん型に応じて、オラパリブまたはニラパリブを用いたPARP阻害薬維持療法を行うべきとしている。

ガイドラインでは、特定の患者に対してベバシズマブ維持療法にオラパリブを追加することは可能であるが、ベリパリブ併用化学療法の後のベリパリブ維持療法は現時点では推奨できない、としている。

PARP阻害薬単剤維持療法は、特定の再発卵巣がん患者には提供可能であるが、PARP阻害薬はBRCA野生型(変異無し)またはプラチナ製剤耐性再発上皮性卵巣がんの治療には推奨されない。

再発症例に対するPARP阻害薬は、臨床試験以外において、化学療法、他の分子標的薬、またはがん免疫療法薬剤との併用は推奨されない。

これら具体的な推奨事項に加えて、上皮性卵巣がん治療においてPARP阻害薬を反復投与することは現時点では推奨されないため、特定の患者のライフサイクルの中で、同薬剤を治療に用いる最適なタイミングを考慮しなくてはならない、と専門家パネルは指摘している。

また、本ガイドラインでは、貧血、好中球減少、血小板減少、持続性細胞減少、嘔気など、PARP阻害薬治療に伴う有害事象の管理についても推奨事項を挙げている。

EOCにおけるPARP阻害薬使用について最近論評したRamez N. Eskander博士(カリフォルニア大学サンディエゴ校)は、「PAPR阻害薬は卵巣がん患者にとって重要な治療選択肢であり、現在は初回治療と再発の実臨床に適応されています。医療提供者と患者が遺伝子検査と分子腫瘍検査の意義を理解して、PARP阻害薬を治療に取り入れることを積極的に話し合うことが極めて重要です」と、ロイター通信に電子メールで回答した。

「PARP阻害薬治療後のPARP阻害薬再投与の役割を引き続き調べることが極めて重要であり、その役割は臨床試験でも積極的に研究されています」とEskander氏は述べる。同氏は今回のガイドライン作成に関与していない。「さらに、明確な反応を示さないと思われる(バイオマーカー陰性)患者に対しては、引き続き併用療法を探っていく必要があります」。

「今は卵巣がん治療において、信じられないほど高揚するダイナミックな時期です」と付け加えた。

Tew博士およびASCOにコメントを求めたが、回答はなかった。

出典: https://bit.ly/2QbbSzF  Journal of Clinical Oncology誌、2020年8月13日オンライン版

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)

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