【AACR2025】BRAF阻害薬配合の塗り薬が、大腸がんのEGFR阻害薬治療によるざ瘡様皮疹に効果
大腸がん患者に生じたざ瘡様皮疹(ざそうようひしん)に対し、試験中の外用BRAF阻害薬LUT014ジェルを使用したところ、プラセボジェルを使用した場合と比較して皮疹の改善がより多くみられたことが、第2相試験の結果から明らかとなった。2025年米国癌学会(AACR)年次総会(2025年4月25~30日)で報告された。
上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする治療薬は、大腸がんをはじめ、数種のがんに対して承認されているが、こうした治療を受けた患者の最大75%に、痛みやかゆみを伴うざ瘡様皮疹と呼ばれる皮膚毒性が発現することが報告されていることを、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの皮膚科准教授、皮膚科研究担当副部長、皮膚毒性部門の責任者を務めるAnisha B. Patel医師は述べた。
「ざ瘡様皮疹によって、EGFR阻害薬による治療が、中断、用量減量、投与延期となることが少なくありません」「そのため、この皮疹を上手く管理できれば、治療継続性が高まり、がんをより適切にコントロールできる可能性があります」とPatel氏は言う。
EGFRを標的とした抗がん剤を投与すると、皮膚を含む複数の臓器においてEGFRの活性と下流のシグナル伝達が阻害される。皮膚細胞では、続いて細胞の機能障害が炎症反応を引き起こし皮疹となる、とPatel氏は説明する。BRAFタンパク質を阻害すると、逆説的にEGFRの下流シグナルを再活性化することが知られている。したがって皮疹の発現部位において局所的にBRAFを阻害することで皮膚のEGFR阻害の影響を打ち消し、皮疹の症状を軽減できるのではないかとPatal氏らは考えた。
この仮説を検証するため、同氏らは、セツキシマブ(販売名:アービタックス)やパニツムマブ(販売名:ベクティビックス)などのEGFR標的抗体の投与中にグレード2または3のざ瘡様皮疹を発症した大腸がん患者118人を対象に、LUT014ジェルの有効性を評価する多施設共同第2相臨床試験を実施した。
患者は無作為に、LUT014ジェル0.03%投与群、0.1%投与群、またはプラセボ群に割り付けられた。ジェルは皮疹部位に28日間毎日塗布された。治療成功の定義は、28日間の期間終了時までに、皮疹の重症度が1グレード以上改善すること、または皮膚に関連する健康関連QOL(生活の質)指標のうち5以上で改善が認められることであった。
プラセボ群の患者と比べて、0.1% 投与群は、治療成功率において有意に高い結果を示した(プラセボ群の成功率33%に対し、0.1% 群は69%)。0.03%群における治療成功率は47.5%で、数値的にはプラセボより高かったものの、統計的に有意な差は認められなかった。
LUT014を投与された患者において、治療関連有害事象としてかゆみ、灼熱感、皮膚の赤み、および投与部位の刺痛が報告された。プラセボジェルを投与された患者では、塗布部位の灼熱感、皮膚刺激、刺痛など同様の副作用が観察された。LUT014を投与された患者の多くの副作用はグレード1であり、0.1% 群の1例とプラセボ群の3例でグレード3の副作用が観察された。
「LUT014は、LUT014による治療を受けた患者さんの大多数において、28日以内という非常に短期間でざ瘡様皮疹を改善しました」とPatel氏は述べた。「この試験段階にある外用BRAF阻害剤は、EGFR標的療法を受けている患者さんの生活の質を改善するだけでなく、がん治療の遵守率を向上させ、奏効率を改善する可能性もあります」。Patel氏はさらに、次のステップとしてLUT014を第3相試験で評価していく予定だと付け加えた。
LUT014は、ざ瘡様皮疹の症状に類似した皮膚反応を引き起こしたが、Patel氏は、これらの副作用は、炎症を起こした皮膚に外用剤を塗布した際に通常見られるものと一致しており、発疹の症状より改善されたものであると説明した。
「私たちの治療成功の指標は、生活の質における臨床上の有意な改善など複合的なアウトカムです。したがって、患者さんがざ瘡様皮疹の症状と重なる副作用を経験したとしても、患者さんの生活の質は総合的に見て改善されたと言えます」とPatel氏は述べた。
本試験の限界は、対象はEGFR標的抗体で治療中の大腸がん患者に限定されており、他のがん種やEGFRキナーゼ阻害薬を使用した患者への有効性は不明であること、また、追跡期間が短く、EGFR治療の遵守状況への影響を十分に評価することはできなかったことである。探索的解析ではLUT014が治療の遵守率を高めた可能性が示唆されたが、今回の試験は遵守率を評価するよう設計されておらず、Patel氏は注意を促している。
*本研究の情報開示については、原文を参照のこと。
- 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
- 記事担当者 平沢沙枝
- 原文を見る
- 原文掲載日 2025/04/27
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
大腸がんに関連する記事
【AACR2025】リキッドバイオプシー検査で、切除可能大腸がんの再発を画像診断前に検出
2025年5月29日
若年層のがん罹患率増加の理由を追究
2025年6月3日
FDA承認により、一部の進行大腸がんの初回治療が変わる可能性
2025年5月26日
dMMR固形がんに対してctDNA有無に基づく術後PD-1阻害薬が効果を示す
2025年5月12日