【ASCO2025】ダナファーバー②乳がん薬の用量漸増、頭頸部がん、脳転移に定位放射線、若年(AYA)がん

【ASCO2025】ダナファーバー②乳がん薬の用量漸増、頭頸部がん、脳転移に定位放射線、若年(AYA)がん

以下の研究結果は、2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。【ASCO2025 】ダナファーバー①はこちら

実践に役立つ研究で、新たな治療戦略ががん治療の効果を損なうことなく生活の質を向上させる可能性があると示唆

投与戦略で、早期HR+/HER2-乳がんにおけるアベマシクリブの副作用と投与中止を減らす

ダナファーバー乳がん臨床研究ディレクターのErica Mayer医師は、ダナファーバーが主導する医師主導第2相TRADE試験のデータを発表する。この試験は、術後補助療法としてホルモン療法薬と併用するCDK4/6阻害薬アベマシクリブの用量漸増戦略により、より多くの患者がアベマシクリブの望ましい用量に至り、それを維持して、治療中止となる人を減らせると示唆している。本試験で示された投与戦略は、ホルモン受容体陽性HER2陰性早期乳がん患者にアベマシクリブを開始する際の臨床現場での検討材料となる可能性がある。

試験タイトル:TRADE試験:早期HR+/HER2-乳がんにおけるアベマシクリブの用量漸増の忍容性を評価する第2相試験
口頭発表アブストラクト番号:517
セッション:迅速口頭発表アブストラクト・セッション「乳がんー局所/領域/術後化学療法」 2025年6月1日午前10時12分
発表者:Erica Mayer医師(公衆衛生学修士)
統括著者:Sara Tolaney医師(公衆衛生学修士)

血漿中循環腫瘍HPV DNAの使用は、特定の高リスク頭頸部がん患者に対する治療強度緩和療法の適応を示唆する可能性

がん治療イノベーションセンター長のGlenn Hanna医師が発表する第2相試験のデータは、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性中咽頭がんの治療前および治療中に、HPV DNAをバイオマーカーとして用いることで、高リスク患者の無増悪生存期間を損なうことなく治療強度決定の指標となり得ることを示唆するものである。低リスクに分類され、de-escalated treatment(治療効果を損なうことなくより治療強度を下げる治療)を受けた患者の90%以上が2年間無増悪生存を達成した。これには、当初、高リスクに分類され、後にHPV DNAの消失に基づいて再分類された患者も含まれている。現在、標準レベルの化学療法と放射線療法の同時併用療法は良好な転帰を示しているが、長期的な副作用を引き起こす可能性もある。この治療強度緩和戦略とバイオマーカーを用いたアプローチについては、さらなる研究が必要である。

試験タイトル:ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性中咽頭がん患者におけるHPV循環腫瘍DNAに基づくリスク適応型治療(ReACT 1.0)
口頭発表アブストラクト番号:6009
セッション:臨床科学シンポジウム「バイオマーカーに基づく適応型治療:頭頸部がんの新たな展望」、2025年6月2日午後4時12分
発表著者:Glenn J. Hanna医師
統括著者:Jonathan D. Schoenfeld 医学博士(公衆衛生学修士) 

多発性脳転移患者に対する定位放射線療法は全脳放射線療法よりも優れている

ダナファーバー・ブリガムがんセンター中枢神経系放射線腫瘍科長のAyal Aizer医師は、5~20個の脳転移を有する患者において、定位放射線療法(SRS)が海馬回避型全脳放射線療法(HA-WBRT)よりも優れた治療成績をもたらすことを実証した第3相試験のデータを発表する。固形腫瘍から脳に転移した患者196人を対象とした本試験では、SRSによって症状の負担と日常生活への支障が有意に軽減されることが示された。また、SRSを受けた患者は、HA-WBRTを受けた患者と比較して、パフォーマンスステータス(PS)、日常生活動作能力、および神経認知機能の転帰が良好であった。これらの結果は、この患者集団に対する新たな標準治療としてのSRS採用を裏付けている。

試験タイトル:脳転移5~20個を有する患者における定位放射線療法と海馬回避型全脳放射線療法の比較:多施設共同第3相ランダム化試験
口頭発表アブストラクト番号:2011
セッション:臨床科学シンポジウム 「中枢神経系腫瘍学における局所療法の改良:標的直撃を目指す」 2025年6月1日午前11時33分
発表著者:Ayal Aizer医師(MHD)
統括著者:Rifaquat Rahman医師

支持療法は進行がんの若年成人および思春期世代の生活を改善

進行がんを患う思春期世代・若年成人に対する心理社会的介入は、レジリエンスを即座に向上させ、長期的には生活の質を改善

ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センター小児緩和ケア部長のAbby Rosenberg医師が試験結果を発表するランダム化試験では、心理社会的介入「進行がんのストレスマネジメントにおけるレジリエンス促進(PRISM-AC)」が、進行がんを患う思春期世代・若年成人のレジリエンスと希望を即座に向上させ、1年間かけて生活の質と不安を徐々に改善した。患者は通常ケアまたは介入のいずれかを受けた。ここでの介入は、ストレス管理、目標設定、認知リフレーミング、意味づけに関する4つのスキル構築セッションと、ケアの好みや優先順位を伝えることに焦点を当てたオプションセッションで構成される。PRISM-ACは、進行がんを患う若年者の心理社会的苦痛と生活の質の低下に対処するのに役立つ可能性がある。

試験タイトル:ストレスマネジメントにおけるレジリエンスの促進(PRISM):進行がんを患う思春期世代および若年成人に対する心理社会的介入のランダム化比較試験
口頭発表アブストラクト番号:10009
セッション:口頭発表アブストラクト・セッション「小児腫瘍学II」 2025年6月2日午前9時
発表著者:Abby Rosenberg医師、理学修士
統括著者:Joyce P. Yi-Frazier博士

▼監修 パーキソン理咲 (血液内科)
▼記事担当者 山田登志子
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▼原文掲載日 2025/05/23

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