【ASCO2025】サシツズマブ ゴビテカン、一部のPD-L1陽性乳がん(TNBC)でがんの進行なく延命効果
ASCOの見解(引用)
「サシツズマブ ゴビテカンを転移性トリプルネガティブ乳癌患者の初回治療としてペムブロリズマブと併用した場合、化学療法+ペムブロリズマブと比較して、優れた病勢コントロールと少ない副作用が得られることが本試験で示された」と、Jane Lowe Meisel医師(FASCO、エモリー大学医学部ウィンシップがん研究所・乳腺腫瘍学共同ディレクター、ASCO乳がんエキスパート)は述べた。
試験要旨
焦点 | 切除不能な局所進行または転移PD-L1陽性トリプルネガティブ乳がん(TNBC) |
対象者 | 26カ国443人の患者 |
主な結果 | サシツズマブ ゴビテカン(販売名:トロデルビ)は、切除不能な局所進行または転移PD-L1陽性TNBC患者の一部において、現在の標準療法である化学療法+ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)と比較して、がんが進行せず生存する期間の延長に役立つ。 |
意義 | ・ 米国では乳がんの約10%がトリプルネガティブである。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、治療の指針となる乳がんで最も多くみられるバイオマーカーの多くを持たず、腫瘍が大きいことが多く、遠隔部位への再発率が高いため、他の乳がんタイプに比べて治療が困難である。 TNBCは、黒人患者およびBRCA1遺伝子変異を有する患者において多くみられる。 ・ TNBC腫瘍の約40%がプログラム死リガンド1(PD-L1)タンパク質を発現している。 ・ PD-L1陽性の局所進行性および転移性TNBCに対する現在の標準治療は、化学療法とペムブロリズマブの併用療法である。このように治療オプションが最近進歩したにもかかわらず、PD-L1陽性TNBCの生存率は依然として低く、3年以上生存する患者は約36%に過ぎない。 ・ サシツズマブ ゴビテカンは、切除不能な局所進行性および転移性TNBCの3次治療以降の治療薬として、すでに米国食品医薬品局(FDA)から承認されている。 ・ 本試験は、Trop-2抗体薬物複合体とチェックポイント阻害薬の併用が、この患者集団に対する初回治療として優れていることを証明した初めての第3相試験である。 |
国際共同第3相臨床試験の結果、サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ併用療法は、切除不能な局所進行性または転移性のPD-L1陽性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、化学療法+ペムブロリズマブ併用療法と比較して、がんが進行することなく生存できる期間が延長することが示された。本研究は、5月30日から6月3日までシカゴで開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。
試験について
「転移性トリプルネガティブ乳がん患者はかなりの割合で、健康状態の悪化や死亡などさまざまな理由で一次治療以降の治療を受けておらず、一次治療として満足できる選択肢がないことを示しています」と、本研究筆頭著者であるSara M. Tolaney医師(MPH、マサチューセッツ州ボストンのダナファーバーがん研究所)は述べた。
ASCENT-04/KEYNOTE-D19臨床試験は、切除不能な局所進行性または転移性のPD-L1陽性TNBC患者に対する一次治療として、サシツズマブ ゴビテカンとペムブロリズマブ併用を検討するためにデザインされた。サシツズマブ ゴビテカンは抗体薬物複合体である。この種の標的療法では、抗体に抗がん薬を結合させる。抗体はがん細胞上に存在する特定のタンパク質に薬剤を運ぶ。サシツズマブ ゴビテカンは、腫瘍細胞上に存在するTrop-2と呼ばれるタンパク質を標的とする。
この試験には26カ国から443人の患者が登録された。参加者の属性は2つの治療群間で均衡が取れており、転移性TNBCと診断された人々の特徴と一致していた。患者は、サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ投与群(221例)または化学療法+ペムブロリズマブ投与群(222例)に無作為に割り付けられた。いずれの治療も、がんが進行するまで、あるいは副作用のために治療を中止する必要が生じるまで行われた。
主な知見
- 追跡期間中央値14カ月後、サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ投与群の無増悪生存期間は11.2カ月であったのに対し、化学療法+ペムブロリズマブ投与群では7.8カ月であった。
- サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ投与群は、化学療法+ペムブロリズマブ投与群と比較して、がんの進行リスクが35%低かった。
- 奏効期間中央値は、サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ群16.5カ月、化学療法+ペムブロリズマブ群9.2カ月であった。
サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ群で最も多くみられたグレード3および4の有害事象は、好中球減少症(43%)および下痢(10%)であった。 化学療法+ペムブロリズマブ群で最も多くみられたグレード3および4の有害事象は、好中球減少症(45%)、貧血(16%)、血小板減少症(14%)であった。
次のステップ
研究者らは、サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ併用療法を受けた患者において、対照群と比較して全生存期間が延長したかどうかの理解を深めるために、これらの患者の追跡調査を継続する予定である。この薬剤併用療法は、ヒト上皮成長因子受容体(HER2)陰性転移性乳がん、早期TNBC、ホルモン療法後のホルモン受容体陽性/HER2陰性転移性乳がんの患者でも研究されている。
ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験はGilead Sciences社から資金提供を受けた。
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/05/31
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