FDAが、HRR遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんにオラパリブを承認

2020年5月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、生殖細胞または体細胞系列相同組換え修復関連(HRR)遺伝子に病的変異または病的変異疑いを有し、前治療としてエンザルタミド(販売名:イクスタンジ)またはアビラテロン(販売名:ザイティガ)による治療を受けて病勢進行が認められた、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の成人患者を対象にオラパリブ(販売名:リムパーザ、AstraZeneca Pharmaceuticals, LP社)を承認した。

本日、FDAは、オラパリブ治療対象となる転移性去勢抵抗性前立腺がん患者選択のためのコンパニオン診断検査として、HRR遺伝子変異検出にFoundationOne CDx(Foundation Medicine社)を、生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異検出にBRACAnalysis CDxテスト(Myriad Genetic Laboratories社)を承認した。

本剤の有効性は、非盲検多施設共同PROfound試験(NCT02987543)で評価され、無作為に(2対1の割合で)256人の患者を1日2回300mgオラパリブ投与群に、131人の患者を医師が選択したエンザルタミドまたはアビラテロン投与群に割り付けた。すべての患者はGnRHアナログ剤投与、または精巣摘出術の前治療を受けていた。HRR遺伝子変異の有無により、患者は2つのコホートに分けられた。BRCA1、BRCA2、ATMのいずれかの変異を有する患者245人はコホートAに無作為に割り付けられた;他の12のHRR経路に関連する遺伝子変異を有する患者142人はコホートBに無作為に割り付けられた;コホートAおよびコホートB 両方の遺伝子変異を有する患者はコホートAに割り付けられた。

本試験の主要評価項目は、コホートAの画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)だった。その他の評価項目は、評価可能な病変を有するコホートAの奏効率(ORR)、コホートA+B 無増悪生存期間、およびコホートA全生存期間(OS)であった。

コホートAのオラパリブ群は医師が選択したエンザルタミドまたはアビラテロン群と比較して統計学的に有意な改善を示し、無増悪生存期間中央値が7.4カ月に対して3.6カ月(ハザード比[HR] 0.34、95% 信頼区間[CI]:0.25~0.47、p<0.0001)、全生存期間中央値が19.1カ月に対して14.7カ月(ハザード比[HR]0.69、95% 信頼区間[CI]:0.50~0.97、p=0.0175)、奏効率 が33%に対して2%(p<0.0001)だった。コホートA+Bのオラパリブ群も、医師が選択したエンザルタミドまたはアビラテロン群と比較して統計学的に有意な改善を示し、無増悪生存期間中央値は5.8カ月に対して3.5カ月であった(ハザード比[HR]0.49; 95% 信頼区間[CI]: 0.38 ~0.63; p<0.0001)。

PROfound試験のオラパリブ群において最もよくみられた(10%以上に発現)有害反応は、貧血、悪心、疲労(無力症を含む)、食欲減退、下痢、嘔吐、血小板減少、咳、呼吸困難だった。肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症は、無作為にオラパリブ群に割り付けられた患者の7%で発生したが、エンザルタミドまたはアビラテロン群では3.1%だった。

オラパリブの推奨用量は300mgであり、食事の有無にかかわらず1日2回経口投与を行う。

LYNPARZAの全処方情報はこちら。(*参考:日本語の添付文書はこちらを参照)

本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが用いられた。

オラパリブは優先審査および画期的治療薬の指定を受けたFDA迅速承認プログラムについては、企業向けガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム―医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 為石万里子

監修 花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)

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