酸素欠乏は、中間リスク前立腺癌における腫瘍特性と患者の転帰に影響する

・低酸素(低酸素状態)は、放射線治療後の前立腺癌の再発を予測する。
・前立腺癌の低酸素状態を測定することは、患者にとって最良の治療法の選択に役立つ可能性がある。
・低酸素状態の前立腺癌を標的とする新しい治療法は、患者の転帰を改善する可能性がある。

シカゴ発―米国癌学会誌であるClinical Cancer Research誌の電子版に掲載され、米国癌学会2012年年次総会の記者会見で発表された研究によれば、前立腺癌における低酸素状態あるいは酸素欠乏は、中間リスクの男性における早期の生化学的な再発や放射線治療後の局所再発と関係している。

前立腺癌の特性に関する新たな見解は、低酸素状態あるいは低酸素の徴候を標的とする新しい治療戦略の開発、そして最終的には患者の転帰の改善につながる可能性があると、カナダのオンタリオ州トロントにあるトロント大学の放射線腫瘍学の教授であり、University Health Networkのプリンセス・マーガレット病院がんプログラムの放射線腫瘍医であるMichael F. Milosevic医師は述べている。

限局性前立腺癌は、一般的に手術や放射線療法で治療され、患者のおよそ25%は、進行性の局所再発または骨や体の他の部分へ広がる転移のいずれかに進行する。現在、医師は様々な臨床的要因を頼りに、これらの治療に患者がどのように反応するかを予測している。Milosevic氏によれば、前立腺癌の特性に影響する生物学的要因が同定できることにより、医師が各患者個人にとって最適で効果的な治療法を選択することも可能となる。

「われわれの特別な関心は、低酸素状態と関係のある前立腺癌の特徴を調べることです」と、彼は述べた。「多くの癌種は低酸素状態ですが、前立腺癌ではこれまで一度も決定的な証明はされたことがありません」

Milosevic氏らは、放射線治療前に限局性前立腺癌の男性247人の低酸素状態を測定し、6.6年間(中央値)追跡調査した。5年間の生化学的な無再発率は78%であり、経時的に血中前立腺特異抗原(PSA)値を測定することによって決定された。研究者らは、腫瘍内の10mmHg未満の酸素測定値の割合は、放射線治療後の早期の生化学的再発を単独で予測したことを発見した。

研究者らは、酸素測定部位において巨大な腫瘍のある患者142人を特異的に調査した時、低酸素状態は早期の生化学的再発とより強い関連があることを発見した。さらに、追跡期間中に生検が行われた70人の患者において、低酸素状態は再発を予測・同定した唯一の要因であった。

「前立腺癌が、もし低い酸素レベルであるならば悪くなる。さらに、悪くなる時間の長さが短縮されるようである。これらの患者は、他の患者に比べると治療を終了して数年のうちに、癌が再発する傾向にある」と、Milosevic医師は述べた。

前立腺癌の低酸素状態を測定するための、より簡単な方法を検討する必要がある、とMilosevic医師は言う。

「われわれの研究で低酸素状態を測定した方法は厳密な方法なので、広く日常臨床に普及させるには適切な方法ではない」と、彼は述べた。生検組織を検査したり画像を使用したりするような別の方法も存在するが、今後も検証される必要がある。Milosevic医師らは、この研究が低酸素状態を確認された患者に対する新しい治療アプローチとなることを望んでいる。

「われわれは、実際に治療に介入し、患者の転帰を改善できるようにしたい」と、彼は述べた。「治療がより効果的になるように、低酸素状態や低酸素の徴候を標的とする、新しい薬剤の概念を探索したいと考えています」

翻訳担当者 上野葉

監修 須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)

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