【ASCO26】転移膵がんでRAS(ON)多選択的阻害薬ダラクソンラシブが生存期間を2倍に

【ASCO26】転移膵がんでRAS(ON)多選択的阻害薬ダラクソンラシブが生存期間を2倍に

ASCOの見解(引用)

「これらの結果は、KRAS変異を有する転移膵臓がん患者にとって治療の様相を一変させるものです。二次治療においてこれまでにない生存期間の延長と有効性が確認されており、安全性プロファイルも想定内です。RASを標的とした治療の革命はすでに始まっており、この研究は、膵臓がんにおけるKRAS標的療法が実現可能かつ効果的であることを実証するものです」と、Rachna Shroff医師(アリゾナ大学がんセンター血液腫瘍科部長、ASCO消化器がん専門家、MS、FASCO:米国臨床腫瘍学会フェロー)は述べている。

試験概要

焦点既治療の転移を有する膵管腺がん(mPDAC)に対する新たな二次治療
対象者北米、欧州、アジアからの参加者500人
主な結果RAS(ON)多選択的阻害薬daraxonrasib[ダラクソンラシブ]は、RAS変異の有無にかかわらず、転移を有する膵管腺がん(mPDAC)患者の無増悪生存期間および全生存期間を改善する可能性がある
意義・ 膵臓がんは、米国におけるがん診断の約3%を占めている。アメリカがん協会は、2026年には男性35,160人、女性32,340人が膵臓がんと診断されると推定している。症例の約95%は膵管腺がん(PDAC)である。
・ 膵臓がんの半数以上は、すでに転移した段階で診断される。転移を有する膵臓がんの5年相対生存率は約3%である。通常、化学療法は一次治療として行われ、必要に応じて二次治療としても実施される。しかし、二次治療としての化学療法の場合、無増悪生存期間(PFS)の中央値は3~4カ月、全生存期間(OS)の中央値は6~7カ月である。
・ 転移を有する膵管腺がん(mPDAC)の90%以上は、KRAS遺伝子の変異(RAS G12変異と呼ばれる)によって引き起こされ、これによりKRASタンパク質の過剰な活性化が生じる。このタンパク質の働きを阻害する従来の薬剤(RAS阻害薬)は、変異したタンパク質のうち特定の型にのみ特異的に作用する。
・ ダラクソンラシブは、RAS(ON)多選択的阻害薬と呼ばれる新しいタイプのRAS阻害薬である。KRAS変異の有無や、その変異の種類にかかわらず、KRASタンパク質の働きを阻害することで、がんの増殖を抑制することができる。

RAS(ON)多選択的阻害薬を評価した初の第3相試験の結果により、ダラクソンラシブ(daraxonrasib)はRAS変異型およびRAS野生型の転移を有する膵管腺がん(mPDAC)に対して有効であることが示された。治療を受けた患者において、ダラクソンラシブは化学療法と比較して副作用が少なく、生存期間をほぼ2倍に延長した。この研究結果は、5月29日から6月2日にシカゴで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

試験について

「既治療の転移を有する膵臓がん患者に対して利用可能な治療法は限られており、それらの治療法は効果が限定的で、毒性も大きい。RASolute 302試験は、転移を有する膵臓がん患者の二次治療としてRAS(ON)多選択的阻害薬を評価するために設計された試験であり、現在利用可能な化学療法よりも効果が高く、副作用の少ない新たな標準治療の確立を目指したものです」と、Brian Wolpin医師(MPH)(マサチューセッツ州ボストンのダナ・ファーバーがん研究所消化管がんセンター、ヘイルファミリー膵がん研究センター)は述べている。

これまでの第1/2相試験において、ダラクソンラシブは、治療歴のあるKRAS遺伝子変異を有する進行膵管腺がん(PDAC)患者に対して安全かつ有効であることが示された。しかし、RASolute 302臨床試験は、この患者集団においてダラクソンラシブによる治療の生存転帰を評価し、化学療法と比較した初の第3相試験である。
 
この研究には、治療歴のある転移を有する膵管腺がん(mPDAC)患者500人が対象となった。患者はECOGパフォーマンスステータスが0または1であることが条件であり、これは日常の活動のほとんどを遂行できる状態であることを意味する。患者の約半数が男性、半数が女性で、年齢の中央値は66歳であった。
 
患者は、ダラクソンラシブ投与群(248人)または化学療法群(252人)のいずれかに無作為に割り付けられた。両群ともに大部分の患者はRAS G12変異を有する腫瘍を有しており、その内訳はダラクソンラシブ群228人、化学療法群231人であった。RAS G12変異を有さない参加者については、腫瘍にG13またはQ61と呼ばれる別のRAS変異が存在する場合もあれば、RAS変異が全く認められない場合もあった。

主な知見

  追跡期間の中央値が8.5カ月の時点で、ダラクソンラシブ投与群における全生存期間(OS)の中央値は13.2カ月であった(RAS G12変異を有する患者と全体集団のいずれも)。化学療法群では、RAS G12変異を有する患者のOS中央値は6.6カ月、全体集団では6.7カ月であった。
  ダラクソンラシブ投与群において、無増悪生存期間(PFS)の中央値は、RAS G12変異を有する患者で7.3か月、全体集団で7.2か月であった。これに対し、化学療法を受けた患者では、RAS G12変異を有する患者のPFS中央値は3.5カ月、全体集団で3.6カ月であった。
  ダラクソンラシブ群における客観的奏効率(ORR)は、RAS G12変異を有する患者で33.2%、全体集団で31.6%であった。一方、化学療法群におけるORRは、RAS G12変異を有する患者で11.8%、全体集団で11.2%であった。
 
ダラクソンラシブは、化学療法と比較して重篤な副作用の発現が少なかった。グレード3以上の有害事象は、ダラクソンラシブ群では43.6%、化学療法群では57.5%に認められた。副作用により治療を中止した患者の割合は、ダラクソンラシブ群で1.2%であったのに対し、化学療法群では11.2%であった。

次のステップ

RASolute 302試験のデータは、膵臓がんに対する新規治療薬としてのダラクソンラシブの承認審査を支援するため、米国食品医薬品局(FDA)に提出される予定である。本薬剤は現在、膵臓がんの一次治療としての使用や、RAS関連の他のがんの治療を含む複数の臨床試験でも検証が進められている。さらに研究者らは、がんがダラクソンラシブに対する耐性を獲得する仕組みの解明を進めるとともに、その有効性を向上させるためにダラクソンラシブとの併用が可能な他の治療法の特定にも取り組んでいる。
 
本試験は  Revolution Medicines社より資金提供を受けて実施された。

  • 記事担当 青山真佐枝
  • 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
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  • 原文掲載日 2026/05/31

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