ヒストトリプシー(組織破壊療法)が肝腫瘍に新たな希望をもたらす

ヒストトリプシー(組織破壊療法)が肝腫瘍に新たな希望をもたらす

ヒストトリプシーは、ギリシャ語の「histo(軟部組織)」と「tripsy(破壊する)」に由来する名称で、肝腫瘍の治療法として2023年に初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた新しい治療法である。この技術では、超音波を用いてエネルギーを集中させ、腫瘍内に微小な気泡を発生させる。これらの気泡による圧力が高まり、正常な組織を損なうことなく腫瘍組織を破壊する。破壊された腫瘍組織は、その後、体の免疫系によって老廃物として処理される。(*日本の焼灼治療との違いは下部サイト注参照)

現在、ヒストトリプシーによる治療は、ボルチモアのジョンズホプキンス病院で行われている。部門長のRobert Liddell氏や、放射線医学教授兼インターベンショナル・オンコロジー部門ディレクターのChristos Georgiades氏をはじめ、IVR(画像下治療)部門の複数の臨床教員が、この技術の研修を修了した。

この治療は外来で行われ、所要時間はわずか数時間である。そのうち多くは、標的を正確に定めるための機器の調整に充てられる。

処置中の患者の動きを抑えるため、全身麻酔が施される。IVR医は、超音波を用いて腫瘍を可視化し、標的を特定した上で治療する。患者は当日中に帰宅することができ、回復期間も最小限である。

肝腫瘍に対する従来の治療法には、手術やアブレーションがある。アブレーションとは、腫瘍に熱や低温、あるいは化学物質を作用させて腫瘍を縮小させる治療法である。医師は針を用いて腫瘍を凍結または加熱するほか、カテーテルを画像誘導下で動脈系を通じて肝臓の血流に挿入し、腫瘍に化学療法薬を投与することもある。これらの処置はある程度の侵襲性を伴い、より長い回復期間を要することも少なくない。

ヒストトリプシーは、患者にとってより魅力的な選択肢となる可能性がある。この治療は完全に非侵襲的で、針、カテーテル、切開を必要とせず、外来で行うことができる。また、治療後の回復期間もほとんど、あるいはまったく必要ない。

ヒストトリプシーはまだ新しい技術である。ジョンズホプキンスは州内で初めてヒストトリプシーを導入した施設であり、現在もこの地域で同治療を提供する数少ない施設の一つである。

Liddell氏によると、ジョンズホプキンスにおけるヒストトリプシーのもう一つの特徴は、放射線科の管轄下にあることである。他の医療システムでは、この技術を他部門と共同で使用している場合や、腫瘍科が管理している場合が多い。ジョンズホプキンスでは、この機器は放射線科に設置され、Liddell氏とGeorgiades氏の監督下に置かれている。

Liddell氏は、新しい機器の導入を推進しただけでなく、その機器が放射線科内に設置されるよう尽力した放射線科長のKaren Horton氏を高く評価した。

「この件に非常に積極的に取り組んだHorton氏の功績は、とても大きいと思います」とLiddell氏は述べ、さらに「彼女には、この技術を受け入れるだけでなく、放射線科が提供すべきだと見通す先見の明がありました」と付け加えた。

放射線科内でこの治療を提供することは、患者にとって有益である。IVR医はリアルタイム画像を用いた治療にすでに精通している一方、他分野の医師には同程度の経験がない可能性があるためである。

ジョンズホプキンス病院でヒストトリプシーの提供を開始して以来、IVR医らは多くの患者を治療してきた。その大半は肝腫瘍の患者であり、腎腫瘍の患者も1人含まれていた。現在、ヒストトリプシーは肝腫瘍の治療についてのみFDAの承認を受けているが、腎臓への使用に関する臨床試験が進められている。

Georgiades氏によると、これまでのところ、成功率は非常に有望なものとなっている。

「私は非常に期待していますが、まだ初期段階です。初期の結果は心強いものですが、長期的なデータはまだ得られていません」とGeorgiades氏は説明する。

「これは、ジョンズホプキンスのIVR医やがん治療医にとって、新たな治療手段の一つです」とLiddell氏は説明した。「手術、放射線療法、化学療法に加わる治療手段であり、新たな選択肢となるものです」。

Georgiades氏によると、わずか数カ月の間に一部の腫瘍が完全に退縮した例も確認されたという。ただし、治療対象となる患者の選定にはいくつかの制約があることも強調する。

現在、対象となる患者は、超音波で容易に描出できる肝臓の部位に、4センチメートル未満の小さな腫瘍が1個、または少数あることが条件となる。超音波は空気や骨を透過しにくいため、肺、胸部、脳、骨盤深部などにある腫瘍には適していない。大きな腫瘍や多数の腫瘍がある患者、あるいは腫瘍が肋骨に隠れていたり、腫瘍に腸管が重なっていたりする患者は、現時点ではヒストトリプシーの適応になりにくい。

Liddell氏によると、この技術による治療に最も適した腫瘍の一般的な条件は、「小さく、超音波で捉えやすく、数が少ない」ことである。

ヒストトリプシーの将来は明るい。現在、世界各地の研究で、腎腫瘍の治療におけるこの治療法の有効性が検討されている。FDAは、2025年末または2026年初めまでにこの用途においてヒストトリプシーを承認すると見込まれている。研究者らは、甲状腺、膵臓、子宮の腫瘍や、筋肉および脂肪に生じる軟部組織腫瘍など、その他の治療対象となり得る腫瘍の評価にも精力的に取り組んでいる。現在、動物モデルを用いた研究が進められている。

初期の前臨床試験の結果は有望であり、この技術によって、近くの正常な組織構造を損傷することなく、治療対象となる部位を狙えることが実証されている。

研究者らは、脳腫瘍への使用など、さらに高度な応用にも取り組んでいる(超音波を遮断・吸収する頭蓋骨による骨の干渉が問題となり、適用が複雑である)。

ヒストトリプシーは「奇跡の治療法」ではないものの、他の治療法(多くの場合、はるかに侵襲性が高い)を試してもほとんど効果が得られなかった患者にとって、有望な治療法である。現在、医師はこの治療を行う患者をきわめて慎重に選んでいるが、技術が急速に進歩していることから、ヒストトリプシーの利用は今後も発展していく可能性が高い。

Georgiades氏は最後に、「ヒストトリプシーは、一部の患者にとって、まさに新たな希望となる治療です」と締めくくった。
(『Radiology Update』2025–2026年冬号掲載)

原文ページ 画像解説訳
【画像1枚目(上部)】 画像下治療室でヒストトリプシー装置の実演を行うRobert Liddell氏とChristos Georgiades氏
【画像2枚目(中ほど)】 ヒストトリプシーは、超音波を用いて腫瘍を破壊する非侵襲的な治療法である。

【*サイト注】 日本の焼灼との違い
日本で行われている肝腫瘍の焼灼治療RFA(ラジオ波)・MWA(マイクロ波)が標準治療で、針を刺して熱で組織を凝固壊死させる。一方、ヒストトリプシーは針を刺して焼くのではなく、体外からの超音波でマイクロバブルを発生させ、その膨張・崩壊の機械的な力で腫瘍を破砕・液状化させる非侵襲的な新技術。
日本ではまだ保険承認されておらず、大阪公立大学が国内初の特定臨床研究を開始した。参考:大阪公立大学リリース 2026年6月30日)

  • 記事担当 平沢沙枝
  • 監修 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
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  • 原文掲載日 2025/12/01

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