ボリノスタットのFDA承認

原文 2006/10/10掲載 2013/07/03更新

商標名:Zolinza™

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

2006年10月6日、米国食品医薬品局(FDA)は2種類の全身療法中または療法後に、疾患が進行あるいは持続、または再発した皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)患者の皮膚症状の治療に対して、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるボリノスタット(商品名:Zolinza™ 、製造元Merck & Co.社)を承認しました。

承認の主要な根拠となった試験は、米国およびカナダの18施設で実施された単一治療群の非盲検試験で、2種類の全身療法(そのうち1つはbexaroteneを使用することが条件)が奏効しなかったステージIB以上のCTCL患者74人が登録されました。全ての患者は、1日1回400mgのボリノスタットを投与されました。この用量は、毒性が出た場合は、1日300mgの経口投与もしくは一週間に5日300mgの経口投与に減らされました。

患者の年齢中央値は61歳でした。61人(82%)は、ステージIIB以上のCTCL患者で、30人(41%)は、セザリー症候群患者でした。このプロトコールによる治療期間の中央値は118日でした。

皮膚症状に対する奏効は、重症度加重評価法(Severity Weighted Assessment Tool, SWAT)によって評価されました。この評価方法は皮膚班、局面、腫瘍の部分をそれぞれ 1、2、4の因数で重み付けをしたうえで体表面積に占める割合をもとめ、合計のスコアを計算するものです。

奏効は、SWATのスコアが50%以上減少すること、と定義され、疾患の進行は、一番低い値からスコアが50%以上増加すること、と定義されました。この試験では、30%の患者が奏効を示し、推定奏効期間の中央値は168日で、腫瘍進行までの期間の中央値は202日でした。(プロトコール要旨参照[原文])

付随して行われた単一施設試験では、先の試験と同様の基準で人口統計学的特徴を持つ患者33人が登録されました。33人中13人は、同用量の1日400mgの投与を受けました。その13人における奏効率は、先の有効性試験で観察されたものと類似したものでした。

有害事象(AE)は、試験薬との関連性にかかわりなく報告されました。先の有効性試験では、グレードに関係なく最も頻発した臨床上のAEは、下痢(51%)、疲労感(51%)、悪心(43%)、食欲不振(27%)でした。グレード3か4または5の臨床上のAEには、疲労感(7%)や肺塞栓症(5.4%)などがありました。

生化学検査での異常は、高コレステロール血症(66%)、高トリグリセリド血症(66%)、高血糖(64%)、クレアチニンの増加(45%)が認められました。グレード3以上の生化学検査値の異常は、高血糖、高トリグリセリド血症、高尿酸血症、低血糖、低カリウム血症、低ナトリウム血症、高カリウム血症、高コレステロール血症、低リン血症、クレアチニンの増加などでした。

血液検査での異常は、貧血(54%)、血小板減少症(42%)、低白血球(WBC)数(24%)、低好中球数(14%)でした。それらのほとんどの重症度は、グレード1または2でした。

ボリノスタットを安全に使用するために、患者は十分な水分補給をし、血液生化学検査を治療の最初の2カ月間は2週間ごとに、その後は1カ月ごとに受ける必要があります。また糖尿病患者は、食事と治療薬の調整が必要になるかもしれません。

-----------------
Oonishi 訳
平 栄(放射線腫瘍科)監修 
-----------------

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善の画像

【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験が、無増憎悪生存率と寛解率の有意な改善を示すアブストラクト:LBA-2

イブルチニブ(販売名:イムブルビカ )とベネト...
リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状の画像

リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状

ダナファーバーがん研究所研究概要表題
びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の二次治療、キメラ抗原受容体 T 細胞療法:費用対効果の分析出版物Annals o...
再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望の画像

再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望

オハイオ州立大学総合がんセンターオハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG.ジェイムズがん病院リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC – James)の研究者らが研究している新しい...