HER2+乳がん、術前イネテタマブ+ピロチニブで高い病理学的完全奏効率
ASCOの見解(引用)
本研究は、HER2陽性局所進行乳がん患者において、著しく高い病理学的完全奏効率を達成した新たなHER2標的併用療法の将来性に焦点を当てています。これは特に腫瘍負荷が高く、ホルモン受容体陰性の患者にとって有望なものですが、単群第2相試験の結果によるものです。この戦略が広く適用されるようになるには、トラスツズマブ(販売名:ハーセプチン)やペルツズマブ(販売名:パジェータ)を基本とするレジメン、さらには最近承認されたトラスツズマブ・デルクステカンといった現在の標準治療と、このアプローチを比較するランダム化研究が不可欠となるでしょう」と、Rebecca Alexandra Dent医師(シンガポール国立がんセンター副最高経営責任者(臨床担当)兼シニアコンサルタント、ASCO乳がん専門家)は述べた。
研究概要
| 焦点 | HER2陽性局所進行(HER2+)乳がん患者に対する術前補助療法として、新規併用療法inetetamab[イネテタマブ]およびpyrotinib[ピロチニブ]を評価した。 |
| 対象者 | 中国の7つの医療機関において、腫瘍負荷が高い2期から3期の遠隔転移のないHER2陽性乳がん患者124人 |
| 主な結果 | HER2陽性局所進行乳がん患者において、新規HER2標的薬であるイネテタマブおよびピロチニブを用いた術前補助療法により、手術前に腫瘍が消失した。 |
| 意義 | ●世界保健機関(WHO)によると、2022年には世界中で推定230万人が乳がんと診断され、70万人近くがこの病気で死亡した。 ●乳がんの約15%から20%はHER2陽性である。 ●トラスツズマブとペルツズマブは、HER2陽性乳がんの治療に広く用いられているHER2を標的とするモノクローナル抗体である。 ・HER2陽性乳がん患者の22%から25%において、トラスツズマブとペルツズマブは最終的に奏効しなくなる。 ●この臨床試験で使用された2つの薬剤は中国で開発されたものであり、米国食品医薬品局(FDA)では承認されていない。 ・イネテタマブは、HER2シグナル伝達を阻害し、トラスツズマブよりも強力な抗がん免疫応答を誘導する、HER2を標的とする新規モノクローナル抗体である。 ・もう1つの新規HER2標的療法薬であるピロチニブは、HER2に不可逆的に結合し、がんの増殖や生存に重要なシグナルの伝達を阻害する低分子阻害剤である。 ●イネテタマブとピロチニブは、転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象とした臨床試験において、安全性と有効性が確認されている。現在まで、これら2剤を併用して、遠隔転移のないHER2陽性乳がんに対する術前補助療法として検討されたことはなかった。 |
中国で実施された単群第2相試験「neoPICD」において、HER2陽性局所進行乳がん患者に対し、新規HER2標的薬であるイネテタマブとピロチニブを用いた術前補助療法により、手術前に腫瘍が消失したことが確認された。この研究結果は、6月25日から27日までシンガポールで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)ブレイクスルー会議で発表される。
研究について
「このレジメンは良好な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示しており、腫瘍負荷の高い局所進行疾患の患者にとってより良い選択肢となり、それによって現在の治療環境における重要な満たされていないニーズに応えるものです」と、中国・温州にある温州医科大学第一附属病院乳腺外科のChenghui Yang氏は述べた。
第2相neoPICD試験には、腫瘍負荷の高い2期から3期の遠隔転移のないHER2陽性乳がん患者124人が登録された。本試験は単一群設計であったため、全参加者がイネテタマブ、ピロチニブ、およびドセタキセルとカルボプラチンの併用化学療法という同一の治療レジメンを受けた。参加者は18週間にわたりこの併用術前補助療法を受け、その後2~4週間後に手術を受けた。その後もイネテタマブとピロチニブの投与を継続し、1年間の治療を完了した。
主な知見
登録された124人の患者のうち、108人のデータが治療効果の評価対象となった:
・外科的に切除された乳房およびリンパ組織から活発ながん細胞が検出されなかったことから、参加者の60.2%で病理学的完全奏効が認められた。
・参加者の65.7%において、外科的に切除された乳房組織に残存がん細胞が認められず、乳房の病理学的完全奏効が認められた。
・患者の92.6%において、腫瘍が部分的または完全に縮小した(客観的奏効率)。
・全参加者の100%において、腫瘍の大きさが変化しなかった、部分的に縮小した、または完全に消失した(疾患制御率)ことが確認された。
・ホルモン受容体陰性(HR-)の腫瘍を有する参加者は、HR+の腫瘍を有する参加者よりも治療効果が大きい可能性が示された。病理学的完全奏効の割合は、それぞれ73.3%対43.8%であった。
・また、病期が早期の患者、腫瘍が小さい患者、あるいは転移の可能性を示す高い増殖率を示す腫瘍を有する患者、および閉経周辺期の患者においても、本治療に対する反応が良好であった。
・最もよく見られた有害事象は、下痢、貧血、悪心・嘔吐、および食欲減退であった。治療に関連する死亡例は認められなかった(データはASCOブレイクスルーで発表)。
次のステップ
研究者らは、試験参加者に関する長期データを収集し、全生存期間などの転帰を分析する計画である。また、HER2陽性乳がんに対して、この併用療法が分子レベルでどのように作用するかをさらに解明することにも関心を持っている。イネテタマブ/ピロチニブとトラスツズマブ/ペルツズマブを比較する、より大規模な第3相ランダム化対照試験の実施も検討されている。
本研究の資金は、温州医科大学から提供された。
- 記事担当 佐藤美奈子
- 監修 東海林洋子(薬学博士)
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- 原文掲載日 2026/06/23
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