小児のFGFR変異陽性神経膠腫に承認済み標的療法が有望
本試験の結果は、すでに承認されている分子標的治療薬が、FGFR遺伝子変異陽性神経膠腫小児患者にとって有益である可能性を示している。
小児脳腫瘍の中で最も多い神経膠腫の小児患者の8.9%が、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリーのタンパク質に変化を有しており、FGFRを広範囲に阻害する、米国食品医薬品局(FDA)承認済み既存阻害薬に対して、これらの神経膠腫が感受性がある可能性があることがダナファーバーがん研究所とブロード研究所の共同研究で判明した。
この研究は、これらの腫瘍、特に小児低悪性度神経膠腫(pLGG)に対する標的治療の可能性を示すものであるが、さらに研究を進め、これらの治療法の有効性を改善し、小児臨床試験で検証する必要がある。現在のところ、FGFR遺伝子変異を有する小児神経膠腫に特化したFDA承認済み治療法や臨床試験はない。
「この研究は、ジミー・ファンド・クリニックで私たちが診ている患者や世界中の他の患者たちが原動力となっています。FGFR変異陽性小児神経膠腫と診断され、既存の標的治療薬が選択肢となり得るかどうかを知りたがっている患者たちです」と、ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターの医師兼研究者であり、ブロード研究所研究員である共同上席著者Pratiti (Mimi) Bandopadhayay(MBBS)博士は言う。「この研究結果は、今現在、医療機関で治療を求めているFGFR変異陽性神経膠腫の子どもたちへの効果を見通せるようになりました」。
この研究は本日、Nature Communications誌に掲載された。
ダナファーバーにおける同様の研究は、小児BRAF変異陽性神経膠腫に対するトボラフェニブ[tovorafenib]の最近の承認につながった。「私たちはこの研究と同じ戦略をとっていますが、今回はFGFR変異陽性小児神経膠腫に焦点をあてています」とBandopadhayay医師は言う。「それは家族にとって喫緊の領域なのです」。
ダナファーバーの病理医であり、ブロード研究所の準メンバーでもあるKeith Ligon医学博士も主導する本研究では、あらゆる年齢層にわたる既存の3つのデータセットから11,635例の神経膠腫についてゲノム解析が行われた。その結果、小児神経膠腫の8.9%にFGFR変異が認められた。最も多く認められた変異はFGFR1およびFGFR2遺伝子にあり、点変異と構造変異の両方が含まれていた。研究チームは、FGFR1変異陽性小児低悪性度神経膠腫がFGFR変異陽性小児神経膠腫の中で最も頻度の高いタイプであると結論づけた。
共同筆頭著者のApril Apfelbaum博士とEric Morin医学博士は、Bandopadhayay研究室のポスドク研究員であり、ゲノムデータを活用して、生きたFGFR変異神経幹細胞の球状集合体からなるFGFR変異神経膠腫のモデルを世界で初めて開発した。彼らはこのモデルを用いて、FGFR変異が神経膠腫の発生を誘発することを明らかにした。
前臨床段階の動物モデルでFGFR阻害薬を試験したところ、腫瘍は阻害薬に感受性を示した。
「これは、既存のFGFR阻害薬がFGFR変異陽性小児神経膠腫に対して有効な治療薬となる可能性を示す最初の前臨床データです」とApfelbaum博士は言う。
研究チームは、前臨床モデル試験に続いて、FGFR阻害薬による治療を受けたFGFR変異陽性小児神経膠腫患者の少数の症例を後ろ向きに調査した。その結果、小児低悪性度神経膠腫(pLGG)患者はこれらの薬剤による治療後、しばしば病勢が安定することが判明した。
pLGGは小児において最も多くみられる中枢神経系がんである。腫瘍は時間の経過とともに増殖が止まるため、患者は治療後に成人まで生存することが多いが、化学療法と手術による現在の標準治療の結果として、精神障害、視力の変化または喪失、発作、行動障害など長期的な問題が生じる。
「私たちは、このような患者のために、現在の標準治療よりも副作用の少ない分子標的治療薬をぜひとも見つけたい」とBandopadhayay医師は言う。
研究チームは、FGFR阻害薬の有効性と脳への浸透性を改善し、これらの薬剤を臨床試験で検証するために研究を継続する予定である。また、FGFR発現が正常な脳の発達に関与している可能性があるため、私たちの治療戦略が脳の発達に悪影響を及ぼさないかどうかを検証する予定である。
(研究資金の提供元については、原文を参照のこと)
- 監修 夏目敦至(脳神経外科/河村病院)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/07/31
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