メトホルミンにより前立腺癌を患う糖尿病男性の生存率が改善する可能性

キャンサーコンサルタンツ

Journal of Clinical Oncology誌に掲載された研究結果によると、血糖降下薬であるメトホルミンによる治療を受けた場合、前立腺癌を患う男性糖尿病患者で生存期間が有意に延長し、また前立腺癌が原因で死亡する可能性が有意に低くなることがわかった。

前立腺癌は、皮膚癌を除き、米国の男性において最も頻繁に診断される癌であり、毎年240,000人以上の男性が前立腺癌の診断を受けている。

アメリカ疫病予防管理センター(CDC)によると、米国の約2,580万人が糖尿病を患っている。糖尿病の症例のうち95%近くが、インスリン抵抗性を特徴とする2型糖尿病である。インスリンは、体内のブドウ糖(血糖)値のコントロールを助けるホルモンの一種である。2型糖尿病を発症すると、インスリンを産生し、利用する身体機能が低下する。メトホルミンはインスリン感受性を高める、一般的に処方されている薬剤であり、2型糖尿病治療のために頻繁に用いられている。

研究者らは、抗糖尿病薬の投与と全死亡率および前立腺癌特異的死亡率との関連を検討するため、集団ベースの後ろ向きコホート研究を実施した。この研究は、糖尿病発症後に前立腺癌を発症した66歳以上の男性患者3,837人を対象とするものであった。

追跡期間中央値4.64年の間、男性患者1,343人が死亡し、このうち291人は前立腺癌による死亡であった。治療記録から、男性患者1,251人が前立腺癌診断前にメトホルミンによる治療を受け、1,619人が診断後に同治療を受けたことが明らかとなった。メトホルミン治療は、前立腺癌診断前に中央値で19カ月間続けられ、診断後は中央値で8.9カ月間続けられた。

データから、前立腺癌診断後のメトホルミンの累積投与期間が前立腺癌特異的死亡率および全死亡率の両方の用量依存的かつ有意な低下と関連していることが明らかとなった。メトホルミンを6カ月間投与するごとに、メトホルミンの投与を受けていない群に比べて前立腺癌特異的死亡率が24%低下した。メトホルミン投与開始後最初の6カ月間では、全死亡率が24%低下したが、メトホルミン治療開始後24~30カ月の時点ではこの数値が7%にまで減少した。メトホルミン単独治療を受けた男性患者850人では、治療期間が6カ月延びるごとに前立腺癌特異的死亡率が44%低下し、全死亡率が20%低下した。死亡率の低下には癌治療の種類による影響がみられなかった。さらに、ほかの糖尿病薬の累積投与量は、全死亡率または前立腺癌特異的死亡率に有意な影響を及ぼさなかった。

研究者らは、前立腺癌診断後にメトホルミンを投与することと、男性糖尿病患者の全死亡率および前立腺癌特異的死亡率の低下に関連があると結論づけた。

参考文献:
Margel D, Urbach DR, Lipscombe LL, et al. Metformin use and all-cause and prostate cancer–specific mortality among men with diabetes. Journal of Clinical Oncology. Published early online August 5, 2013. doi: 10.1200/JCO.2012.46.7043


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翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院) 

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