悪性度の高い脳腫瘍、膠芽腫の治療に有望な酵素を発見
膠芽腫の増殖を抑制する有望なアプローチを発見
PGM3という酵素を標的にすることで、極めて悪性度の高い脳腫瘍である膠芽腫の増殖を抑えられる可能性があることを研究者らは発見した。
この酵素は、ヘキソサミン生合成経路において重要な役割を担っており、急速な腫瘍の増殖をもたらすタンパク質と脂質のグリコシル化に関わっている。脂質のグリコシル化は、糖分子が体内の脂肪(脂質)に結合するプロセスである。
オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC – James)の研究者らは、PGM3を標的にすることで腫瘍の増殖を抑え、膠芽腫細胞を死滅させることができると考えている。
「この研究は、PGM3という新たな標的を発見した点で重要です。PGM3酵素を阻害することで、細胞内の糖と脂肪の生成の結合を遮断し、腫瘍の増殖止めることができます。この酵素を標的にすることで、有効な治療がほとんどない脳腫瘍である膠芽腫に対して、より効果的な治療法を開発することができます」と、オハイオ州立大学がん代謝センターの創設ディレクターである筆頭著者Deliang Guo博士は語った。
膠芽腫は、脳のグリア細胞から発生する進行の早い脳腫瘍である。膠芽腫財団によると、毎年推定15,000人がこの致死的な脳腫瘍と診断されている。
この研究は、膠芽腫の治療において有望な新しいアプローチを示すものであり、将来のがん治療の進歩に希望を与えるものです」と、Guo氏は語った。同氏はOSUCCC – Jamesトランスレーショナル治療プログラムのUrban and Shelly Meyerがん研究基金教授であり、オハイオ州立大学医学部放射線腫瘍学教授でもある。
この研究成果は、Science Advancesオンライン版に掲載された。
論文の筆頭著者であり、放射線腫瘍学科およびがん代謝センターの研究者であるHuali Su博士は次のように述べる。「膠芽腫は、極めて悪性度の高い原発性脳腫瘍であり、診断からの中央値生存期間はあらゆる治療を行ってもわずか12〜16カ月とされています。新たな分子標的の発見が急務です」
この研究には、フランス、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、カリフォルニア大学アーバイン校、ルイビル大学も参加した。
本研究の資金提供元、開示情報については、原文を参照のこと。
- 監修 夏目敦至(脳神経外科/河村病院)
- 記事担当者 平沢沙枝
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- 原文掲載日 2025/04/28
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