FDAが局所進行/転移性尿路上皮がんにエンホルツマブベドチンを承認

202179日、米国食品医薬品局(FDA)は、プログラム細胞死受容体-1PD-1)またはプログラム細胞死リガンド(PD-L1)阻害薬およびプラチナ製剤を含む化学療法による治療歴を有する、またはシスプラチンを含む化学療法が不適応であり1種類以上の治療歴を有する、局所進行または転移性尿路上皮がんの成人患者に対して、ネクチン-4を標的とする抗体と微小管阻害薬の複合体であるエンホルツマブベドチン(販売名:PadcevAstellas Pharma US, Inc.社)を承認した。[エンフォルツマブ]

FDA201912月、PD-1またはPD-L1阻害薬による治療歴があり、術前または術後化学療法として、あるいは局所進行または転移した状態においてプラチナ製剤を含む化学療法歴のある、局所進行または転移性尿路上皮がん患者に対して、エンホルツマブベドチンを迅速承認している。

EV-301試験(NCT03474107)は、2019年の迅速承認の臨床的有用性を確認するために必要な、非盲検、ランダム化、多施設共同試験であった。本試験では、PD-1またはPD-L1阻害薬およびプラチナ製剤を含む化学療法による治療歴のある局所進行または転移性尿路上皮がんの患者608人が登録された。患者は、エンホルツマブベドチン1.25mg/kg28日サイクルの第1815日目に投与する群と、治験分担医師が選択した単剤化学療法(ドセタキセルまたはパクリタキセルまたはvinflunine)を投与する群に11の比率で無作為に割り付けた。

有効性主要評価項目は全生存期間(OS)、主な有効性副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)および全奏功率(ORR)で、RECIST 1.1に基づいて治験分担医師が評価した。OSの中央値は、エンホルツマブベドチン群(n=301)が12.9カ月(95CI10.615.2)であったのに対し、化学療法群(n=307)は9.0カ月(95CI8.110.7)であった(HR 0.7095CI0.560.89p=0.0014)。PFSの中央値は、エンホルツマブベドチン5.6カ月(95CI5.35.8)に対し化学療法群は3.7カ月(95CI3.53.9)であった(HR 0.6295CI0.510.75p<0.0001)。ORRは、エンホルツマブベドチン40.6%(95CI34.946.5)に対し化学療法群は17.9%(95CI13.722.8)であった(p<0.0001)。

シスプラチンを含む化学療法が不適応な患者に対する有効性は、EV-201試験(NCT03219333)のコホート2で評価された。この試験は、PD-1またはPD-L1阻害薬による治療歴がありシスプラチンを含む化学療法が不適応な局所進行または転移性尿路上皮がん患者89人を対象とする単群マルチコホート国際共同試験であった。有効性主要評価項目は、盲検独立中央判定によって評価した確定ORRであり、主な有効性副次的評価項目は奏効期間であった。確定ORR51%(95CI39.861.3)で、うち22%が完全奏効、奏効期間の中央値は13.8カ月(95CI6.4~推定不能)であった。

臨床検査値の異常を含む最もよくみられた副作用(20%以上)は、発疹、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、グルコース増加、クレアチニン増加、疲労、末梢神経障害、リンパ球減少、脱毛、食欲減退、ヘモグロビン減少、下痢、ナトリウム減少、悪心、そう痒症、リン酸塩減少、味覚不全、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、貧血、アルブミン減少、好中球減少、尿酸増加、リパーゼ増加、血小板減少、体重減少、皮膚乾燥であった。

また、スティーヴンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症などを含む重篤な皮膚反応に関する枠組み表記の警告と、肺臓炎に関する警告がUSPI(米国添付文書)に追加された。

エンホルツマブベドチンの推奨用量は1.25mg/kg(最大用量は125mgまで)であり、28日サイクルの第1815日目に30分かけて点滴静注し、疾患の進行または許容できない毒性が認められるまで投与する。

Padcevの全処方情報はこちらを参照。

翻訳担当者 川北みゆき

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

膀胱がんに関連する記事

進行膀胱がんにエンホルツマブ併用療法が新たな選択肢にの画像

進行膀胱がんにエンホルツマブ併用療法が新たな選択肢に

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ2件の大規模臨床試験の結果によると、進行膀胱がん患者に対する有効な治療選択肢が数十年ぶりに増えた。そのうちの1つの治療法、エンホルツマブ ベ...
HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023の画像

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステ...
術後ニボルマブ免疫療法は高リスク膀胱がんに長期的に有益の画像

術後ニボルマブ免疫療法は高リスク膀胱がんに長期的に有益

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ手術で切除できる膀胱がんの一部の患者において、術後すぐに免疫療法を受けることが有効な治療法であることが、大規模臨床試験の更新結果で確認された...
FDAが膀胱がんにアデノウイルスベクターによる遺伝子療法薬を初承認の画像

FDAが膀胱がんにアデノウイルスベクターによる遺伝子療法薬を初承認

2022年12月16日、米国食品医薬品局(FDA)は、乳頭状がんの有無を問わず上皮内がん(CIS)を併発した高リスク カルメット・ゲラン桿菌(BCG)不応性筋層非浸潤性膀胱がんの成人患者を対象...