バイオシミラーの開発促進と医薬品コスト削減に向けた指針を発表

バイオシミラーの開発促進と医薬品コスト削減に向けた指針を発表

米国食品医薬品局(FDA)は本日、バイオシミラー医薬品の開発を、より迅速かつ低コストで行うための重要な指針を発表した。バイオシミラーは、重篤かつ慢性の疾患を治療するバイオ医薬品の低価格な”ジェネリック”である。

FDAは新たな指針案で、バイオシミラリティ研究の簡略化と不要な臨床試験の削減に向けた大幅な更新を提案している。また別の取り組みとして、バイオシミラーを先発バイオ医薬品と置換可能な薬として開発を進めやすくし、患者や薬剤師が低コストの選択肢をより容易に選べるように支援する。

米国では高額なバイオ医薬品は処方全体のわずか5%にすぎないが、2024年の総医薬品費用の51%を占めている。FDA承認済みのバイオシミラーは、先発医薬品と同様に安全かつ有効であるが、市場シェアは20%未満にとどまっている。これまでにFDAは76種類のバイオシミラーを承認しており、これは承認済みバイオ医薬品のごく一部である。これに対して、承認済みジェネリック医薬品は3万種類を超え、承認済み先発薬を上回っている。今後10年で特許が切れると予想されるバイオ医薬品のうち、バイオシミラーが開発中のものは約10%にすぎない。

「本日のバイオシミラー改革の発表は、トランプ大統領による米国民の医薬品価格引き下げの指示を推進するものです」と米国保健福祉省(HHS)長官ロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.)氏は述べている。「バイオ医薬品は多くの慢性疾患を治療しますが、煩雑な承認プロセスが、より手頃なバイオシミラーへの患者アクセスを長らく妨げてきました。FDAのこの大胆な措置は、バイオシミラー開発を加速し、市場競争を促進し、患者の選択肢を拡大し、『アメリカを再び健康に(Make America Healthy Again)』という使命を前進させます」。

「バイオシミラーは患者にとってはるかに手頃であり、米国の医療費を大幅に削減する可能性があります」とFDAコミッショナーのMarty Makary医師・公衆衛生学修士は言う。「バイオシミラー開発プロセスを効率化し、置換可能性を促進することで、がん、自己免疫疾患、希少疾患など、非常に多くのアメリカ人が抱える疾患に対する先進治療のコストを大幅に削減できます」。

「科学は進化を続けており、FDAは安全性と有効性を損なうことなく、効率的かつ効果的なバイオシミラーおよび置換可能バイオシミラーの開発をさらに促進する、合理的な政策の推進に引き続き尽力していきます」とFDA医薬品評価研究センター所長のGeorge Tidmarsh医学博士は述べる。

本日発表されたFDAの新指針案「参照製品に対するバイオシミラリティを科学的に評価する方法:比較有効性試験の必要性評価に関する最新の推奨事項」は、2015年に最初のバイオシミラーが承認されて以来のFDAの蓄積データと経験に基づくものである。比較有効性試験は1-3年を要し、平均で2400万ドルの費用がかかるにもかかわらず、多くの他の分析評価に比べて感度は低い。FDAの新指針では、不必要で多大な手間がかかる比較ヒト臨床試験を行う要件を削減し、開発者が分析試験に基づいて製品の違いを確認できるようになる。

現在、一部の状況では、置換可能として認可されたバイオシミラーに対して「スイッチング試験」が実施されることがあるが、これはジェネリック医薬品では必要とされないステップである。これらの追加試験は開発を遅らせ、バイオシミラーの安全性に関する公衆の混乱を招く可能性がある。FDAは現在、スイッチング試験を一般的には推奨していない。

バイオシミラーの承認経路は、2010年に議会によって制定されたバイオ医薬品価格競争・革新法(BPCIA)により、高額バイオ医薬品が大半を占める市場での競争を促進する目的で設けられた。それ以来、FDAは76種類のバイオシミラーを承認しており、がん、関節リウマチ、糖尿病、クローン病、骨粗鬆症などの疾患に対して米国民に追加の治療選択肢を提供している。

FDAは、本日の措置により、より多くの企業が手頃で高品質なバイオシミラーを市場に投入し、米国民の医薬品コストを削減できるよう支援することを目指している。

参考資料「ファクトシート:低コストのバイオシミラー医薬品を米国の患者に」

  • 監修 高光恵美(生化学、遺伝子解析)
  • 記事担当者 平沢沙枝
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  • 原文掲載日 2025/10/29

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