KRAS標的薬、希少な虫垂がんに対して有望な結果

KRAS標的薬、希少な虫垂がんに対して有望な結果

MDアンダーソン研究ニュース 2026年7月12日

KRASは虫垂がんで最も頻度の高い遺伝子変異であり、最も一般的な組織型である粘液性腫瘍の約80%に認められる。
KRASを標的とする治療法は、初期の前臨床および臨床データにおいて顕著な治療活性を示している
ほとんどの患者で臨床効果が認められ、バイオマーカー値が速やかに低下した。

変異型KRASを標的とする治療法は、虫垂がんに対する有望な新たな治療選択肢となる可能性が、Journal of Hematology & Oncology誌に掲載されたテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究で示された。
 
消化器腫瘍内科に所属するJohn Paul Shen医師(助教)、Saikat Chowdhury博士(講師)、Ichiaki Ito博士(研究員)が率いる研究チームは、虫垂腺がんの進行した前臨床モデルにおいて、KRAS阻害薬が腫瘍増殖を有意に抑制し、がんにおける主要なシグナル伝達経路を阻害するとともに、がん細胞死を誘導することを示した。また、複数の異なるKRAS治療薬による治療を受けた15人の患者からなる臨床コホートでは、評価可能であったすべての患者で、虫垂がんにおける治療効果を評価する上で最も有効な指標である血清腫瘍マーカーの著しい低下が認められた。
 
「虫垂がんには、長い間効果的な全身療法(薬物治療)の選択肢がなく、患者は新たな治療法を切実に必要としています」とShen氏は述べた。「KRAS阻害の今後の可能性に大きな期待を寄せています。今回の研究は、あくまで第一歩に過ぎません」。

KRASとは何か、またがん治療の標的としてどのように利用できるのか?

KRASは、膵臓がん、大腸がん、肺がん、虫垂がんなどの固形腫瘍において、最も頻繁に変異が認められるがん促進遺伝子のひとつである。数十年にわたり、KRASは明確な薬物結合部位が存在しないことや、構造状態を変化させる能力を持つことから、「薬物標的化が困難な」遺伝子と見なされてきた。
 
近年の科学的進歩により、特定の変異型KRASを直接阻害する治療法が開発されている。これには、ソトラシブ(販売名:ルマケラス)やアダグラシブ(販売名:Krazati[クラザティ])などのKRAS G12C阻害薬が含まれる。これらの薬剤は、一部の患者において臨床的有用性を示しており、がん精密医療における大きな進歩となっている。
 
次世代治療薬として、より幅広い種類の変異型KRASを標的とする治療法の開発が進められている。これには、ダラクソンラシブ(daraxonrasib)などのpan-RAS(ON)阻害薬が含まれ、複数のKRAS変異がんにおいて有望な活性が示されている。本研究において、研究者らはダラクソンラシブやG12D選択的阻害薬MRTX1133を含む、複数のKRAS標的治療薬について評価を行った。

本研究において、KRASと虫垂がんに関するその他の主な知見は何か?

本研究では、患者において虫垂がんの主要なマーカーが急速に低下し、治療開始後12週間以内に平均で80%以上減少したことが明らかになった。さらに、高悪性度および低悪性度の腫瘍、さまざまなKRAS遺伝子変異、そして異なるKRAS阻害薬療法のいずれにおいても奏効が認められた。

この研究は、虫垂がんの今後の治療をどのように変える可能性があるのか?

本研究では、臨床的有効性が示されたことに加え、虫垂がんがKRAS阻害薬による治療に対して時間の経過とともにどのように適応していくのかについても検討された。がん細胞は耐性に関連する代替経路を活性化させ、腫瘍微小環境の変化からは、KRAS阻害薬を免疫療法や抗血管新生療法などの他の治療法と組み合わせることで、治療成績を改善できる可能性が示唆された。
 
これらの結果は、初期段階の臨床試験における少数の患者コホートに基づくものであるが、今回の知見は、より大規模な前向き試験の実施を支持するものであり、KRAS阻害を虫垂がん患者に対する有望な新たな治療の方向性として位置づけるものである。
 
本研究は、Col. Daniel Connelly Memorial Fund、Andrew Sabin Family Fellowship、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(CPRIT)、およびAppendix Cancer Pseudomyxoma Peritonei Research Foundation(ACPMP)の支援を受けて実施された。共著者の全リストと開示情報は、Journal of Hematology & Oncology誌に掲載された本論文をご覧ください。

  • 記事担当 青山真佐枝
  • 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
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  • 原文掲載日 2026/07/12

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