【SABCS25】マルチモーダルAIモデルは早期乳がんの再発リスク層別化を改善する可能性

【SABCS25】マルチモーダルAIモデルは早期乳がんの再発リスク層別化を改善する可能性

HR陽性/HER2陰性乳がんにおける再発予測において、Oncotype DX 21遺伝子再発スコアよりも優れた予後情報を提供する新モデル

臨床データ、分子データ、組織病理学的データを統合して構築された人工知能(AI)モデルは、ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性乳がんにおける再発リスク層別化を大幅に改善した。この研究結果は、2025年12月9日から12日にかけて開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

HR陽性/HER2陰性乳がんは乳がんの中で最も一般的なサブタイプであり、このサブタイプにおける全再発例の少なくとも50%は診断から5年以上経過後に発生すると、Joseph A. Sparano医師(マウントサイナイ・ティッシュがんセンター血液腫瘍科部長)は説明した。Oncotype DX(ODX)21遺伝子再発スコアは、遠隔再発の予後情報と化学療法効果の予測情報を提供する単一モダリティ分子検査であり、臨床現場で広く使用されているが、5年経過後の再発予測能力には限界があるとSparano医師は指摘した。

「私たちの目標は、TAILORx試験の腫瘍検体を研究することで、遅発性再発リスクを含む再発リスクのより優れた予後推定を提供する新たな診断検査を開発することでした」とSparano医師は言う。「私たちは、日常的な病理評価に使用されるデジタル化スライドの画像と、乳がんの分子的・臨床的特徴の両方を評価するAIモデルを開発しました。これにより、診断後5年以内の早期再発から5年以降の遅発性再発まで、最長15年間にわたるがん再発リスクに関するより優れた予後情報を提供できます」。この取り組みには、ODXなど商品化されている5種類の遺伝子検査から得られた遺伝子パネルを拡張した、新たな分子検査の開発が含まれていた。

研究チームは、TAILORx試験参加者から得られた4,462例の腫瘍サンプルのデジタル化組織画像および分子RNA発現データ、ならびに対応する臨床データを用いた。これらのデータを用いて複数のリスクモデルをトレーニング/検証した。モデルの予後予測性能は、試験で化学療法の適応判断に用いられたODX結果の性能と比較され、コンコーダンス指数(C-index)を用いて評価された。C-indexとは、診断検査が再発リスクを正しくランク付けする能力を測定する統計的検定である。C-indexが0.5の場合、検査の性能は偶然のレベルに過ぎないことを示し、C-indexが1の場合、完全な予後予測能力があることを示す。

病理画像(I)、臨床(C)、拡張分子(M+)モデルを統合したマルチモーダルモデルであるICM+は、患者2,806人を含むトレーニング/5分割交差検証セットで、ODXと比較して、15年後の全遠隔再発(C-index 0.705 vs. 0.617)および5年後の遅発性再発(C-index 0.656 vs. 0.518)において有意に優れた性能を示した。ICM+は、患者1,621人を含むホールドアウト検証セットでも、ODXと比較して、全再発(C-index 0.733 対 0.631)および遅発性遠隔再発(C-index 0.705 対 0.527)において、優れた予後予測性能を示した。

この研究の知見は最終的には、米国の乳がん患者の約半数を占めるHR陽性/HER2陰性/リンパ節転移陰性乳がん女性の再発リスクをより確実に推定する新たな診断検査の利用可能性につながるだろうとSparano医師は説明した。

「本研究は、AIを活用して再発リスクをより正確に推定し、治療決定を個別化する優れた診断検査を開発する可能性を示しています」とSparano医師は言う。現在利用可能な分子検査は、中央検査機関で実施されるか、CLIA認定の地域検査機関で実施されるかにかかわらず、高度な機器と技術的専門知識を必要とすると同医師は指摘する。「臨床現場で日常的に出される組織標本スライドの評価に基づくAIベース病理診断ツールは、スキャナーや普通のスマートフォンで撮影したデータをアップロードすれば、最小限のコストで集中的な解析が可能です」。

本研究の限界は、化学療法の有益性や5年を超える補助ホルモン療法継続の有益性を予測する検査の開発を目的として設計されていない点だと、Sparano医師は述べた。

*本研究の開示情報については原文を参照のこと。

  • 監修 石井一夫 (計算機統計学/公立諏訪東京理科大学)
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  • 原文掲載日 2025/12/10

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