【ASCO26】CDK4/6阻害薬アベマシクリブは再発脱分化型脂肪肉腫の腫瘍増殖を抑制
ASCOの見解(引用)
「脂肪肉腫は、治療選択肢が限られており、従来の細胞毒性化学療法に対する反応も乏しいため、依然として治療困難な疾患です。早期段階の有望な結果に続き、アベマシクリブとプラセボを比較した本第3相試験では、無増悪生存期間の有意な延長と全生存期間の改善傾向が確認され、進行性脱分化型脂肪肉腫の患者に新たな治療選択肢を提供することとなります」と、Rodrigo Ramella Munhoz氏(医学博士 Oncology Center of Sírio Libanês Hospitalの上級腫瘍医、ASCO専門家)は述べた。
試験概要
| 焦点 | 再発性脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)に対する標的療法 |
| 対象者 | 米国の108人 |
| 主な結果 | CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブ(販売名:ベージニオ)は、有効な治療法がほとんどない極めて進行の速いがんである進行性脱分化型脂肪肉腫患者において、無増悪生存期間を改善した。 |
| 意義 | • 脱分化型脂肪肉腫は、脂肪細胞に発生する希少がんである脂肪肉腫の中でも、特に悪性度の高いタイプであり、現在、手術が最善の治療法とされている。しかし、脱分化型脂肪肉腫は手術後、約40%の患者で再発し、その多くは2年以内に再発する。 • 標準治療であるドキソルビシンや、比較的新しいトラベクテジン、エリブリンなどの化学療法は、脱分化型脂肪肉腫の増殖を約2~3カ月間は抑制するが、その後はがんが進行する。 • アベマシクリブは、特定の乳がんの治療薬として承認されているCDK4/6阻害薬である。研究者らは、脱分化型脂肪肉腫の約90%でCDK4遺伝子の余分なコピーが存在し、その結果CDK4タンパク質の過剰発現が生じていることから、アベマシクリブがDDLPSの治療に有効かどうかを検討した。脱分化型脂肪肉腫において、この遺伝子変化ががん細胞の増殖を促進する。 • 脱分化型脂肪肉腫は稀な疾患だが、他の多くの固形腫瘍や血液がんにおいても、その増殖にCDK4またはCDK6が関与している。これは、アベマシクリブが幅広い種類のがんの治療に有効である可能性を示唆している。 |
CDK4/6標的阻害薬であるアベマシクリブは、有効な治療選択肢が少ない進行性脱分化型脂肪肉腫に対する有望な新規治療法である。第3相SARC041試験の結果によると、手術後に再発した脱分化型脂肪肉腫患者において、アベマシクリブはプラセボよりも長く腫瘍の増殖を抑制した。また、アベマシクリブは一部の参加者において腫瘍を縮小させたが、これは脱分化型脂肪肉腫の治療においては極めて稀な結果である。この研究結果は、5月29日から6月2日までシカゴで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。
試験について
「脱分化型脂肪肉腫は通常、手術で治療されますが、再発すると治療が難しく、多くの場合、治癒が困難です。数十年にわたり化学療法が標準治療とされてきましたが、その効果は限定的で、進行を2~3カ月遅延させる程度です。本試験は、CDK4を阻害するアベマシクリブという薬剤が、患者にとって新たな治療選択肢となり得ることを示しています」と、本研究の筆頭著者であり、ニューヨークのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのMark Dickson医師は述べた。
脱分化型脂肪肉腫は、ほとんどCDK4遺伝子の重複コピーとCDK4タンパク質の過剰活性化をもたらす遺伝子変異によって引き起こされる。このため、このがんはCDK4を阻害する標的療法の適応候補となる。CDK4/6阻害薬であるパルボシクリブを用いた過去の臨床試験では、脂肪肉腫の進行を約4カ月間遅延できた。しかし、潜在的な毒性を軽減するため、パルボシクリブの標準的な投与スケジュールは3週間投与、1週間休薬となっている。一方、アベマシクリブは継続的に投与することが可能である。このCDK4/6阻害薬はすでに特定の乳がんに対して承認されており、研究者らは、従来の治療法よりも脱分化型脂肪肉腫の進行を効果的に抑制できるかどうかを検証したいと考えた。
本試験は、米国内の9つの医療センターから108名が参加者した。
・ 54名がアベマシクリブを投与された。
・ 54名がプラセボを投与された。
プラセボを投与された参加者においてがんの増殖が続いた場合、アベマシクリブへの切り替えが可能であった。
参加者は、手術後に再発した脱分化型脂肪肉腫を患っていた。約半数は、進行を阻止できなかった別の治療(通常はドキソルビシン)も試していた。年齢の中央値は62歳で、61%が男性であった。ほとんどの患者は、このがんの種類に典型的なように、腹部または腹壁を覆う組織の後ろ(後腹膜)に腫瘍を有していた。
主な知見
- アベマシクリブは、プラセボと比較して5倍以上長く脱分化型脂肪肉腫の増殖を抑制した。本剤投与群における無増悪生存期間の中央値(mPFS)は9.7カ月であったのに対し、プラセボ群では1.5カ月であった。
・試験期間中、プラセボ群の参加者の85%がアベマシクリブへの切り替えを行った。治療開始の遅れがあったにもかかわらず、このクロスオーバー群における無増悪生存期間の中央値は3.4カ月であった。 - アベマシクリブは脱分化型脂肪肉腫腫瘍を縮小させることができ、全奏効率(ORR)は9.3%であったのに対し、プラセボ群では0%であった。プラセボからアベマシクリブへ切り替えた参加者では、ORRは4.3%であった。
- 確定するには時期尚早ではあるが、データはアベマシクリブが生存期間を延長することを示唆している。プラセボ群の全生存期間中央値である25.5カ月時点で、アベマシクリブ群の半数以上が生存していた。
アベマシクリブ投与中に、血球数の減少や下痢が頻発する有害事象として認められた。これらは過去の研究から予想されていたものであり、管理可能な範囲であると判断された。試験期間中に重篤な健康上の問題が生じた参加者は少なく、その数は2群間で同程度であった。
次のステップ
研究者らは、脱分化型脂肪肉腫患者の一部においてアベマシクリブが他の人々よりも高い効果を示す理由を解明するため、データを分析する予定である。また、この治療法から最も利益が得られる患者を特定するバイオマーカーの探索も行う。今後の臨床試験では、CDK4を阻害する新規薬剤が脱分化型脂肪肉腫の制御においてより効果的であるかどうかが検証される可能性がある。
本試験は、Eli Lilly and Company社、Cycle for Survivalおよびその他の寄付者、ならびに米国国立がん研究所を含む米国政府の資金提供を受けて実施された。
- 記事担当 平 千鶴
- 監修 遠藤 誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院)
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- 原文掲載日 2026/05/31
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